氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

将来、医療・福祉が最大産業になる

内閣官房内閣府財務省厚生労働省が2018年にまとめた「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」によると、医療・福祉分野の就業者は、2018年度においては、823万人。これは、総就業者数6580万人の12.5%になります。  

2040年度においては、1065万人になると予測され、総就業者数5654万人の18.8%になります。

全体の就業者が減る中で医療・福祉が増えるのですから、日本経済は、深刻な労働力不足に見舞われます。

同時に公表された「「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」に基づくマンパワーのシミュレーション」(2018年5月)において、2040年度における医療・福祉分野の就業者数は、つぎのとおりです。

 

 

「医療・介護の需要が低下した場合」には、983万人。  

「生産性が向上した場合」には1012万人です。  

このように、結果は上記「計画ベース」とあまり変わりません。将来における医療介護技術の進歩が期待されますが、必要な就業者数にはあまり大きな影響を与えないことがわかります。

経済全体の就業構造の変化を見るために、総務省統計局の産業別就業者数を参照すると、2018年においては、就業者数は6682万人、うち、医療・福祉は834万人です。

どちらも、前記の「見通し」とは完全には一致しませんが、ほぼ同じです。違いは、「見通し」を作成した時点で、労働力調査の確報が得られていなかったからでしょう。  

そこで以下のように考えることにしました。

・2020年までは、労働力調査の値を用いる。

・2040年について、就業者総数と医療・福祉就業者は、「見通し」の「計画ベース」の数字を用いる。

・他産業については、過去の趨勢が将来も続くと仮定する。  

この考えに基づいて、2002年から2040年の期間について、各産業の就業者の就業者総数に対する比率を計算すると、

製造業、卸売・小売業、医療・福祉の就業者の全就業者に対する比率は、2002年には、それぞれ、19.0%、17.5%、7.5%でした。

製造業と卸売・小売業の就業者数が時系列的に減少しているため、この比率は、2020年には、それぞれ、15.7%、15.8%、12.9%となりました。

医療・福祉の比率は、この間に2倍近くになったのです。

 

 

2031年には、この比率が、15.85%、16.95%、15.90%となって、医療・福祉が製造業を抜きます(卸売・小売業は、就業者数は減っているのですが、全体の就業者数の減少が著しいので、比率は上昇する)。

そして、2037年には、15.96%、17.59%、17.80%となって、医療・福祉が卸売・小売を抜き、就業者数で見て、日本最大の産業となります。

2040年では、16.0%、17.9%、18.8%となり、医療・福祉は、製造業よりかなり規模の大きな産業となります。

医療・福祉以外の産業は、就業者数で見て減少を続けるので、ごく少数の例外を除いて、今後は量的な拡大を期待することができません。

成長を前提とした経営戦略は成り立たず、マイナス成長のビジネスモデルを確立する必要があります。

厚生労働省「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」によれば、介護職員の2020年2月の給与は、31万5850円です。

2019年2月の30万0120円に比べれば5.2%の増であり、これは、経済全体の賃金上昇率より高いです。

しかし、水準は著しく低いと言わざるをえません。これは、有効求人倍率が高いことにも現れています。

こうしたことを考慮すると、将来必要とされる介護人材を果たして確保できるのかどうかに、大きな疑問が生じます。

今後予想される介護人材のひっ迫は、大量の移民を認めない限り解決できません。

日本社会がそうした問題に直面しているという意識を持ち、外国人労働者の本格導入を認めることが必要です。

しかし、必要な人数の外国人労働者が日本に来るかどうかは、定かではく、日本の平均賃金が海外に比べて相対的に低下しているので、将来を楽観できません。

日本の国際的地位の低下が続けば、海外からの介護人材に頼ることは難しくなるでしょう。

医療・介護需要が増大するので、医療・福祉産業が拡大するのは、当然のことです。しかし、この産業は、これまでの日本の主力産業とは、性格が著しく異なります。

他の産業の場合には、われわれの生活をそれまでよりも豊かにしたり、生産活動をより効率的にしたりするモノやサービスを供給してくれます。

しかし、医療・福祉の場合は、病気を治癒したり介護するだけで、マイナスになるのを抑えるだけのことです。

もちろん、それは極めて重要なことですが、それによって、生活がこれまでより豊かになるわけではありません。

言ってみれば、「病気で死なないことだけで精一杯。それ以上のことには手が回らない」ということです。

 

 

医療・福祉産業が成長したところで、普通イメージするような消費や投資が増えるわけではありません。日本の輸出が増えるわけでもなく、日常生活が大きく変わるわけでもありません。

こうした意味で、他の産業とは性質が大きく異なるのです。

そのような産業が日本最大の産業となるため、日本経済の姿は、これまでのものとは異質のものにならざるをえません。

株式市場の機能や様相も、大きく変わり、このような経済は、現在のそれとはあまりに異なるものです。

しかも、これまでどの国も経験したことがないので、果たしてこのような経済を実際に維持できるのかどうか、強い危惧を抱かざるをえません。

医療・福祉産業においては、他の産業でのり売上げに相当するものが、市場を通じるのではなく、医療保険介護保険といった公的な制度を通じて集められます。

このため、資源配分の適正化について市場メカニズムを通じて行えません。

医療単価の決定などの公的な決定によって、資源配分が大きく左右されます。

こうした制度で資源配分の適正化を実現するのは、きわめて難しいでしょう。

さらに、医療・福祉制度を機能させ続けるには、医療・介護保険の財源を確保することが重要です。

長期的な見通しを踏まえて、責任ある経済政策が求められます。

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