アパートなどを所有者から一括して借り上げて入居者に貸すサブリース会社をめぐるトラブルがいまだに絶えません。
トラブルに巻き込まれやすいサブリース契約の3つのデメリットについて紹介します。
サブリースとは、転貸借全般を指す用語で、一般的に収益不動産の一括借り上げのことを指します。
マンションやアパートなどの賃貸不動産の所有者が、空室リスクなどを避けるため、いったんサブリース会社に不動産を貸し、サブリース会社に客付けや管理などの面倒なことをやってもらうというものです。
今では多くの不動産オーナーが利用している仕組みです。
ところが、大手サブリース会社が物件の一部で、当初約束した家賃を、約束からわずか数年で、強制的に引き下げました。
このような目に遭った不動産所有者の中には、銀行借り入れをして不動産を購入した人もいたため、家賃を引き下げで「借り入れと賃料収入との収支がマイナス」になってしまった方も続出しました。
所有者がいったん、サブリース会社に貸して「後の面倒なことはサブリース会社にやってもらう」という、一見便利に見えるこの仕組み。もちろん商売ですから、サブリース会社がもうかるようになっています。
当然、所有者はサブリース会社に手間賃を払うことになりますので収益は減少します。不動産所有者が払う手間賃とはいわゆる「中抜き」というものです。
そもそも当時話題となったのは「安普請の家(割高な建物)を建てさせられる」という点。以前話題となった某上場企業の欠陥建築問題はまさにこの話です。
つまり高いお金を払って安普請の家を建てさせられ、建築後、中抜きが始まります。まずは賃料を業者によって15~20%程度中抜きされます。
サブリース会社は一般の賃借人から例えば10万円の家賃を取ったとします。そして不動産所有者には8万円を支払うことで2万円中抜きできるということです。
そして賃借人が退去したので「リフォームしましょう、クーラーを新しいものに変えましょう」ということで、工事費や設備費を中抜きされます。
実際の見積書を見てみると、店頭価格5.5万円のクーラーを7.5万円で所有者に請求。さらにクーラーの設置費として通常1.5万円の工事費を2.5万円で所有者に請求しています。
つまり、合計7万円であるはずのクーラー設置費用が、7.5万円+2.5万円で合計10万円となるわけです。3万円の中抜きです。
もちろん、サブリース業者に丸投げすることで、クーラーの購入や工事の手配といった手間は省けますので、「まあ、仕方ないよね」と思える人には便利な仕組みだとは思います。
しかし、実際には、こうした中抜きの状況について気付いていない所有者が多いように思います。
また、受水槽に関する法定点検費用など全ての管理業務についても当然中抜きされますのでご注意ください。
このように中抜きされるポイントがいくつもあるというのが、サブリース会社と契約することの第一のデメリットなのですが、第二のデメリットが「借地借家法によりサブリース会社が守られている故、サブリース契約を解除できず、半永久的に継続せざるを得ない」というものです。
例えばサブリース契約をしている賃貸アパートを所有しているAさんは、サブリースのデメリットを理解したので、業者に解除を申し立てたところ「解除できない」と強硬に言われてしまいました。
「なんとなく割高だよな、というのは分かっていたんです。でもそれも手間賃かなと。しかし納得いかないのは、クーラーの取り換えや換気扇の取り換えなどについて、サブリース会社は毎回事後報告なのです。
また、勝手に取り換え代金が引き落とされることも常態化しています。この6月末にも月の締めをチェックしていたのですが、管理会社から送られてきた支払書に、報告された記憶のない『301号、403号 浴室換気扇交換 各々4万6200円』という代金が引かれていました。
不審に思い、担当に連絡をしたところ、取り換えをするという連絡は4月に行っていたものの、その後見積書を提出することなく、勝手に発注・取り換えをし、代金を引き落としていたのです」
以下はAさんに送られたサブリース会社の担当者からのメールです。
「 浴室換気扇につきましては、4月3日にメールでの不具合報告をさせていただき、交換工事の金額の文章での御見積提出を忘れておりました。 大変申し訳ありません。
今後このようなことが起こらない様、進捗状況を確認しながらご報告をいたします。」
換気扇に関して4万6200円とあったのですが、私の持っている物件の換気扇は昔の換気扇で、よくあるプロペラファン型です。ネットで検索してみたら工事費込みで1.5万円で交換できるということが分かりました。
ああ、ここでも3万円近く中抜きされていたんだなと。そこでサブリース契約の解除を申し出たところ、できませんの1点張りです。
知り合いの弁護士に相談しても、サブリースの解除は無理ですよと言われてしまい…」と、Aさんは途方に暮れています。
双方納得の上で、サブリース会社が中抜きすること自体は悪ではないと思います。大手の中にはサブリース契約を解除できる良心的なところもありますが、多くのサブリース会社では解除ができないというところが問題だと考えます。
埼玉でサブリース物件を所有するBさんは、中抜きの実態について、Aさんよりも突っ込んで調べた方です。
「サブリース会社から入ってくる家賃が少ないと思い、サブリース会社に『家賃の一覧を見せてくれ』お願いしました。
ところが、どう見ても入居者の家賃が実際の家賃と違うんですよ。そこで、たまたま入居者の1人が私の知り合いだったので、家賃を聞いてみたんですよ。
するとサブリース会社が報告した家賃と実際の家賃がやっぱり違っていたんです。わざわざ虚偽のレントロールを作ってきたんですよ」
さらに、設備が壊れてから交換するのではなく、数年に1回、アパート全体の温水洗浄便座やエアコンを定期的に交換することで中抜きをしたりするのです。
そして不動産の所有者がそれに気付いても、借地借家法に守られているのはサブリース業者なので、所有者個人はなかなか解除できない状況なのです。
そしてサブリース会社と契約する第三のデメリットは、物件の売却に関することです。
不動産の所有者がサブリースの解除を諦め、でも赤字物件を持っていたくないので、物件の売却をしようとします。
ところが売却のときも、契約したサブリース会社を仲介しないと当該物件を売却できないということも多々あるのです。不動産を手離したいのなら、仲介手数料を自分たちに払えということです。
なお、サブリースが付いた収益不動産を売却するとき、売却価格も下がるということにも注意が必要です。
売却価格は多くの場合、収益不動産は収益還元法をベースに算出します。 例えば都内23区内の築20年の木造アパート1棟で、駅徒歩10分強、利回りが約5%の物件があったとします。
家賃収入が年間1500万円だとすると、物件価格は一般的に、1500万円÷5%で3億円になります。
しかしサブリースを解除できれば、家賃収入は中抜きがなくなったことで2割ほど増えて1875万円になります。その結果、物件価格は1875万円÷5%で3億7500万円と、大幅に上昇することになるのです。
不動産所有者にとっては当然高値で売却したいでしょうし、サブリース解除は必須となります。
投資で負けるのは情報弱者です。金融商品などの証券投資であれば、小口化されているので数万円から投資できます。したがって、投資家は少額から始めることで「慣れる」ことができます。
しかし、不動産はそうではありません。収益不動産に関しては安くても数百万、普通で数千万、基本的には数億かかる買い物です。
投資家と業者では情報格差が大きいため、投資の初心者にとってサブリースは「面倒なことは全部丸投げ」できて始めやすいように思います。
しかし、おいしい話にはそれ相応のデメリットもあります。
個人を守る消費者契約法と異なり、業者が守られ個人が守られないサブリース契約は「一度契約すると半永久的にやめられない沼」であることを、投資初心者は肝に銘じておくべきと考えています。