もはや生活の一部となっているSNS。しかし、誹謗中傷やいじめ、さらには犯罪行為の温床となることも多いです。
また、SNSに依存しすぎた結果、人間関係に支障をきたすこともあるでしょう。そういったSNSの負の側面は、あらゆる世代が考えるべき問題なのです。
自分は若者のようにSNSに没頭しないから、なんの危険性もないと高をくくってはいけません。
現在、SNS慣れしていない中高年以上をターゲットにする犯罪が急増中なのです。
代表的なものが詐欺で、警察庁の公表では、令和5年中の全国の詐欺被害総額は、ロマンス詐欺が約177億円、投資詐欺が約278億円で合わせて約455億円にものぼります。
インスタグラムで女性を狙う「ロマンス詐欺」では、人気俳優やアイドルのほかネット上で画像を拾った赤の他人になりすましてDM(ダイレクトメッセージ)を使って「あなたの写真に一目惚れしました」「日本が大好きな台湾人です。ぼくの日本語の先生になってくれませんか」などと近づき、親しくなると恋人関係や結婚を匂わせて、金銭を要求してきます。
男性はLINEやフェイスブックを介した「投資詐欺」に狙われやすく、ある日突然見知らぬトークグループに招待され、そこで繰り広げられる「数か月で資産を何倍にも増やす方法を特別に教える」「投資方法についてディスカッションしましょう」といった会話に参加させられ、信頼してしまうという。
いまや、AIを使って動画や音声までねつ造できます。人気俳優や著名な文化人などを騙って誘われ、信じてしまうケースも増えているようです。
また、SNS上に表示される広告にも、悪質な詐欺まがいのものが多い。新聞やテレビに比べて審査が甘いので、詐欺が入り込みやすいのです。それでも、大手企業が運営しているからと信じてしまう人が一定数います。
SNS上で起きている詐欺の存在や手口を知り、自分もいつか狙われると警戒しておくことがいちばんの対策です。
少しでも怪しいと思ったら、まずは人に相談したり、ネット検索をしてみることです。
特にロマンス詐欺や投資詐欺は海外の犯行グループが関与していることが多く明らかに日本語や漢字がおかしかったり、送られてくるURLが不自然な場合が多いので、怪しいと気づけるポイントを知り、確認する習慣を身につけてほしいものです。
国籍も年齢も性別も無差別に、心や体、人間関係、時には資産まで奪っていくSNSです。
スマホの向こうに広がる“地獄”から救い出すべく、諸外国では急ピッチで対策が進められています。
アメリカではすでに70%の州で学校へのスマホの持ち込みまたは使用が禁止されているほか、中国でも昨年、未成年のスマホの使用時間に厳しい制限を設ける方針を示しました。
日本でも甲子園出場常連の大阪桐蔭高校野球部など、一部でスマホ禁止が広がっています。
40代くらいまでの世代は“自分たちも若い頃からスマホを使っていたし、SNSもやっていたから”と容認しがちですが、昔のSNSといまのSNSはまったく別物です。
すぐに通信制限がかかり“強制デトックス”になっていた20年前とは異なり、通信環境が整っているいまはいつでもどこでも、いつまでもサクサクつながれるうえ、AIによって一人ひとりに合わせてより面白いものが表示されます。
一般に、より新しくヒットしているSNSほど“毒性”が強いといわれています。
SNSを中心としたネット依存による脳の損傷はコカインと同等だといわれており、WHO(世界保健機関)はこれを受けて2019年に「ゲーム障害」と名づけ、新たな依存症に認定しました。
体内に入ったアルコールの影響をデトックスするには1週間、ニコチンは3日から1週間ほどかかるといわれている中、SNSなどによる依存から抜け出すデジタル・デトックスには3週間以上かかります。
試しに「スマホに触れない時間」を5時間ほど設けてみてほしいものです。
SNSの情報に取り残される不安や恐怖を感じるなら、間違いなくSNS依存だと言えます。
とはいえ、SNSは娯楽としてだけでなく、災害情報や交通情報の入手のほか、連絡ツールとしても優れており、すぐに断ち切るのは難しいこともある。精神科医の樺沢紫苑さんは「最大でも1日3時間まで」と決めて、徐々に利用時間を減らしていく方法をすすめします。
自分がいま、どれくらいSNSを使用しているか、スマホのスクリーンタイム機能で確認してみましょう。もし3時間を超えるようなら、まずは30分~1時間ほど、使用時間を減らしてみてください。
歩きスマホをしない、食事中はスマホを見ない、移動中は本を読むなどと小さなルールを決めるだけでいい。SNSを使いすぎている人ほど、ルールを守るだけで1時間くらいは簡単に減らすことができます。
特に夜のSNSは寝つきを悪くし、精神疾患に直結しやすいのです。
対策としては、あらかじめ予防線を張っておくといいでしょう。
LINEのプロフィールに“夜10時以降は既読がつきません。緊急の場合はお電話ください”と書いておいたり、スマホを寝室に持ち込まないようにするのもいいでしょう。スマホのアラームではなく、目覚まし時計で起きるようにすれば問題ありません。
SNSはあくまでも楽しく、便利に過ごすための“道具”だったはずです。心も、脳も支配されないよう、正しい知識とともに距離感を保ちましょう。