氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

事実上の「大増税」が密かに進行している

2024年度予算が3月28日の参院本会議で可決・成立しました。一般会計の総額は112兆5717億円で、過去2番目の規模。110兆円台となるのは2年連続です。  

ひと昔前まで、一般会計の規模は100兆円というのが常識でしたが、予算の肥大化にともなってその常識は変わり、110兆円台が定着しつつあります。予算規模が大きくなっているのは、言うまでもなく社会保障費が増大していることに加え、防衛費の増額が決まったことで、さらに支出が増えているからです。  

一般会計の数字だけが取り上げられるが、政府の予算はそれだけではなく、一般会計と並行して特別会計が存在しており、その規模は一般会計との重複を除いても200兆円を超えます。

特別会計の支出も社会保障費が多く、年金と医療だけで80兆円近くに達します。  

多くの人が勘違いをしているのが、一般会計予算における社会保障費というのは、年金や医療への支出そのものではありません。国民から徴収する保険料だけではカバーできない部分に対する補填に過ぎず、その裏には年金と医療本体の巨額支出が控えています。

純化して考えると、一般会計110兆円に加えて、年金や医療本体の支出を合わせた予算規模は200兆円近くになるのです。  

高齢化によって社会保障費が増大する一方、日本経済がゼロ成長だったことから税収や保険料収入が伸び悩んでおり、財政は火の車です。そもそも税収が70兆円しかないところに、110兆円の支出を行っているわけで、この枠組みが持続不可能です。

こうした中、岸田政権は防衛費の増額と子育て支援策の拡充を決め、支出がさらに増えることが確実となりました。防衛費は長くGDP(国内総生産)の1%がメドとされていましたが、その枠組みが名実ともに外され、最終的には10兆円に拡大します。

子育て支援策も事業規模は3.6兆円になると予想されており、両者を合わせると9兆円規模の支出増です。  

一部の論者は、政府はいくらでも国債を発行できると主張しており、財政赤字は何の問題もないとしているが、当然のことながら、そのようなことは原理的にありえません。

日銀が国債を引き受けるのであれば、理屈上、無制限の国債発行が可能ですが、中央銀行が際限なく国債を引き受ければ、ほぼ100%インフレが進行し、国民が銀行に預けた預金はその分だけ溶けてなくなっていきます。  

国債を大量発行できても、インフレとの引き換えになるため、銀行預金に税金をかけたことと同じと解釈することができます。

財政の世界ではこのことをインフレ課税と呼びますが、インフレの進行=増税であるという現実についてよく理解しておく必要があるでしょう。

国債を大量発行しても問題ないと主張している人は、インフレ課税のメカニズムを理解できていないか、あるいは知っていながら、何らかの理由であえて言及していないのかのどちらかです。  

政府も財政が火の車であることは重々承知しており、霞が関との関係が深いとされる岸田首相は財政難に対して歳入増で対処しようとしています。

もっとも歳入増といっても、政治的に消費税は増税できる環境になく、大企業に対する遠慮から法人税も手付かずとなっています。当然のことながら国民の財布に直結する所得増税も事実上、不可能に近いのです。  

こうした中で岸田政権が繰り出してきたのは、医療保険の流用という奇策でした。 財源の見通しは立っていないのに  岸田政権は子育て支援策の財源として、医療保険に上乗せする形で国民から徴収する「支援金制度」の導入を決めました。

保険というのは政府予算の中では事業という位置付けであり、事業である以上、受益者と負担者が一致している必要があります。  

医療保険についていえば、保険料を納付している人と医療サービスを受ける人が同一なので保険として成立していますが、子育て支援策の場合、負担者と受益者が必ずしも一致するとは限りません。

こうした事業性の薄い政策支出については税でカバーするのが本来の姿であり、今回の支援金制度は限りなく保険の流用に近いのです。  

政府はこの支援金制度を使って1兆円程度を確保したい意向ですが、保険の流用まで行って財源を見つけ出しても、全体からすればごくわずかであり、まさに焼け石に水です。

防衛費の増額についても明確な財源は定められておらず、岸田政権は収入の見通しが立たないまま、大幅な支出増に踏み切ったことになります。  

日銀は2024年3月の金融政策決定会合においてマイナス金利の解除を決定し、日本でもいよいよ金利の上昇が始まろうとしています。これまでは、ほぼゼロ金利だったことから国債の利払い費も限りなく少額で済んでいましたが、今年度以降、金利の上昇が進めば、政府の利払い費も急増することになります。  

政府は1000兆円を超える借金を抱えており、もし平均金利が2%に上昇すれば、政府の利払い費は最終的に20兆円になります。ここまでくると防衛費の増額や子育て支援策の拡充などかわいいものです。  

もし一連の支出増に対して十分な財源を確保できない場合、かなりの確率でインフレが悪化するでしょう。インフレというのは物価が上がることですが、インフレになると損する人と得する人が明確に分かれることになります。

具体的に言えば、インフレで得をするのはお金を借りている人、損をするのはお金を貸している人です。  

ある人物が100万円を借りて5年後に返済する契約を結んだとしよう。5年後に物価が2倍になっていても、お金を借りた人は100万円を返せばそれで済みます。

ところが物価が2倍になった時の100万円は実質的に価値が半分なので、お金を貸した人は大きな損失を抱えることになりまあす。  

日本においてもっとも大きな借金をしているのは日本政府であり、反対に最大のお金の貸し手は日本国民(銀行預金を通じて政府にお金を貸している)です。

インフレが進み物価が2倍になれば、政府債務は実質的に半額となり政府の財政問題は一気に解決します。

一方で国民は預けている預金の価値が実質的に半額になってしまうので、政府が銀行預金の半額を税金で徴収したことと何も変わりません。これがインフレ課税の仕組みです。  

国債は負債ではなく資産だ!」と声高に叫んでいる人をよく見かけますが、国民がお金を政府に貸しているので、その主張はその通りです。

しかし国債の過剰発行でインフレが進めば、資産価値は大幅に棄損し、銀行預金の実質的減額という形で国民が損失を抱える、ただそれだけの話です。  

多くの人は、直接的な増税には激しい拒否反応を示すものの、インフレ課税という間接的な大増税には無関心です。このまま事態が推移すれば、インフレによって事実上の大増税が行われ、政府の財政が一気に好転するという流れになる可能性が高いのです。

このような形で大増税を受け入れてよいのか、日本国民はよく考える必要があるでしょう。  

ちなみにインフレというのは気づいた時には、相当程度、事態が進行していることが多く、じっくりと考えている暇はありません。

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