氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

新NISAで、大きく手ごわい「1800万円の壁」

新NISAは1800万円という生涯投資枠をなるべく早く埋める入金ゲームですが、あまり焦って入金してしまって、日々の生活が金銭的に成り立たなくなるのは本末転倒です。

取り崩し時だけでなく、上限1800万円を目指した、つみたて期間中にも“落とし穴”があるのでみていきましょう。  

たとえば、次のような収入・資産構成の人について考えてみましょう。

《40歳・会社員:NISA口座100万円 特定口座100万円 貯金1000万円 月収50万円 月の生活費30万円》  

2023年までは、つみたてNISA口座で月3万円、特定口座で月2万円ずつ、S&P500に連動するインデックスファンドにつみたて投資していたとします。  

この人は果たして、2024年から始まる新NISAで、毎月30万円つみたて、最短5年の上限1800万円達成を目指しても大丈夫でしょうか。まずは月々30万円をどう捻出するか、その内訳を考えてみる必要があります。  

この人の場合、月収50万円で月々の生活費が30万円ですから、残りの20万円はまるまる新NISA向けの資金として利用できます。それでも足りない10万円に関しては、貯金1000万円から切り崩していくとしましょう。

《5年後のポートフォリオ:新NISA口座1800万円 旧NISA口座100万円 特定口座100万円 貯金400万円》  

5年間の運用損益を考慮しない場合、現在から5年後のポートフォリオは、

「現金比率16.7%、株式比率83.3%」という構成から見ても、株式比率が高すぎて、リスクが高くなってしまいます。  

つみたて開始当初は、毎月20万円を貯蓄に回せて、しかも貯金が1000万円もあるので、余裕で新NISAの生涯投資枠を5年で埋め切れるように見えました。  

しかし、5年後のポートフォリオを見ると、総資産の8割以上を株式が占め、1000万円あった貯金が400万円に目減りして、現金比率が低下しすぎています。

もし金融ショックや景気後退による株価暴落に見舞われて、新NISA口座のリスク資産が激減したら一大事です。

株価が暴落するような不景気のときは、収入も目減りしてしまうリスクも高いでしょう。仮に月々の生活費30万円を月収では埋め切れず、400万円の貯金からの取り崩しを強いられてしまうかもしれません。  

たとえば、新NISAの生涯投資枠1800万円を埋め切った5年後に、投資していたS&P500などのインデックスファンドが40%下落したら、

・新NISA口座などにあった2000万円の運用資産の評価額は1200万円に減少(800万円の含み損)

・支払いが重なったため、400万円だった貯金が200万円まで目減り、 といった窮地に陥ってしまうかもしれません。  

さらに支払いが重なってしまうと、せっかく苦労してつみたてた新・旧NISA口座の運用資産を損切りして、現金化する羽目に陥るかもしれません。

そうなると、株価が気になって眠れなかったり、仕事が手につかなくなったりしてしまうでしょう。

やはり、新NISAが生涯投資枠1800万円をできるだけ早く埋める入金ゲームだったとしても、投資は余裕資金で気長にやるべきもの。

「1800万円の壁」はかなり大きく、手ごわいのです。  

新NISAのもう一つのメリットは「死ぬまで非課税運用できる」ことですから、早く運用できない分は、長く運用することでカバーしましょう。  

2023年で終了するつみたてNISA同様に、毎月3.3万円、年間40万円の資金で「1800万円÷40万円=45年間」かけて、気長に1800万円の枠を埋めてもいいのです。  

45年間といえば、25歳ではじめて69歳までかかってしまう計算ですが、途中、60歳になった時点でつみたてをやめて、新NISAの非課税枠すべてを使い切れなくても別に問題はありません。

いざというときに必要な現金を十分に確保したうえで投資することのほうが大切です。

では、月々のつみたて額を10万円減らして、20万円にした場合はどうでしょう。  

この場合、毎月20万円×12か月で年間240万円。「1800万円÷240万円=7.5年」で新NISAの生涯投資枠を埋め切ることができます。  

先ほどと同じ資産状況の場合

・新NISAつみたて開始前 《旧NISA口座100万円 特定口座100万円 貯金1000万円 月収50万円 月の生活費30万円》

・7.5年が経過後 《新NISA口座1800万円 旧NISA口座100万円 特定口座100万円 貯金1000万円》  

貯金の額を1000万円から一切減らすことなく、新NISAの上限1800万円の枠を埋め切ることができました。

資産ポートフォリオは「現金33.3%、株式66.6%」に変化します。現金比率は決して高くはありませんが、1000万円の現預金があれば、株価が暴落しても安眠できるでしょう。  

この人の場合、月々の生活費は30万円なので年間360万円。もし不況で月収が13.3万円に激減しても、「預金1000万円+(激減した年収約160万円×5年=約800万円)=1800万円」で、なんとか5年間は暮らすことができます。

5年後にはきっと株価も回復して、再び運用資産も増加し、収入が生活費を上回るレベルになっているでしょう。  

むろん、総資産の3分の2を株式で運用するのは少し比率が高すぎます。

そのため、新NISAの生涯投資枠1800万円を埋め切るというミッションをクリアした時点で、いったん追加投資はお休み。現金比率を上げるため、貯金に励むべきだと思います。  

「できるだけ早く1800万円を埋め切る」というのが新NISA攻略法だといっても、新NISAに投資する資金は、「月々の収入?生活費」の範囲内で収めるべきです。  

まだ貯金自体が100万円、200万円と少ない人は、毎月の余裕資金の半分は貯金に回し、残り半分を新NISAへの投資に充てるなど、工夫しましょう。

新NISAへの月々の投資資金は「月々の収入?生活費と、貯金の額によって決まってくる」といっても過言ではありません。 

先ほどの例では、2024年の新NISA開始以前にすでに旧NISA口座に100万円、特定口座に100万円の運用資産がありました。  

2023年で終了する旧NISA口座の運用資産は、投資した年から、つみたてNISAなら20年間、一般NISAなら5年間、今後も非課税運用できます。

わざわざ、非課税運用できる資産を現金化して、新NISAに移し替える必要はありません。  

逆に、新NISAの生涯非課税投資枠1800万円にプラスして非課税運用できる貴重な投資枠として、非課税期間終了まで運用を続けるべきです。  

しかし、特定口座で運用している資金に関しては今後、利益を確定したときにその約20%が税金として持っていかれてしまいます。  

2024年以降、年間360万円、総額1800万円までは非課税運用できるようになるわけですから、新NISAの投資枠に空きがある2024年早々に、いったん現金化して、新NISAに移し替えたほうが断然有利です。  

つまり、この例でいうなら、

・旧NISA口座の100万円はそのまま非課税運用継続。

・特定口座の100万円は売却して新NISAの投資資金に充てる。  

そして、残り1700万円の枠を月収50万円から月の生活費30万円を引いた月20万円で埋めていくのが、新NISA攻略の最適解になります。

ここまでの攻略法を整理すると、

・旧NISA口座にある資金は売却しない(旧NISA口座はいったん運用資産を売却すると非課税枠が消滅してしまうので、非課税期間いっぱいまで運用を続けるのがベスト)。

・利益に課税される特定口座(もしくは一般口座)にある資金は場合によっては現金化して新NISAに投資、 という流れになります。  

課税口座にある資金を売却するかしないかは、基本的には、

・年間360万円の投資余力がある人は売却しない。

・年間360万円の投資余力がない人は売却して新NISAでの投資資金に充当  

という判断になります。  

ただ、特定口座と新NISA口座でまったく同じインデックスファンドに投資しているといった場合、たとえ360万円の投資余力があったとしても特定口座の資産は売却して、非課税口座の新NISAに移し替えたほうがいいでしょう。  

その場合、これまでの利益に約20%課税されたうえで非課税運用に切り替える効果と、税金の支払いを繰り延べして課税口座で運用を続ける効果を天秤にかけることになります。  

その後の運用がうまくいけばいくほど、非課税の新NISA口座に移し替えたほうが有利になります。

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