現在、日本では首都圏を中心とした地価の上昇と住宅需要が急増しています。
2021年は首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉の4都県)の新築マンションの平均価格がバブル期を超えて過去最高となるなど、比較的高額な都心の物件の値上がりが全国の平均価格を押し上げています。
建設費の値上がりに加え、全国的に駅の近くなど高値で売れる地域に供給が絞られていることも一因だそうです。
これから首都圏でマンションの購入を考えている人は、少しでも価格が安くなって欲しいところですが、政府が地価抑制策を急に講じたり、世界的な金融不安を巻き起こさない限り、しばらく首都圏のマンション価格は下がりそうもないです。
過去、日本で起きた地価の急激な下落は、金融危機と同時にしか起こっていません。
もちろん調整局面としての短期的な地価下落はありましたが、急激で大幅な下落はオイルショック以降では平成バブル崩壊とリーマンショックのときだけです。
富裕層が購入するイメージの強いタワーマンションですが、昨今は新たな購入層が登場しています。消費欲旺盛な共働き夫婦であるパワーカップルです。
ともに正社員として働き、お互いに十分な収入を得ている夫婦で、その年収基準は700万円~1,000万円以上とも言われています。
住宅ローンは年収の5倍までといわれていますが、これは片働きが主流だったバブル期のもので、夫婦同程度の収入を得ているパワーカップルであれば、単純計算、世帯年収の10倍程度のローンを組んでも問題ないと考えられています。
パワーカップルだから都心部のタワーマンションを購入でき、金利は低いし、借りるよりも所有したほうが資産にもなるという理由で買うそうです。
会社に行くために「会社の近くに住む」という都心居住の考え方について、都心は交通利便性が高いといっても、所詮は自分たちの勤める会社との「行き来」のために便利であるというだけです。
とりわけ工場跡地に建設された多くのタワーマンションが建つ立地は、従来は人々が暮らすのにはあまり「良い環境」にはなかった土地が多いのも事実です。
武蔵小杉がその悪い例です。ひとたび風水害がおこれば資産価値は下がります。また、駅は朝の通勤ラッシュでいつも大混雑で、毎日ストレスを買っているようなものです。
今の若い世代は車を持たず、使いたいときに使えばよいという考えです。使うのは週末だけで、駐車場代を払うくらいなら買わないほうがよいということでしょう。自転車もシェアですませ、服もメルカリで済ますのが彼らの考え方です。
ところがタワーマンションになると、自分たちが「暮らす」のに本当に良い街はどこなのかという合理的な思考回路が機能停止に追い込まれるようです。
30年間、夫婦ともに安定的な収入が得られるというのは非現実的です。病気で収入が途絶えることも考えられますし、コロナ禍で減給や賞与なしとなった会社員が多くいたように、パワーカップルにも収入減のリスクは常につきまといます。
離婚という事態も想定しておいたほうがよいです。夫婦でローンを組んでいるのですから、万が一、夫婦が別の道を歩むことになったとしたら、トラブルになることは明らかです。
さらに見落としがちのリスクが、タワマンの大規模修繕でどれほどの金額になるか、事例が少ないだけに未知数の部分が多く、果たして積立修繕金だけで事足りるのか微妙です。
予想もしなかった高額の修繕金、子供の教育費、親の介護費などによって生活が行き詰る可能性もあるでしょう。
会社から「近い」という理由で買った家のために、夫婦合わせて年収の3割くらいのお金を約30年間もつぎ込む(約1億円前後)ことは、会社の奴隷になるために買っているようなものです。