40代、50代、60代の年代別平均貯蓄額や、実際には老後資金としていくら貯金が必要なのか計算方法を紹介します。
さらに50代におすすめの貯蓄方法や制度をチェックしましょう。
周りの人に面と向かって聞くことはできないけれど、みんながいくらぐらい貯蓄・貯金をしているのか、気になります。
しかも50代になれば、老後の生活は身近に迫る問題になるはずです。
「総務省統計局の家計調査報告(貯蓄・負債編)2019年」によると、二人以上の世帯の世帯主の年齢の貯蓄現在高と負債現在高は次のようになっています。
40歳未満 691万円(負債 1341万円)
40代 1076万円(負債 1124万円)
50代 1704万円(負債 652万円)
60代 2330万円(負債 250万円)
貯蓄保有全世帯の貯蓄現在高の平均は1755万円、中央値は1033万円。世帯主の年齢が高いほど貯蓄額は上がり、60代の貯蓄額がもっとも大きくなっていることがわかります。
60代までに借金を返済し、仕事を引退して退職金は入ると仮定すれば、60代に貯金した額が多くなるのもうなずけます。
老後の暮らしを考えたとき、公的年金で十分な生活資金になると考えられました。しかし、その日本人の概念が崩れそうになったのが「老後2000万円問題」です。老後2000万円問題は、金融庁が2019年にまとめた報告書がきっかけで波紋が広がりました。
寿命が伸び「人生100年時代」と呼ばれる今、報告書の内容は老後の資産形成を促すためのもので、95歳まで生きるためには夫婦で約2000万円の資産が必要になるというものでした。
これに対して「老後は公的年金だけで生活できる」という立場をとってきた日本政府は反発。さらに2000万円という具体的な金額が示されたことで、一般市民にもインパクトのあるニュースとして伝わり、人々の間でも大きな問題として取り上げられることとなったのです。
これまでも、少子高齢化が進む日本では将来の年金確保が難しくなることや、年金の減額などもあり得るなどといわれていたことから、「老後の生活は、年金だけでは苦しくなるかも……」と、漠然とした不安を感じていた人も多かったはず。
しかし、この老後2000万問題をきっかけに、「これからは老後資金を自分で確保しなければならない」という意識が人々の間で強くなっていることは確かでしょう。
老後2000万円問題で「老後の資金に2000万円が必要」と算出されたモデルケースは以下です。
現在夫は65歳、妻は60歳で、二人とも無職 30年後(夫95歳、妻90歳)で二人とも健在 総務省の調査結果を基にすると、夫婦二人の無職世帯では平均収入は月額約21万円、支出は26万4000円となります。
つまり毎月約5.5万円の赤字になるということ。毎月5.5万円の赤字が30年間続いたら、5.5万円×12か月×30年=1980万円となり、およそ2000万円が不足することになるわけです。
ただしこれはあくまでも平均値なので、健康で特別な出費もない場合で貯金が2000万円なくても十分生活できる人もいるでしょう。
しかし浪費グセがあったり、病気や介護といった出費がかさんだり、予期せぬトラブルに巻き込まれたりすれば、貯金が2000万円あっても足りない人もいるでしょう。
あくまでも目安として、「老後の夫婦生活に、2000万円を貯蓄として確保できるようにしておきましょう」ということです。
そこで、老後資金が実際いくらかかるのか?このままで足りるのかどうかが、大まかにわかる計算方法をご紹介します。自分たちの場合の金額を当てはめて計算してみましょう!
■ステップ1 寿命までの年数を計算する
まず、退職後に夫婦それぞれあと何年くらい生きられるか、その年数分で計算します。ここでは平均的に生きる年齢として男性は85歳、女性は90歳としています。
夫 85歳-退職時年齢〇歳=〇年(A)
妻 90歳-夫退職時の年齢〇歳=〇年(B)
■ステップ2 生活費を計算する
次に、夫婦の生活費、および一人になったときなどの生活費を計算します。
ここで、▲は寿命までの年数を計算したAとBで短い方、 ◆はAとBで長い方、 ●(長い方の年数-短い方の年数)として計算します。
夫婦の生活費 月〇万円×12×▲年数=〇万円
一人の生活費 月〇万円×12×●年数=〇万円
その他の生活費 年〇万円×◆年数=〇万円
■ステップ3 住居費を計算する 住居費の計算をします。
(賃貸の場合)
家賃 月〇万円×12×◆年数=〇万円
(持ち家の場合)
住宅ローン 年〇万円×残返済年数=〇万円
リフォーム代 =〇万円
維持費 年〇万円×◆年数=〇万円
■ステップ4 その他見積もっておくべき支出を計算します。
保険料 年〇万円×◆年数=〇万円
子や孫への援助 〇万円
相続させたい資金 〇万円
死亡後の整理資金 〇万円
医療・介護の費用 〇万円
その他 〇円
老後支出の総額(ステップ2~4の合計)〇万円(a)
■老後に見込める収入と金融資産を計算します
(夫)=年〇万円×20年(85歳-65歳)=〇万円
(妻)=年〇万円×25年(90歳-65歳)=〇万円
退職金=〇万円 企業年金〇万円×年数=〇万円
私的年金〇万円×年数=〇万円
その他収入〇万円×年数=〇万円
金融資産残高=〇 収入・金融資産(合計)〇万円(b)
■老後収支の差引計算
老後支出の総額〇万円(a)-老後収入・金融資産総額〇万円(b)=老後資金の過不足〇万円(※) ■(※)がプラスの場合は老後資金が不足!
ここで、(※)がマイナスの場合、老後資金不足に陥る可能性が低いので安心できるといえそうです。
ただ、プラスの場合は、このままでは老後資金が不足することになります。今すぐムダな支出がないかどうか家計を見直しましょう。
では、50代におすすめの貯蓄・貯金方法、制度をご紹介しましょう。
■貯金方法・制度1:積立定期預金
50代から貯蓄を始めるなら、毎月コツコツ型の貯蓄がおすすめです。金融機関が行っている積立定期預金をぜひ活用してみましょう。50歳から65歳まで、毎月5万5000円を貯蓄すれば、5万5000円×12カ月×15年=990万円となり、およそ1000万円貯まることになります。
■貯金方法・制度2:財形貯蓄
給与天引きで貯蓄できるのが、財形貯蓄です。自身や夫が働く会社で財形貯蓄の制度を取り入れていれば、ぜひ利用してみましょう。
財形貯蓄には、 使用目的が自由な「一般財形」 住宅の購入やリフォームに必要な資金を貯めるための「財形住宅」 老後の資金づくりのための「財形年金」 の3種類があります。
それぞれに課税対象額などが異なりますので、どの財形貯蓄を会社で取り扱っているのか、まずは調べてみましょう。
■貯金方法・制度3:iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)
老後資金を貯める方法として投資信託を用いた「積立投資」も検討したいところです。資産運用をして「お金に働いてもらう」ことも考えてみましょう。
積立投資は元本保証ではありませんが、金融・経済の先行きなどあまり難しいことを考える必要がなく、積立投資ならではの特徴を押さえて長期継続投資すれば失敗するリスクをかなり抑えることができますので、投資初心者におすすめの方法です。
中でも注目を集めている制度が個人確定拠出年金制度の「iDeCo(イデコ)」。勤め先によって掛金の上限が変わりますが、掛金が全額所得控除になるメリットを受けられます。
最低月額5000円からはじめることができて、60歳未満ならほとんどの人が加入できます。iDeCoは年金制度のため、途中で運用資金を引き出すことはできません。
お金が貯まると使いたくなるタイプの人にはおすすめの制度です。また、値動きを伴う商品が苦手という方には元本確保型の商品もラインナップされています。
■貯金方法・制度4:つみたてNISA
積立投資でもう一つ注目されている制度が、「つみたてNISA」。こちらも元本保証ではありませんが、年間40万円まで積立投資ができ、最長20年間非課税になります。
例えば毎月33000円を積立投資し、年利3%で15年間運用できた場合、税金やコストを除けば最終積立額はおよそ750万円となります。
つみたてNISAをはじめるには、銀行や証券会社などの金融機関でつみたてNISA口座を開設する必要があります。50代は、老後生活が差し迫っていることから、つい焦ってアグレッシブな投資運用を始めてしまう場合もあります。
しかし、万が一失敗したらリカバリーするための十分な時間が少ないため、大きな痛手となりかねません。
ですので、50代から始める貯金は、リスクが少なく堅実に貯められる方法がいちばん。まずは目標額を決めて、コツコツと確実に夫婦で貯めていくようにしましょう。