NISA口座を開設する人が増えるなど、投資未経験者の投資への関心が昨今は高まっています。
一方、最近では若者を対象としたSNS等を通じた投資詐欺が増加しています。投資詐欺から身を守るためには、まずリスクとリターンの関係性を理解しなければなりません。
auじぶん銀行の調査では、現役大学生に対して投資に関心はあるかを聞いたところ、「ある(28.0%)」「どちらかというとある(33.6%)」を合わせて、6割以上の人が関心があると回答しました。
コロナ禍による時間的な余裕の増加も追い風となり、資産形成に向けたアクションが活発化したと考えられます。
特に2018年に始まった「つみたてNISA制度」の注目度は高く、つみたてNISA口座数は2022年9月末時点で、466万口座です。
2021年末の339万口座から、約1年弱で37.6%増加しました。
高リスクな投資に関心の高い若者 資産形成に向けた投資アクションが活発化する一方、若者が過度にリスクをとって投資をすることについて懸念されています。
金融広報中央委員会によると、若年層は他の世代に比べてリスク性金融資産への関心が高く、安定性や低リスクよりも成長性や収益性を重視する傾向があります。
また、リスク許容度が高いことに加えて、若者は新しい金融商品や金融ツールへの適応力が高いこともあり、暗号資産への投資・関心も高い傾向があります。
しかし、資産形成を目的とした投資をする場合、成長性や収益性だけを求めるのではなく、自分にとって適切なリスク許容度を把握した上での投資が必要です。
リスクを最小限にコントロールしながら、安定的に資産形成をすることが重要であると考えています。
若者のリスク性金融資産への関心が高いため、最近では若者を対象としたSNS等を通じた投資詐欺が増加しています。
警察庁によると、利殖勧誘事犯に関する相談当事者の年代別構成比は、2017年には20代以下は全体の10%にも満たなかったものの、2021年には20代以下が全体の20%近くにまで増加しています。
利殖勧誘事犯とは、「確実に値上がりします!」「絶対に損はさせません!」「元本は保証します!」などと言って勧誘し、お金を騙し取る商法です。
しかし、リスクとリターンは表裏一体の関係であるため、高いリターンを得ようとするとリスクは高まり、リスクを低く抑えようとするとリターンも低くなることを理解する必要があります。
投資詐欺から身を守るためには、まずリスクとリターンの関係性を理解し、美味しい話は存在しないことを認識する必要があります。
2022年9月、神奈川県の私立高等学校3年生120名を対象に、投資詐欺をテーマとした金融教育の授業を行いました。
2022年4月1日から成年年齢が20歳から18 歳に引き下げられたことで、親の同意なしでの契約が可能となったことにより、携帯電話の購入やクレジットカードの作成、返済能力が認められるとローンを組んで自動車を購入することができます。
自分の意思でさまざまな契約をすることができる一方で、悪徳商法などによる消費者被害の拡大が懸念されます。 そこで、教職員の方からの要望を受け、投資詐欺から身を守るにはどうすべきかについて1時間の授業を行いました。
授業の冒頭では、なぜ資産形成が必要だと言われているのかをクイズ形式で考え、その後、投資について学習しました。
投資によって、投資金額が増減する理由を理解した後、株式投資のシミュレーションを行いました。
今回は株価のボラティリティが高かった上場企業を4社選定し、リスクとリターンの関係性を分かりやすくする工夫をしましました。
生徒に対し、5年前にタイムスリップした設定で、「上場企業4社のなかからあなたの100万円を、どの企業に投資しますか?」と問いかけ、生徒にワークシート上で予想させました。 企業の名前を知っている生徒は、その企業に投資をする傾向にあった一方、企業の名前は知らないが「AI」「NFT」といった時流に乗ったビジネスを手がける企業に投資をする生徒も非常に多く見られました。
結果として、株価チャートを見せることで、高いリターンを得るためには大きな損失をする可能性があることがわかり、「リスクとリターンの関係性」について理解を深めることができました。
高校生「絶対に儲かる話はない」を実感 そして、投資詐欺について考えます。まずは株価チャートを用いてリスクとリターンについて考えたのち、リスク・リターンの2軸をマトリクスで表すことで、「ローリスク・ローリターン」「ミドルリスク・ミドルリターン」「ハイリスク・ハイリターン」は金融商品として存在するが、「ローリスク・ハイリターン」の商品は存在せず、それは美味しい話であることを示します。
さらに、美味しい話の例として、集めたお金を配当金と偽り、横流しする「ポンジスキーム」について実際の投資詐欺の事例とともに紹介しました。
最後に、投資詐欺の被害を受けていると感じたら、消費者庁「消費生活センター」や金融庁「金融サービス利用者相談室」などに相談をすること、絶対に1人で抱え込まないことを伝え、授業をまとめました。
生徒からは、 「投資やお金に関しておいしい話は在在しないということをいつも頭に入れて生活したいと思います。万が一のときは、すぐに親や消費者センターに相談しようと思います。」 「絶対に儲かる話はないと思いました。
知らない名前の投資案件を聞いたら、まずそれを調べてみようと思います。」 「投資をすると儲かることもあるが必ずプラスになるとは限らないことがわかった。」 との感想を得られました。
リスクとリターンの関係性を認識したことで、美味しい話は存在しないことを理解できたのではないかと考えられます。
大学生からは「実際に投資案件をDMで受けた」「友達から投資の勧誘されたことがある」「SNSで怪しい広告を見かけた」などの声が上がっしましょう。
そのため、以下の4点に注意しましょう。
1)聞き馴染みのない名前の投資案件に対しては、一旦踏みとどまること
2)「元本保証」「高利回り」といった言葉には疑いをもつこと
3)「月利5%」「年利30%」という投資案件は要注意。高いリスクの米国株式でも年利回りは8%程度であるため、それ以上の数字には疑いをもつこと
4)投資案件を勧誘してきた人は、政府や自治体が認可した「免許」を持っているのかを確認すること
怪しい投資勧誘をされた経験は誰しもあると思います。
まだ貯蓄や収入が少ない若者に対して、少額から投資を勧誘したり、借金をさせて投資をさせたりなどの事例も報告されています。
詐欺師に渡してしまったお金は簡単には戻ってきません。「手間や時間をかけずにお金を増やす方法」ではなく、まずは、「自分のお金を守る方法」について考える必要があるでしょう。