老後の不安とは、突き詰めていけば「お金の問題」に他なりません。
長生きは喜ばしい反面、それだけ生活費がかかることも事実です。
「絶対に買ってはいけない金融商品」と、老後の資産形成に適した「おすすめ金融商品」を紹介します。
①新興国通貨建て債券
最初は、トルコリラやブラジルレアル、南アフリカランドなどの新興国の通貨建てで発行される債券です。
比較的安全度の高い外国の金融機関や国際機関などが発行者になるケースが多く、信用リスクは低いと言えます。
これら新興国通貨建て債券の特徴は「利率が高い」点です。通貨や満期償還までの期間等によって違いますが、10%前後から中には20%を超えるような利率の債券が販売されています。
一見、利率が高く魅力的に見えますが、為替リスクが高く、取引コストも相当高いので購入してはいけません。 たとえば、トルコリラ/日本円の為替レートは、この10年で45円前後から7.5円前後(2022年11月末)となり、トルコリラは6分の1に暴落してしまいました。
これではいくら高い金利をもらっても、円ベースに換算した元本は大損です。 さらに、為替交換にかかるコストがかなり割高になります。 SBI証券のホームページを見ると、トルコリラと日本円の為替手数料は片道0.25円となっています。
往復では0.5円ですから、現在のトルコリラ/日本円からすると、約6.6%も手数料がかかる計算になります。
まして対面型の金融機関であれば、もっと高い手数料を取られます。 このような為替変動リスクと手数料の高さは、新興国ならではの経済や政治、社会の不安定さと流動性の低さに起因するところが大きいです。
新興国通貨建て債券は、販売する証券会社等にとっては販売手数料が高く、うまみのある商品ですが、一般の個人が手を出すような商品ではありません。
②仕組み債
仕組み債とは、オプション取引などの金融派生商品(デリバティブ)を使い、複雑な仕組みを作ることで高い利回りを設定している債券の一種です。
債券の発行者とは別の企業の株価や日経平均株価などの株価指数、為替相場などに連動して、利率や元本、償還日が変動します。
結果的に、連動する株価等によっては大幅な元本割れを起こすことがあります。 2022年は世界的に株価が大きく下がったため、大幅な元本割れとなった商品が多く、証券・金融商品あっせん相談センターには苦情も殺到しました。
仕組み債は、約80%の損、つまり元本はわずか20%程度になる場合もあります。 取引コストが非常に高く、リスクとリターンの見合わない商品であり、絶対に購入してはいけない金融商品です。
仕組み債も証券会社や銀行にとっては儲かる商品です。なかには、収益の8割程度を仕組み債で稼いでいる金融機関もあったようです。
一般の個人にとっては簡単に理解できる商品ではなく、金融庁も問題にしたため、22年9月以降は販売を見合わせる証券会社や銀行が相次いでいます。
次に、老後の資産形成に適した金融商品をご紹介します。ただし、人によって資産運用の考え方は違いますので、ご自身に合ったやり方でやるのが一番でしょう。
①インデックスファンド
老後の資産形成をしていくにあたり、最もおすすめできる金融商品がインデックスファンドです。
なかでも、世界中の株式に投資するインデックスファンドです。
世界中の株式に投資することで世界の成長を取り込むことが可能になります。
現在、世界の人口は約80億人です。2030年には約85億人、50年には約97億人と予測されています。その後80年代に104億人程度でピークに達し、2100年までそのレベルに留まると予測されています。
世界の人口が増えるということは、世界経済もそれに伴って成長することを意味します。
当然、企業利益の総和もそれに伴って増加することになります。だから、世界中の株式に広く投資することによって着実にリターンが得られるわけです。
今後も短期的にはコロナ禍のような一時的な混乱や停滞、リーマンショックのような景気後退と株価の下落もあるでしょう。
しかしながら、長期で見ればそれらを乗り越え、世界人口の増加と世界経済の成長、それに伴う世界の企業の利益成長と株価上昇は続くものと考えます。
具体的な商品も挙げておきましょう。
・SBI・全世界株式インデックス
・ファンド
・eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
・SBI・V・全世界株式インデックス・ファンド
・楽天・全世界株式インデックス・ファンド
これらの商品は、運用管理費用が低く、純資産額も大きいです。
②個人向け国債
何よりも安全性を重視する人には、個人向け国債がおすすめです。
元利金は国が保証し、途中で売却することも可能です。
なかでも、変動金利型10年満期の個人向け国債は、一般的な預貯金よりも金利が高く、今後金利が上昇しても連動して利率も上昇します。
いずれも長期で運用しないといけませんから、短気な人には向かないですし、個別株などに比べ、安定している分、利回りは悪くなるかもしれません。
資産形成に取り組むことは、老後のお金を増やすことの他に、もう1つ意義があります。
それは、「インフレヘッジ」です。 インフレヘッジとは、インフレ(物価上昇)によって、通貨の価値が相対的に減少するリスクを回避することを指します。
ほとんどの人が実感されていることだと思いますが、22年に入ってから物価が上がっていて、年後半の消費者物価指数は前年に比べて3%程度上昇しました。
物価が3%上昇するということは、昨年1万円で買えていた商品が1万300円出さないと買えないということです。
預貯金しか保有していないと、ほとんど金利がつかないので1万円は1万円です。
つまり、インフレ(物価上昇)になると、お金の価値は実質的に減少していくことになるのです。
これを阻止するには、株式や不動産、実物資産等で運用し、インフレ率(物価上昇率)以上の利回りを上げることが対策になるのです。