氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

非正規雇用が生む経済格差と家族形成格差

新卒一括採用の歴史が長い日本では、新卒で正規雇用の職に就けなかった場合、経済状況のみならず家族形成状況にも差異が生じやすいのです。

これまでにも将来を担う世代の経済環境の厳しさや、経済面の影響が家族形成に及ぼす影響について、紹介します。

総務省労働力調査」によると、雇用者に占める非正規雇用者の割合は1990年代半ばから上昇しています。

1990年と2022年を比べると、つまり、親世代と現在の若者が新卒で就職した時期と比べると、非正規雇用の割合は25~34歳では男性は3.2%から14.3%(+11.1%pt)へ、女性は28.2%から31.4%(+3.2%pt)へと上昇しています。

つまり、ひと昔前は結婚や子どもを持つことなど家族形成を考える時期にある男性はおおむね正規雇用で働いていましたが、現在では7人に1人は非正規雇用という不安定な立場で働いていることになります。

 

 

これは日本の少子化の進行を考える上で大きな課題です。

正規・非正規の差は年齢とともに拡大、男性で顕著、学歴でも是正できず 正規雇用者と非正規雇用者では賃金水準に差があります。

厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」より、年齢階級別に正規雇用者と非正規雇用者の平均年収を推計すると、正規雇用者の方が平均年収は多く、年齢とともに差が拡大していきます。

その差は特に男性で顕著であり、非正規雇用者の平均年収は年齢を重ねても大きくは増えず、45~49歳で約300万円ですが、正規雇用者では年齢とともに年収が増加するため、45~49歳で約600万円になり、非正規雇用者の約2倍です。

同様に、学歴別に平均年収を推計したところ、男性では全ての年齢階級において、大学卒の非正規雇用者は中学卒や高校卒の正規雇用者の平均年収を下回ります。

女性でも年齢とともに大学卒の非正規雇用者は中学卒や高校卒の正規雇用者の平均年収を下回るります。

また、大学卒同士を比べると、男性は45~49歳で、女性は50~54歳で、正規雇用者は非正規雇用者の平均年収の2倍を超えます。

つまり、高学歴であることよりも、正規雇用の職に就いていることの方が、年収を高める効果は大きいのです。

加えて、同世代においても、正規雇用者であるか非正規雇用者であるかによって「世代内の経済格差」が生じています。

そして、高学歴であっても必ずしも経済格差を是正できるわけではありません。

男性と比べて働き方が多様な女性の生涯賃金について、働き方の違いに注目しながら捉えていきます。

2013年に成長戦略として「女性の活躍」が推進されて以降、仕事と家庭の両立環境の整備が進み、30代を中心とした出産や育児期の女性の就業率が上昇し、いわゆる「M字カーブ」は解消に近づいています。

一方で現在は「L字カーブ」が課題で、L字とは、横軸に女性の年齢、縦軸に正規雇用者の割合をとって、その関係を見ると、20代後半にピークを示した後は低下し、グラフの形状がL字になっています。

 

 

正規雇用と非正規雇用では賃金水準に差があるため、正規雇用の仕事を継続した女性と、出産や子育てなどを機に一旦離職し、パートタイムなどの非正規雇用の仕事で復職した女性とでは生涯賃金に大きな差が生じます。

大学卒の女性の生涯賃金を推計すると、大学卒業後に直ちに就職し、30代で2人の子どもを出産し、それぞれ産前産後休業と育児休業を合計1年間取得後、復職し、60歳まで就業を継続した場合は2.1億~2.2億円です。

一方、第1子出産時に退職し、第2子就学時にパートタイムで復帰した場合は約6,500万円となり、2人の子どもを出産後も就業継続した場合と比べて1.5億円程度の差が生じます。

また、大学卒業後に非正規雇用の仕事に就いた場合は、出産などで休職することなく働き続けても生涯賃金は1.2億円であり、正規雇用で2人の子どもを出産後も就業継続した場合の半分程度にとどまります。

これらの金額差は、女性本人の収入として見ても、世帯収入として見ても、多大であり、配偶者の収入や資産の相続状況にもよりますが、特に住居や自家用車の購入、子どもの教育費等の高額支出を要する消費行動に影響します。

また、女性を雇用する企業等から見れば、出産後も就業を継続していれば生涯賃金2億円を稼ぐような人材を確保できていたにも関わらず、両立環境の不整備等から人材を手離す結果となり、新たな採用・育成コストが発生しています。

女性の出産や育児を理由にした離職は、職場環境だけが問題ではないが、両立環境の充実を図ることは、企業にとってもコストを抑える効果はあります。 

2018年のデータを用いて10年前と比較すると、大学・大学院卒の正規雇用者では30~40代で賃金が伸びにくくなり、賃金カーブが平坦化しています。

35~49歳で減少した累積所得は、男性では約730万円、女性では約820万円と推計され、賃金カーブが平坦化した要因について、「高年齢者雇用安定法」の改正によって雇用期間が延長されたことで中間年齢層の賃金カーブが平坦化し、生涯所得として見れば変わらない、という説明もあるようです。

しかし、それは同一世代のみに注目した場合の解釈です。

今の新卒世代とその親世代を比べると、既にこれまでの累積所得に差が生じている上、60歳以降の雇用環境が同様とも限らず、雇用期間が延長されたからといって、世代間の経済格差が是正されるわけではありません。

30~40代は結婚や子育ての家族形成期であり、住居や教育費等の出費がかさむ時期です。この時期に収入が伸びにくくなると、消費抑制だけでなく家族形成にも影響を与えかねません。

年収既婚率はおおむね比例、年収300万円を超えると既婚者増加 男性の年収と既婚率は、おおむね比例関係です。

比較的若い年代では年収800万円以上では、逆に既婚率が下がる状況もあり、仕事が忙しく結婚相手を見つける時間がない、あるいは高収入という好条件から結婚相手を吟味しているということなのかもしれません。

 

 

一方で、各年代の既婚率は、25~29歳で23.6%、30~34歳で48.2%、35~39歳で61.5%であり、いずれも各年齢階級の年収300万円付近に位置します。

つまり、結婚には「300万円の壁」がある様子が見てとれます。

正規雇用の男性の平均年収は年齢を重ねても300万円をやや上回る程度です。

「300万円の壁」は単なる金額の多寡ではなく、将来を考えられる安定的な職に就いているのかどうかが影響し、不安定な就業環境は未婚化を促します。

経済環境の厳しさは、未婚化だけでなく、結婚したとしても子どもを産み控えることにもつながります。

就職氷河期世代は既に中年に、増加する「パラサイト・シングル」 若者の経済環境の厳しさが増す中で、1990年代以降、経済的に独立ができないままに中年期を迎える者が増えています。

総務省によれば、親と同居の壮年(35~44歳)未婚者数は増加し、完全失業者や無就業・無就学者、臨時雇・日雇者などの特に厳しい経済状況にある者は、2016年で約2割を占めます。

また、親と同居の壮年未婚者の完全失業率は8.1%であり、同年代の平均(2.9%)をはるかに上回ります。

「令和2年国勢調査」によると、2021年の親と同居の壮年未婚者数は249万人(男性150万人、女性99万人)へと2016年と比べて減少していますが、これは少子化の影響で壮年人口自体が減少しているためであり、壮年人口に占める割合は16.6%で2016年と同程度です。

ところで、「パラサイト・シングル」とは、学校卒業後も親元に同居し、基本的な生計を親に頼る独身者のことで、希望通りの職に就けずに経済的独立が難しいために親元に同居する独身者と意味合いが変わっていきました。

世代間・世代内の経済格差に苦しみながら中年期を迎えた就職氷河期世代は、今まさに年金パラサイトの当事者であり、貧困高齢者予備軍です。

1990年代以降、生活保護受給世帯数は増加し、足元ではで推移しており、2021年度で163万世帯だが、20年前の約2倍となっています。

一方で高齢者世帯は増加し続けており、この20年で3倍に、全体の過半数を占め、高齢者世帯のうち約9割が単身世帯です。

親の死亡等で親の年金をあてにできなくなった年金パラサイトは生活保護の受給に直結します。

また、貯金等の喪失で親が生活保護を受給するようになれば、経済的に独立できずに同居する中年の子も同時に生活保護受給へ移行することになります。

高齢期の貧困は、近年、社会問題化している孤立死にもつながり、高齢単身世帯の増加を背景に、今後、増え行く懸念が強いのです。

孤立リスクの高い層は、就職氷河期世代の中核となる1971~1974年生まれの団塊ジュニア世代では15%(105万人)が相当しました。

また、孤立リスクを高める要因には、男性、未婚や離別、夫婦の意思を重視する志向や、他人に干渉されることを好まない志向、ネットなど非対面の付き合いを好む志向、プライベートより仕事を優先する志向が強いといったものです。

また、加齢や健康問題で自動車の運転が難しくなることで移動制約が生じ、他人とのコミュニケーションが減ることも孤立リスクを高め、高齢期の人生設計ができていないほど、孤立に対する不安が大きいという傾向です。

厚生労働省「人口動態調査」によると、2022年の出生数は、統計が開始された1899年以降、初めて80万人を下回り、想定より8年早い速度で少子化が進行しています。

経済格差は家族形成格差につながる一方で、未婚化の進行は必ずしも経済面だけが理由ではありません。

内閣府男女共同参画白書令和4年版」にて、独身者が積極的に結婚したいと思わない理由を見ると、20~39歳の男性の首位は「結婚に縛られたくない、自由でいたいから」(37.0%)であり、次いで僅差で「結婚するほど好きな人に巡りあっていないから」(36.2%)と続きます。

また、女性では「結婚に縛られたくない、自由でいたいから」(48.9%)と「結婚するほど好きな人に巡り合っていないから」(48.8%)が約半数を占めて並んでいます。

よって、経済的な問題の解決だけでは未婚化の進行を食い止められるわけではありません。

一方で女性では「女性の活躍」が推進される令和の時代においても、結婚に対する負担感が男性と比べて強いことが大きく影響していますが、やはり女性でも経済的な問題は無視できません。

経済的な理由で家族形成をあきらめる状況は政策等で救済されるべきであり、政策等で現状を改善できる要因です。

日本では構造的な人手不足によって若手人材の獲得競争が激化していく中で、コロナ禍後の需要も見据えて、これまで採用を絞っていた業種等でも新卒採用を積極化しています。

少子化が想定以上に進む日本では、将来を担う世代の経済基盤の安定化は急務であり、景気に任せるのではなく、政策として強い方針のもとに継続的な取り組みが求められます。

経済不安が強い世代に対しては大胆な経済支援などを講じることで、価値観を根底から変えていくことも重要です。

将来的に賃金が伸びていく、安心して働き続けられるという明るい見通しを持ててこそ、若者が家庭を持ちたいと考えるのではないでしょうか。

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