居場所がなくても幸福と思える生き方とは?2040年には、独身者が「5割」に。だれも見たことのない、超ソロ社会が到来します。
ますます個人化が進む中、私たちは家族や職場、地域以外に、誰と、どこで、どうつながれば、幸福度を高められるのでしょうか?
また、親として、人生の先輩として、これからその時代を生きる子どもたちに何を伝えられるのでしょうか?
内閣官房の孤独調査では、いくつか興味深い結果が出ているので紹介します。
20~50代の現役世代だけを抽出して世帯種類別及び年収別に「孤独を感じる」割合分布があります。
20代だけは多少バラツキが見られますが、男女とも年収が高くなるほど孤独を感じる割合が減少しています。
注目したいのは、単身世帯でも二人以上の世帯でも同様に年収が増えるほど孤独感が減少する点です。
これを、配偶関係別のグラフと照合すると、以下のような仮説が浮かび上がります。
つまり、孤独感とは、有配偶など誰か同居する人間がいるかいないかという問題より、年収の多寡で孤独感の増減が決まるのではないか、ということです。
同調査には、これまで経験したライフイベント別孤独感を表したものもあります。
これによると、「一人暮らし」など人との同居環境による変化は孤独感にはほとんど影響を及ぼしてはいません。
同様に、家族との離別や死別、友人などとの離別についても少ないです。
男性では「いじめやハラスメントなど人間関係のトラブル」がもっとも多いですが、その次に「生活困窮・貧困などの経済トラブル」となります。
女性も経済トラブルがもっとも孤独感を増幅させた要因となっています。
先ほどの年収との相関とあわせて考えると、孤独を感じるというのは、人間関係の問題も勿論あるのですが、それと同等以上に「経済的問題」であることが明らかになっています。
今まで、感覚的に「家族や友達など話し相手がいない」とか「コミュニケーションする相手がいない」ことだけが、孤独感の元凶のように語られていましたが、この初めての孤独に対する大規模調査から浮かび上がってきたのは、「孤独とは経済問題なのだ」という発見です。
要するに、「お金が足りないから孤独感を感じてしまう」のです。
裏返すと、経済的な欠落感がなくなれば孤独感は解消されるかもしれないという新たな解決方法も見えてきます。
孤独解決のためには「お友達を作りましょう」「コミュニケーションできる相手を見つけましょう」などといわれていましたが、そういうことじゃないという話でもあります。
そういうと「お金があっても孤独に悩む人がいる」「友達や家族はお金では買えない」「なんでもお金で解決できる問題じゃない」という人も出てくるかもしれないが、それはある程度お金に余裕がある人の論理だし、本当に金に困ったことがないからいえることなのではないでしょうか。
若者が結婚できない大きな要因のひとつに経済問題がありますが、結婚や恋愛だけではなく、交友関係もまた個々人の置かれた経済環境の影響が大きいものです。
幼稚園でさえ、裕福な家の子と貧乏な家の子では通う園が違います。
小学校や中学校では利害関係なく友達が作れるはずだというが、それはそもそもその学校に集まっている子どもたちが同じような年収の家の子という同類縁で構成されているからです。
学生のうちはまだ自分で稼いでいない分あまり意識はしませんが、社会人以降になると知り合う友人はほぼ経済的同類縁に限られてきます。
同じ会社で同じ給料だからというだけではなく、社外でも自分の収入と同じような相手としか出会わなくなります。
収入に応じて住む場所も違って、出かける店のレベルも変わってきます。
つまり、友達になれる間柄というのは大体同じような収入のある者同士となります。
収入が自分の環境を形成していくのであり、その環境の中で知り合う相手というのは基本的に経済同類縁なのです。
たとえば、300万円に満たない年収の人間が年収1500万円の裕福な人間と一緒に遊ぼうと思っても、それを可能にするだけのお金がありません。
実施する趣味や行動にかけるお金のレベルも合わないでしょう。
それでは友達になれません。 何より年収200万円台で生活をするとなれば、それこそ毎月カツカツの生活を余儀なくされます。
一人暮らしなら家賃も光熱費もかかるわけで猶更です。
まして、今後インフレが加速するという中、さらなる増税や社会保障費負担増がささやかれています。
額面の給料が増えても手取りは減るのではお先真っ暗です。自分一人生きていくのに精いっぱいで、誰かと一緒に遊んだりする余裕すらなくなります。
お金がないから人とのつながりもなくなるわけで、孤独の正体は貧困なのです。
孤独を苦痛と感じる人の根本が「人とのつながりがないことではなく、お金がないことの不安」だとするならば、話し相手がいればいい、とか、居場所があればいい、という前に「まず、金をよこせ」といいたいでしょう。
勿論「金さえあれば人は孤独に苦しまない」ということではありません。
逆に「裕福な人間は孤独にならない」という話でもありません。
そんなことは当たり前の話ですが、「貧すれば鈍する」といわれるように、「金がない」という環境は、人間のあらゆる行動を萎縮させます。
何もしたいと思わなくなり、失敗したくないと思い、面倒くさいと思うのです。
自分の姿形すらどうだっていいと思い、そんなもの気にしていられないと思います。
自分のことすら気にしない人間は他人のことを気にしたり、心配したりする余裕がなくなります。
そうした状態に陥ってしまうと思考の視野が狭くなり、精神的にも閉じて、病んでくるのです。
もし、そうした状態を「孤独に苦しむ」ということだとするならば、それを解決するのは個々人のコミュニケーション力や性格など属人的な問題ではなく、毎日を心配しなくていいお金という経済環境の話だったりするのではないでしょうか。