パワーカップルとは、夫婦とも高収入であること表していますが、その定義は明確に定められておらず、「世帯年収が1,000万円以上で、夫婦ともに正社員であること」「夫婦ともに年収700万円以上であること」などがよくいわれています。
消費意欲が高く、また年齢は20代から40代の夫婦を指すことが多いようです。
夫婦ともに年収700万円以上というカップルについて、どの程度いるのかということを、国税庁の『令和2年度民間給与実態統計調査』から推定すると、まず男性の給与所得者2,344万人のうち年間給与所得700万円超はおよそ500万人(21.3%)、割合としてはおよそ5人に1人が当てはまります。
続いて女性の給与所得者1,138万人のうち年間給与所得700万円超はおよそ60万人(5.3%)、割合としてはおよそ20人に1人となります。
これは全年齢を対象としていることから、一般的にパワーカップルを指す20代から40代でみるとさらに少ないです。
また、このそれぞれの男女がカップルになる割合を考えると、日本におけるパワーカップルはひと握りの選ばれし存在といえます。
実際、夫婦ともに年収700万円超のカップルは、夫婦全体の約0.5%程度ともいわれています。
年収が少なければ当然日々の生活において引かれる金額の割合が高く、なかなか貯蓄できない一方、年収1,200万円以上の高所得者は、年間所得のおよそ5分の1を貯蓄にまわせています。
これらのデータを見ると、「パワーカップル」と「老後破綻」は無関係のように思えます。
日本は制度上パワーカップルに対して優しくありません。 パワーカップルは、世間的に羨ましがられる派手な生活を送っているとか、共働きで子どもを意識的に作らないDINKs(Double Income No Kids)であれば、余裕があるかもしれません。
しかし年収が共に700万円以上のパワーカップルであっても、この日本では余裕があるとは決していえません。
まず問題になるのは税金です。高所得者は平均を大きく上回る収入を得ている一方、支払う税金や社会保険料も高額となります。
また、所得が増えることで健康保険や厚生年金も高くなることから、税金対策などを実施しない場合、実際の手取り額は総支給額から大幅に減少してしまうのです。
さらに、国などが設けている補助金の所得制限により、高所得者は補助金の対象外になりやすいということも、年収ほど生活は楽ではないという理由です。
例えば中学校卒業までの児童を養育している人に支給される児童手当は、収入額がおおむね800万円を超えると対象外になるケースがあります。
児童手当は、養育者の収入が多くても、児童1人あたり月額一律5,000円は支給されることになっていますが、受け取る金額が少なくなることに違いはありません。
また、高校生に支給される高等学校等就学支援金は、親の年収が約910万円を超えると対象から外れてしまいます。
このように国の補助金が支給されないため、他の家庭と比べて補助金による収入が少ないのです。
前述のとおり、高額な税金や各種手当の対象外になりやすいという現実のほか、収入ほど貯蓄が貯まらない要因として、消費意欲が旺盛というパワーカップルの特徴が挙げられます。
社会的なステータスを意識して、それ相応な生活をしようと努力した結果、2人の給料では少々予算オーバーなマンションに住み、子どもにもさまざまな習いごとをさせることです。
一般の会社員と比べると、支出はだいぶ大きくなるでしょう。 またパワーカップルの場合、意外と貯蓄はしていない、というケースも少なくありません。
よく稼ぎ、よく使うという感覚のまま50代を過ごし、定年になったときに恐ろしい事態に直面する可能性があります。
金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和3年』によると、金融資産保有額から借入金を引いた純資産額は、50代から60代で大きく増えていることから、老後を見据えて貯蓄を本格化させるのは50代以降だといえます。
そんな50代で、老後を見据えた貯蓄ができなかったとしたら、定年直後は夫婦で退職金があるから余裕かもしれませんが、生活水準の見直しを行わないと、あっという間に使い果たすでしょう。
とはいえ、一度上げた生活水準を落とすことは難しく、これも「老後破綻」の要因のひとつといわれています。
生活を見直すことをせずに、高収入を謳歌する「パワーカップル」には、このような悲劇が待ち受けているかもしれません。