各種の国際比較調査からも、日本人は「大嫌いな仕事を真面目に黙々とこなしている」ことが明らかになっています。
諸外国と比べて日本人が仕事を楽しんでいないのには、3つの理由が考えられます。
1 職務のミスマッチ
日本特有の新卒一括採用では、企業は入社後の担当職務を明確に示さずに新人を採用し、採用後に本人の適性を見て配属先を決めます。
このやり方だと、本人が希望する職務と実際に担当する職務のミスマッチが起こりやすくなります。
また、日本の職場では、チームワークで仕事をすることや多能工として活動することが重視されています。
どうしても、自分の好きな仕事に専念するのが難しくなります。
2 後向きな仕事が多い
日本企業は、1990年代から続く事業の低迷を受けて、コスト削減、人員整理、事業再編・撤退といった敗戦処理的な対応を迫られました。
事業が着実に成長・発展した1980年代までと違って、職場レベルでも後向きな仕事の割合が高まっています。
3 職場環境の悪化
日本では、解雇や一時帰休が制限されており、企業は閑散期に余剰人員が発生しないように、事業運営に必要な人員数よりも少ない数を実配置します。
そのため、職場ではほぼ常に人員不足で、長時間労働が常態化しています。さらに、近年の人員整理の影響で人員不足が深刻になり、職場に余裕がなくなっています。
つまり元々、日本では自分の好きな仕事を担当できず、近年は後向きの仕事が増え、職場環境が悪化していることが、仕事が楽しくない理由です。
後向きな仕事が多いことと職場環境の悪化は、近年の日本企業の国際競争力の低下によるところが大きく、簡単には改善しそうにありません。
一方、仕事のミスマッチは、日本でも広がりつつあるジョブ型雇用に転換することで、大いに改善すると期待されています。
アメリカなど多くの国で一般的なジョブ型雇用では、企業はあらかじめ職務内容を明確に定めて人員を募集・採用します。
したがって、ジョブ型雇用では、原理的に「入社後に、希望しない仕事を担当することになった」ということはありません。
ただ、ジョブ型雇用になればミスマッチが解消されるかというと、注意が必要です。
ジョブ型にしたことで、職務の範囲が明確になりますが、各部門の業務量のバランスがあり、基本的にはそれまでの職務を引き続き担当してもらうことになります。
また、日本では、業績が悪化しても社員を解雇しないように、社内の配置転換で対応しています。
ジョブ型と言っても、各社員が好きな仕事を担当できるようになったわけではありません。新卒の採用でも、できるだけ入社後の担当業務を明示し、本人の希望をかなえるようにしています。
しかし、さすがに未経験・未知数の新人の希望を全面的に受け入れるわけにはいきません。新人のミスマッチは、依然として大きな問題です。
将来、アメリカのように中途採用主体で必要な人材を必要な時に必要な数だけ採用したり、担当する職務がなくなったら従業員を解雇できるようになったら、日本でもミスマッチはなくなります。
しかし、新卒一括採用の慣行や解雇規制が残っている限り、ミスマッチは簡単にはなくなりません。
こうしてみると、日本人の「仕事が楽しくない」という残念な状態は、今後も続くということです。