氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

「年の差婚が増えた」と信じる人が知らない結婚年齢の意外な実態

少子化=未婚化にある日本の人口動態データを分析する者としては、ちょっと聞き捨てならない発言もみられています。  

中でも、一定の周期で耳にする「聞き捨てならない発言」の1つが、年の差婚が増えている、という前提に立った発言です。

先日も「年の差婚はすっかり珍しくなくなったわけですが」「年の差婚が増えている中で」といった発言が枕詞のように使われていました。  

統計的に見れば、年の差婚の割合はむしろ減少を続けているため、このような誤解に基づく発言があまりに増えてしまうと、それを鵜吞みにして婚活して成果につながらない被害者が増えかねません。

そもそも初婚同士の夫婦の年齢差平均が2022年の厚生労働省の統計で1.5歳にすぎず、さらに年齢差の縮小トレンドにあることからも、年の差婚がかつてよりも多くないことは想像がつくと思います。そこで、夫婦の年齢差の推移を正確に表にしたものが以下の表です。  

表からは次のことがわかります。

①約半世紀で夫年上婚割合が26%減少(最大の減少割合)

②同年齢婚と妻年上婚の割合がそれぞれ12%、14%増加

③妻年上婚は、1歳から3歳上で妻年上婚の77%を占める

④夫年上婚は1歳年上夫以外はすべて割合減少  

半世紀のトレンドで増加したのは、同年齢婚、妻年上婚、夫1歳上婚で、あとはすべて減少、という結果で、4歳差以上の年の差婚が占める割合は15%減少していますので、「年の差婚は珍しくなくなった」「年の差婚が増えた」は統計的に見ると、現実とはまったく逆の思い込み発言であることがわかります。

正確に言うなら「年の差婚が減ってきている中でも」「以前より年の差婚は減ってしまったが」などとなります。夫婦の年の差が縮小する中で、なぜ「年の差婚なんて珍しくなくなった」という発言を堂々とする人がいるのでしょうか。

理由は3つあると思います。

1つ目は過去にも何度か解説したことのある「フィルターバブル」効果です。情報ポータルサイトYouTubeなどは、閲覧者の過去の検索や閲覧情報から、その人が好きそうな記事を探してきてトップ画面に掲載、閲覧のおすすめをするレコメンドエンジンが設定されています。

こういった仕組みに精通している人は問題ないのですが、知らない人は「自分が欲しい情報ばかりがネット上に掲載されるようになり、次第に社会が自分好みに出来上がっている、と勘違いをしてしまう」という結果になりかねません。  

おそらくですが、年の差婚記事が好きで見ているうちに、次々提案される年の差婚記事に「こんなにニュースになるほど年の差婚が増えたのだ」と誤解してしまうのでしょう。

多様性が叫ばれる社会で、とりあえずマイナーな事柄に理解を示す風の発言がカッコイイ、という風潮が、識者といわれる人々にさえみられます。

エビデンスに基づかない「年の差婚が増えた」「珍しくなくなった」という発言は、実際に増えたかどうかは問題ではなく、マイナーなことに関心が高く、多様性が重視される社会において「寛容な価値観を持つ自分の演出」といった面もあるようです。

多様な社会において、他人がどうであれ自分の望むライフコースを実現できるのであれば、実現すればいいと思いますが、情報操作してまで実現しようという考えは問題があります。

未婚少子化社会の日本の実態に関してこれまで研究してきた中で、メディアの記者、デスク、ライターなどから数多くの取材がありました。  

しかし、明らかに理想の成婚ケースを選んできては、それを普通である、珍しくない、と誘導するかのような発信を望んでの取材が一定数あったことは事実です。

例えば「女性は所詮お金だ」と、いいたいあまりに、バブル時代に街角取材した女性の「やっぱりお金!」という発言がオンエアされた約40年前の番組の1シーンを例示し、それを裏付ける取材を申し込んできた男性がいました。

「またきたか……」という思いで、その男性に逆取材をかけたところ、やはり40代独身男性で、若い女性との結婚を望んでいる男性でした。バブル期の年収だったディレクターが羨ましい、バブル期なら40代でも20代女性と結婚できたはず、と言いたかったようです。

しかし、バブル期のほうが確かに男性の未婚割合が今より極端に少なかったものの、34歳までにほとんどの結婚が終了し、今以上に40代以上の男性では結婚が発生しなかった、という統計的実態を伝えると、番組作りをやめてしまったケースもありました。

いくら進化した二足歩行の大きな脳を持つ動物といっても、人間は哺乳類として「ヒト」という一動物に過ぎません。哺乳類全般で起こるカップリングや子を授かる行為は、すべて同様に年齢的な発生確率の高い時期(適齢期)があります。

特に日本はこの適齢期について、女性の結婚や出産の適齢期話になると大いなる理解を示す社会ですが、男性の結婚適齢期の話になると、なぜかどうしても受け入れられないという傾向がいまだに強く感じられます。  

カップリングにおける発生確率的な限界を理解しようとしない「自滅の刃」に向き合い、自分の都合がいいように相手や社会をコントロールしようという発想を改めることも、婚活で迷走しないために身に付けておきたい思考の1つだと思います。

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