氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

NISA貧乏を招く3つの「危険なサイン」-1

新NISAが始まって5カ月めで「NISA貧乏」という言葉が話題になり始めています。

積立NISAを毎月5万円はじめたら、あたりまえなのですけど、日常で使えるお金がこれまでよりも毎月5万円少なくなって、生活が苦しくなってきたというのがNISA貧乏のひとつの典型例です。  

「まだ試行錯誤で投資に慣れていないからなのかな?」  とも思える現象ではありますが、経済の界隈ではNISA貧乏の影響で個人消費にブレーキがかかるのではないかという懸念すら生まれ始めています。  

実はNISA貧乏に陥ってしまう人には3つの危険なサインがあります。

(1)取り残される恐怖(FOMO)  

最近、新NISAで投資を始めたばかりの人について経済のプロとして感じることがあります。それは「難しいタイミングで投資デビューしたなぁ」という感想です。  

新NISAで人気のアメリカのS&P500連動型の投資信託を例にとってお話ししましょう。とにかく過去1年間で値上がりしているのです。  ちょうど1年前の5月に投資を始めた人から見れば、この1年間でS&P500指数は28%も値上がりしています。しかも昨年の5月に1ドル=136円台だった為替レートは直近では1ドル=156円台に円安が進んでいます。  

ですからS&P500連動型の投資信託を1年前に買った人は、たった1年で46%も投資資金を増やしていることになります。

昨年5月に旧NISAで100万円投資をした人は、今頃46万円の利益を手にして喜んでいるのです。  

過去40年以上、株式投資を経験している私の目から見ればこれは異常な現象です。  

アメリカのトップ500社に投資をしたらわずか1年で5割近くも財産が増えるなどということは普通はありません。1年で期待できる利回りは平均すれば10%程度です。46%というのはそれを地道に4年間投資し続けて得られるレベルです。  

逆に言えば、4年分の利益をわずか一年で得られたということはバブルが起きているということです。そしてそれは市場参加者のコンセンサスでもあります。

今、株式市場ではAIバブルが起きていて、NVIDIAを筆頭にアップル、グーグル、マイクロソフトといったマグニフィセントセブンと呼ばれる銘柄が株価をけん引しているのです。  このAIバブルは新NISAが始まった今年1月以降も継続して進行中です。  

1月に始めた人がS&P500連動型の投資信託を買っていたとして計算しても5月下旬時点では24%も儲かっている計算になります。4月にはマイクロソフトやグーグルなど主だったIT企業が好決算を発表し株価は上昇。今週のNVIDIAの好決算でさらに株式市場は上に向かっていきそうです。  

そのように株価が急騰する市場では参加者の間に「チャンスを逃すことを恐れる」心理が生まれます。英語ではFOMO(Fear of Missing Out:取り残される恐怖)というのですが、米国株投資をやっていない状況を避ける心理が働くのです。  

この心理から新NISAを始めた人のうち、こういった事実を知っている、ないしは知ったばかりの人は手始めに、まずはなるべくたくさんのお金を投資につぎ込もうとします。つみたて投資枠では上限の月10万円をとにかく乗り遅れないようにアメリカ株につぎ込む心理が働くのです。  

ここは難しいところだと正直思います。  

もし新人投資家の立場でいたとしたら、新NISAにできるだけ手持ちの資金を移すはずです。なぜならAIブームは当分続きますし、円安傾向も年内は続くだろうと考えているからです。  

とはいえFOMOの心理で取り残されないように瞬間風速で過剰に資金を投資に回すのですから、当然、手持ち資金は少なくなり、日々の生活では節約が必要になるのは当然です。この心理で起きたNISA貧乏はある意味確信犯的であり、ある意味一時的なものと言えるのかもしれません。

(2)「貯金とは別に投資もしたい」 は要注意  

FOMOとは違う心理で起きるNISA貧乏についても考えてみましょう。投資のリスクを気にしすぎる心理が働くと、別の形でのNISA貧乏がおきるかもしれません。  

政府が新NISAを通じて暗に国民に訴えているメッセージは「貯蓄から投資へ」です。  

日本人は金融資産の大半が預貯金で、株式や投資信託などのリスク資産には15%程度しか投資をしていないことが、老後資金の不足を生んでいると言われてきました。この状況を新NISAで打破したいという話です。  

とはいえ株式のリスクを怖いと考える人はたくさんいらっしゃいます。つい先月も、4月中旬から4月末にかけてS&P500が▲5%も値下がりする局面がありました。マグニフィセントセブンの一角であるテスラはEVの価格競争のせいで年初から▲26%も値下がりしています。  

その心理から、投資に関しても「貯蓄とは別に行いたい」と考えてしまうのです。  

でも、仮に銀行預金が1000万円ある中流家庭で、投資も別枠で1000万円やってみたいと思ったら、当たり前ですが家計はきつくなるはずです。  

これはあくまで私の個人的な考えですが、このような友人から、「投資をどう始めたらいい?」と質問された場合に、私は、「まずその1000万円の銀行預金を一年かけてリスク投資に振り替えることから始めたら」と言うことにしています。  

経済の世界では過去30年間にリスクの研究がかなり進んで、株式のリスクの正体はわかってきました。  

あくまでアメリカ株のS&P500のように市場が合理的なルールで動いている場合の話ではあるのですが、S&P500のような平均株価は毎日の市場ではランダムウォークと呼ばれるどちらに行くかわからない動きをしながら、2年、5年という長期では上昇していくことが知られています。  

これを例えると、富士山の頂上から大きさ2mぐらいのビーチボールを下に向かって投げた場合と似ています。ごろごろと転がりながらどっちに転がるかは予測できませんが、長期的には高い確率で裾野まで落ちていくでしょう。  

なぜS&P500がそうなるのかを説明すると、500社のそれぞれの会社の中には儲かって成長する会社もいれば、衰退したり、場合によっては倒産する会社も出てきます。しかし500社集めるとそのリスクは平均化します。  

では平均値はどちらに動くのかというと、500社はアメリカ経済の一番上ずみの大企業ですから、アメリカ経済が成長する限りは平均では成長します。しかもアメリカの大企業は、ほぼほぼ世界市場で稼いでいますから、アメリカよりも高い世界経済の成長率で成長します。  

そしてこれは社会問題になっているように、大企業は中小企業や貧しい人たちから搾取していく分、経済成長の平均よりも成長率は高くなる。これがビーチボールが富士山から転がるように、過去平均で年率10%でアメリカの平均株価が上昇し続けているからくりです。  

だから1000万円の資金があれば12分割して一年かけてS&P500に資金を移していけばリスクは少なくて済むものです。例外が運悪くリーマンショックの一年前に投資を始めたような人ですが、それでも6年我慢すれば元の水準に戻り、そこから後は資産は安定して増えていき今では3倍以上になっているはずです。  

こういったことは、知識だけでなく、40年以上株式投資をやっていれば経験的に皆が知っていることですが、新規で新NISAを始めたばかりの人はそれがわからないことですし、リスクが怖いと思うのです。  

それで安全な預金には手を付けずにプラスアルファで投資を新たに始めてしまう。そうなると家計が苦しくなるのは当然だといえるのです。

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