コロナ禍によって少子化が加速しています。
厚生労働省「人口動態統計月報年計」によれば、感染拡大が本格化した2020年4月以降の妊娠による出産を反映した2021年の出生数は81万1604人にとどまり、過去最少を更新しました。
コロナ禍前から出生数減の流れは続いていましたが、前年比3.5%もの大幅減となったのは明らかに感染拡大に伴う影響です。
日本では婚外出生が出生数全体に占める割合は2.38%(2020年)と小さく、結婚と妊娠・出産とは密接な関係にあります。
ところが、感染が拡大した2020年の婚姻件数がコロナ禍前の2019年と比べて12.3%もの大幅下落となったため、2021年の年間出生数は80万人を割り込むと見られていました。
結果として80万人台を維持できましたが、それは米国などと比べて日本の感染者数は少なく、当初の予想ほど経済が落ち込ますに済んだことが大きかったのです。
とはいえ、わずか1年で出生数が3万人近くも減ったのです。
ちなみに、国立社会保障・人口問題研究所は日本人の出生数が81万人台前半になる時期を「2027年」と推計していました。
コロナ禍による出生数減の加速は、2022年以降も続きそうです。
2021年の婚姻件数は、激減した前年よりさらに4.6%も下落しているためです。
しかし、コロナ禍が終息したとしても出生数減の流れは変わることはありません。
というのも、日本の出生数減の主要因は子供を産みうる年齢の女性数の減少だからです。
なぜ出産期の女性数が減ってしまったかといえば、長年の出生数減で女の赤ちゃんが毎年減り続けてきたためです。
女の赤ちゃんが成人して「母親」となり得る年齢に達するまでには20~30年程度のタイムラグがあるため、この先もその人数は著しく減っていくこととなります。
子供を産み得る年齢の女性数がどれぐらい減ってしまうかは、現時点での0歳女児の人数を計算すればおおよそ分かります。
総務省の人口推計(2021年10月1日現在)によれば、0歳の女児は39万7000人でしかありません。
これに対して、30歳の日本人女性は57万9000人、20歳は57万1000人です。
すなわち、20年後の20歳の日本人女性は現在より30.5%、30年後の30歳の日本人女性は31.4%少なくなるということです。
短期で3割も減ったのでは、合計特殊出生率がわずかばかり改善したところで出生数は減り続けることになります。
出産期を迎える日本人女性の人数いまさら増やせるわけではありません。それでも無理に増やそうとするなら若い外国人女性に来てもらうしかありませんが、それで出生数が大きく増えるかと言えば簡単ではないです。
日本の出生数減は構造的な要因で起きているのであり、政策を講じてみてもどうにもならないのです。
コロナ禍は、こうした構造的な要因による出生数減の流れをわずかばかり加速させたに過ぎないのです。
出生数減を止めようがないという「不都合な現実」に対して、政府や国会議員は顔を背け続けており、「子育て支援策の充実で少子化に歯止めをかける」といった呑気な精神論が相変わらず目立っています。
手厚い補助金を配って周辺自治体から子育て世帯をかき集め、「わが市は子供数が増え続けている」と得意げに語る首長も一人や二人ではありません。
こういう自治体を成功例のように取り上げるメディアも少なくありません。
さらに、創設される「こども家庭庁」を切り札のように語る国会議員もいます。
子供政策の一元化は重要ですが、肝心の子供が生まれないのでは始まりません。
問題の本質は子供が生まれてこない状況の打開です。
結婚や子供をもつことを希望しながらできずにいる人々にしてみれば、子育て支援策をどれだけ強化してもらっても問題解決とはなりません。