FIREムーブメントに乗る人たちは、早期にリタイアできるように資産を増やしています。
FIREしないほうが長生きできるかも…リタイア後も刺激のある生活を続けたほうがいい 仕事によっては、働くことは健康にいいという研究結果もあります。
仕事と老化の専門家が、早期リタイアの長所と短所をBusiness Insiderに語ってくれた。 経済的に自立し、早期にリタイアする「FIRE（Financial Independence, Retire Early）」ムーブメントに乗ることは夢のように聞こえます。
しかしそれを達成することが現実的に難しい場合、人生の大半を働き続けることで、少なくとも寿命を延ばすことができるという事実に慰めを見出すことができるかもしれません。
「FIRE」ムーブメントに乗る人たちは、質素な生活を優先し、収入のできるだけ多くを貯蓄・投資に回すことで、早期リタイアを可能にする莫大な貯えをしています。
Business Insiderが報じているように、早ければ29歳で仕事をリタイアし、働く代わりに旅行や本の執筆、子どもとの時間を楽しんでいる人もいます。
FIREの人気は高まっており、伝統的な労働文化を否定するミレニアル世代とZ世代が、生涯働くために生きるのではなく、自分の将来を豊かに暮らすために、今現在を一生懸命働くことを望むようになったからです。
一方、長寿も話題になっているが、長生きする人は強い目的意識を持つ傾向があるという研究結果もあります。
多くの人が仕事やキャリアからこの目的を得ているが、早期退職は我々の健康に悪影響を及ぼすのでしょうか。
キングス・カレッジ・ロンドン（Kings College London）の老年学教授で、仕事、健康、平均寿命に関する研究「WHERL（Wellbeing, Health, Retirement and the Lifecourse）」の主任研究員であるカレン・グレイザー（Karen Glaser）は「早期リタイアの長所と短所に関するデータは、人々が早期退職する理由は2つしかないため、偏っている」とBusiness Insiderに語りました。
その2つとは、「退職できるほど裕福であること」または「健康状態が悪すぎて働けないこと」だといいます。
しかし、グレイザーによると、働くこととリタイアすることの潜在的なメリットは、人によって違うことが示唆されているといいます。テレビの前でゴロゴロしているより、リタイア後は働いていた時にできなかったことをして過ごす方がいいという理由は簡単に理解できます。
グレイザーによると、仕事をリタイアするとストレスがなくなるため、精神的およびに身体的に健康が短期的に向上する傾向があるといいます。
その結果、喫煙や飲酒が減少し、友人関係を回復させたり、運動などの健康的な習慣を身につける時間が増える可能性があるといいます。
例えば、2020年にWHERLが実施した研究によると、高齢になってから身体的負荷の高い肉体労働をした女性は、うつ病になる可能性が非常に高いことが明らかになりました。その理由の一部は体に負担がかかってしまうことです。
一方、仕事を離れると人々は社会とつながる主な理由を失う可能性があり、これは長寿に「大きな影響」を与えるかもしれないとグレーザーは述べています。
スコットランドのグラスゴー大学（University of Glasgow）の研究者による2023年の研究では、社会的に孤立している人は何らかの原因で死亡するリスクが77％高いことが分かっています。
自分が満足できる仕事であれば、満足感も得られ、自尊心が向上するため、「仕事以外で自分のアイデンティティを高めるものがなければ、仕事を続けたほうがいいこともある」とグレーザーは話しています。
「高齢で働くことは、認知機能を保護する効果があるようだ」とグレーザーは補足した。仕事をリタイアした後、認知機能、特に記憶力が低下する可能性があることは研究で示唆されていますが、これはその人の仕事や退職してからの期間、退職後の過ごし方によって違ってくるといいます。
例えば、「高齢化経済学ジャーナル（The Journal of the Economics of Ageing）」に掲載された2022年の論文によると、リタイアした会社員の認知能力は、仕事が知的な刺激の主な源だった場合には低下する可能性があるといいます。
「ハイブリッド型のFIREモデル」がベストかもしれません 。
しかし、「仕事で失ったものは、講座や大学に戻ること、読書などの適切な趣味で補うことができる」とグレイザーは話しています。
そしてもちろんFIREムーブメントに身を置く人の多くは旅行したり、情熱を注げるプロジェクトを追及したり、あるいは経済的なプレッシャーなしに好きなことに取り組み続けることに時間を費やしています。
「心理学と加齢（Psychology and Aging）」に掲載された2021年のある研究では、精神的に刺激のある活動を続けている人はリタイア後も認知機能を維持できることが示唆されています。
ハイブリッドモデルは、FIREへの道に向かっている人に最適かもしれません。経済的に安定しているならば、パートタイムの仕事やボランティアで働くことで、仕事と リタイアの両方のメリットを得られるかもしれません。
それと同時に、仕事の内容を自分でコントロールでき、あまりストレスのない仕事をし、仕事に満足している人にはハイブリッドモデルはメリットがあるとグレイザーは話しています。
