氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

7月末の日銀会合前後で流れは変わるのか

ごく短期的には、27~28日の日本銀行金融政策決定会合が、短期筋の格好のおもちゃにされるおそれがあります。

この会合においては、日銀がYCC(イールドカーブコントロール)を修正ないし撤廃するとの観測が膨らんでいます。

ただし、それは「YCCの副作用を考慮したためにすぎず、ほかの金融緩和策はまったく変更しないし、金融緩和の出口を意味しない」と日銀が説明する、とも見込まれています。

つまり、日銀は市場を揺らさないように努めるというわけで、YCCの修正をめぐっての事前の思惑、あるいは実際の修正の有無を受けて、投機筋が大声で騒ぎ、日本の株価指数先物や債券先物、円相場などについて、仕掛け的な売り買いが交錯した結果、極めて短期的に日本の株式市場だけでなく、世界の諸市場が荒れるおそれがあります。

しかし、長期投資家は「それは目先の波乱にすぎない」と達観し、市場の上下動に動揺しないことが肝要です。

アメリカでは、12日に発表された6月の消費者物価指数が前年同月比3.0%の上昇にとどまり、5月の同4.0%から大きく低下、しかも市場の事前予想の3.1%をもわずかながら下回ったことで、市場では「インフレ懸念とそれに伴う金利上昇懸念が剥落、安心感が広がった」と解説されているようです。  

加えて、同国の経済指標はここ1カ月ほど、総じて強いものが多い(5月の住宅着工件数、耐久財受注、新築住宅販売件数など)ため、株式市場には「アメリカの景気は強いが、金利は上がらない」といった、都合のいいところ取りの空気が広がっています。

また「リセッション(景気後退)はない」との論も、多く目につくようになってきました。

ただし、同国の連銀は今のところ、強固な利上げ姿勢を変えていません。

11日には、ニューヨーク(NY)連銀のジョン・ウィリアムズ総裁が、フィナンシャル・タイムズのインタビューで、「これまでに実施した制約的な政策の効果がまだ十分に発揮されていない」「一部の金利に敏感な部門ではすでに効果が出ているが、(全体的に)効果が出るのはまだ先だ」と述べ、一段の引き締めの必要性を示しました。

さらに、消費者物価の公表後も、13日にはサンフランシスコ連銀のメアリー・デーリー総裁が「インフレとの闘いで勝利を宣言するのは実に早すぎる」とCNBCテレビで語りました。

連銀がインフレ退治のためにできることは、金融引き締めにより景気を悪化させ、家計や企業がモノやサービスを購入できる量を減らすことで、需給関係から物価を押し下げることだけです。

もちろん連銀幹部は「アメリカの景気をぶっ壊す」とは言わず、「景気をあまり傷めずに物価を抑え込みたい」とは考えてはいるでしょうが、本音では「むしろ健全な景気後退が生じたほうが、大きな流れでの経済成長は持続しやすい」と考えているはずです。

投資家は「バブルでも何でもいいから、永遠に景気が拡大し続けて株価が上がり続けてほしい」という願望を抱きがちなものの、現実には「山あり谷あり」でしょう。 

実際のところ、市場における景気楽観論にもかかわらず、企業アナリストは冷静です。同国の代表的な株価指標であるS&P500種指数の採用企業について、1株当たり利益を集計すると、昨年10~12月期は前年同期比3.7%減益と、コロナ禍以来の減益に突入し、今年1~3月も同1.3%減益ででした。

現在、決算発表が本格的に始まった4~6月期の業績は、14日時点では同6.3%減益で着地すると見込まれています。

これは、3月末時点の3.2%減益予想、あるいは6月末の6.1%減益予想から下方修正されています。

さらに、先の7~9月期については同0.9%の増益に転じると予想されていますが、これも3月末時点の2.8%増益見通しや6月末時点での1.1%増益見通しから下方修正されており、7~9月期が減益予想に転じる可能性も否定できません。

こうした企業業績の陰りを無視して、アメリカの株価は上に向かっているため、S&P500の予想PER(株価収益率)は先週の平均値で19.3倍と、通常のレンジである15~18倍の上限を上回り、株価の割高感を示しています。

足元の水準は、過去にピークを形成した際の、2018年1月下旬の18.8倍(その後2018年末にかけて株価は下振れ)、2020年2月の19.0倍(その後コロナ禍による大暴落)に、ほぼ並んだ状況です。

例えば2020年のような35%ものNYダウの下落や、リーマンショックが再来するわけではないでしょう。  

アメリカについては、企業業績の不振も気がかりですが、量的な金融引き締めも景気悪化・株価下落要因です。

経済全体に出回っている資金量(現金と預金の合計)を計るM2は、統計開始以来初の前年比マイナスを、直近の5月分まで6カ月連続で記録しています。

確かにM2の前年比はマイナスだが、それは最近までM2が急増していたことの反動にすぎず、M2の水準自体は今でも極めて高く、カネ余りは解消されていないのだから、株価が上がるのは当然ではないかというものです。

多くの人が同じようなことを言うというのは、多くの場合、とても影響力がある人が、そうした発言をしているケースが多いです。

そこであらためてデータを見ると、M2の実額自体も直近の2023年5月の金額は2022年の水準をすべて下抜けており、2021年8月の水準まで減ってしまっています。

よって、「依然としてカネ余り」との主張は的を射ておらず、資金量は、本来は経済活動ないし経済規模との見合いで考えるべきです。

経済活動が膨らめば、当然、使われる資金量は自然に膨らむからです。  

このため「マーシャルのk」(M2÷名目GDP)が注目される。これは、2020年4~6月期にはコロナショックを受けて経済活動が急速に縮小した一方、経済を支えるための資金供給が行われたために急伸したが、そこから足元にかけては急落しています。

こうした観点からは、やはりカネ余りというより、カネ足らずが進み、それがアメリカの経済活動や、引いては株価を圧迫していくでしょう。

日本株の今後は、次第に頭が重くなってきているように見えます。ただ、先物を利用した短期筋の投機買いはまだ息絶えていないようです。

それでも、「ウォーレン・バフェット氏が……」「低PBR(株価純資産倍率)企業の経営改善が……」「日本のデフレ脱却が……」といったような「ネタ」に飛びついた海外短期筋の先物買いや、これまで当コラムで語ってきた「ツーリスト投資家」の現物買いは、だいぶ勢いを失ってきています。

日経平均の下値メドは最悪2万7000円辺りまでいくかもしれません。

米国株の1割程度の下落見通しに加え、ドル安円高方向への巻き戻しの持続、海外勢の買いの一巡といった日本株の下落材料を大いに並べても、直近の高値からたった2割程度の反落も考慮しておく必要がありそうです。

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