氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

「日経平均は絶好調」でも生活が苦しい…

世界の中でも株価が大きく上がっているのだから、日本経済は絶好調なのかというと、どうもそうでもないです。

経済力を示す最も主要な指標であるGDP(国内総生産)は、2023年にドイツに抜かれて世界4位に転落しました。かつてGDP世界2位だった日本は中国に抜かれて久しく、その背中も見えなくなったと思ったら、今度は人口がはるかに少ないドイツにも抜かれることになったわけです。

もちろん、中国など人口が多い国のGDPが大きいのは当然とも言えるが、人口1人当たりのGDPでみても、日本はイタリアにも抜かれてG7(主要7カ国)で最下位です。

もはや「経済大国」などとは言っていられない事態に直面しています。  

株価は世界の中でも上昇が目立つのに、日本経済はすっかり落日の様相を見せているというのは、どうにもふに落ちません。

GDPの順位低下と株価上昇。この一見矛盾する動きは、なぜ起きているのでしょうか。  

1月15日にドイツ連邦統計局が発表したドイツの2023年のGDPは前の年に比べて6.3%の増加でした。

日本の2023年のGDPは来月にならないと数値が発表されませんが、概ね590兆円程度と見られる。前の年と比べると5.7%の伸びです。  

もっともこの伸び率は、「名目」と呼ばれるもので、物価が上昇している分、消費も生産も数値が上振れします。

これを修正するために、物価上昇分を差し引いたものが「実質」ですが、実質のGDP成長率は日本の場合は1.5%程度になると見られています。

つまり、4%程度の物価上昇が見た目のGDPを押し上げているのです。  

これはドイツも同様で、実のところ、ドイツの実質GDPは0.3%のマイナスということになります。

6%以上の物価上昇分が見た目のGDPを押し上げているのです。

物価上昇を引いた実質で見る限り、日本の成長率の方が、ドイツをはるかに上回っているので、日本の株価上昇率が高い、と考えることもできます。

もうひとつ大きいのが「通貨価値の下落」だ。円安が大きく進んだために、ドルベースで見たGDPは小さくなります。GDPのランキングは各国通貨の統計数字をドル換算したもので比べるので、ドルに対する為替レートが安くなれば、GDPは目減りし、順位を落とすことになる。それがモロに表れたのが2023年の日本のGDPだったと言えます。  

日本円建てで5.7%も伸びた名目GDPは、ドルベースに換算すると1.2%のマイナスになってしまいます。

専門家の中には「行きすぎた円安」によって実態以上にドル換算したGDPが小さく見え、実態を表していない、という人もいます。

多くの為替専門家は、2024年は円高方向に振れると予想していますが、その根拠は「日米金利差」です。

米国のインフレが終息し、米国の金利引き上げが終わっただけでなく、今後、引き下げに転じる可能性があるとする一方、日本はマイナス金利を解除するので、今年は金利差は縮小する、だから円高に触れるというわけです。

もっとも、そうした「円高予想」にもかかわらず、昨年末から年明けの為替相場はなかなか円高方向に進んでいかず、昨年末には一時、1ドル=140円台を付け、年明けは1ドル=130円台に突入かと思われたが、ジリジリと再び円安になり、1月中旬には1ドル=147円まで戻しています。

為替専門家が言う「円高」も、最近は1ドル=130円が良いところで、2年前の1ドル=115円という水準に戻るという予想をする専門家はほとんどいません。

仮に1ドル=130円になったとしても、本来は、到底「円高」とは呼べないレベルにまで日本円の通貨価値は下落していると見るべきです。  

この通貨価値の下落が株高の理由と見ることもできます。新型コロナ対策で世界の中央銀行は、お金を刷ってばらまくことで景気の底割れを防ごうとしました。経済活動が止まったら、1929年の世界大恐慌のような猛烈なデフレに襲われかねません。

そこで通貨量を一気に増やすことで、経済縮小を防御したわけです。これは一定の効果をあげたと見ていいですが、その後遺症として表れたのがインフレです。

経済実態以上に通貨供給を増やしたのだから、貨幣の価値が下がり、モノの価格が上がりました。

いわゆる「カネ余り」状態を人為的に作ったわけで、不動産や株式、貴金属、そしてビットコインまで資産の価格は大きく上がりました。

金融資産だけでなく、生活必需品の値上がりも激しさを増したので、中央銀行は一気に金利を引き上げて、過熱した景気を冷さざるを得なくなりました。

そしてようやくインフレが沈静化しつつあるというのが世界の状況です。  

一方で、日本でもマイナス金利政策や量的緩和などで「カネ余り」に拍車をかけました。これが株価を上昇させ、不動産価格を高騰させている大きな要因です。  

2023年の上半期(1~6月)に、東京23区の新築分譲マンションの平均価格が初めて1億円を超えました。

前年同期に比べて6割も高い1億2962万円という驚愕の価格です。もちろん東京で働くほとんどの人には手が届かない価格です。

中古マンションの価格も上がっているので、保有資産価値の上昇が購買力を生む「買いが買いを呼ぶ」バブル状態になり始めています。

もちろん、円安によって「超お買い得」と感じた外国人が日本の不動産を買っているのも事実ですが、そうした「実需」だけで不動産が上がっているわけではありません。

年明けに3万3000円台だった日経平均株価が、わずか6営業日で3万6000円を付けることなど、バブル期を彷彿とさせる値動きです。

もちろん、新NISA制度が始まったことで、新たな長期投資資金が株式市場に流入しているのも事実ですが、だからといって、あまりにもハイペースです。  

問題はそうした資産以外の生活必需品の物価上昇が、世界と様相を異にしていることです。

米国の場合、物価上昇と共に給与の引き上げも進み、購買力は維持され、物価上昇が経済成長へとつながったと言ってもいいのです。

日本でも岸田首相が「物価上昇を上回る賃上げ」と繰り返し発言しているのは、日本の物価上昇が輸入原材料やエネルギー代に消えてしまい、企業や個人事業主の儲けにつながり、それが給与の形で還元される「好循環」になっていないことです。  

購買力が維持できなくなれば、経済成長は止まり、日本の経済力はますます低下していきます。

一段と円安が進めば、円建ての株価や不動産はまだまだ上昇する可能性があります。だが、円安で輸入物価の上昇に再び火がつけば、資産価格の上昇に何の恩恵も受けない庶民の生活は一段と厳しさを増すことになるでしょう。

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