少子高齢化問題は、かなり以前から重大な問題として騒がれてきたのに、抜本的な改革が行われずに、その場しのぎの「応急措置」の繰り返しによって年金制度が延命されてきました。
要するに「手術」で体内に巣くった腫瘍を取り除くのではなく、絆創膏を貼ってお茶を濁してきた結果が現在の悲惨な状況の根本原因です。
年金制度を調べると、「複雑怪奇」としか思えないが、要するに場当たり的な小規模改正を繰り返してきたからわけがわからなくなっているのです。
お役人の「申請主義」で、「申し出ない奴にはやらないよ」という方針なのに、年金制度が複雑すぎて本来もらえるべき年金をもらっていない人々が多いはずです。
年金保険料の徴収は「強制」なのに、支払いは「申請」した人だけというのは余りにも不公平です。
あるいは、うがった見方をすれば、年金の支払いを減らすためにわざと申請漏れが起こるように複雑な制度にしているのかもしれません。
それでなくても、今から10年ほど前の2012年7月24日日本経済新聞「厚労省、『消えた年金記録』2240万件なお未解明」で述べられているような「大事件」が起こっています。
年金に加入する必要が無い20歳未満も含めて、日本の人口が1億2500万人なのに、約5000万件もの年金記録が消え、年金制度そのものの信頼性は限りなくゼロに近いといえます。
消えた年金問題は旧社会保険庁が引き起こした不祥事ですが、日本年金機構に「看板替え」をした現在でもその「責任をとらないお役所体質」に大した変化が無いようにも思えます。
我々が払う生命保険料の5割程度が「保険会社を維持」するために使われ、我々はどれだけの「運営費」を負担しているのかということです。
「消えた年金問題」解決のための費用も結局は、国民が支払う「年金保険料」や「税金」などから支出され、官僚・公務員の懐は痛みません。
さらには、問題を起こすたびに「問題解決のための予算と人員」が増えるからまさに焼け太りです。
「負の所得税」に一本化すれば、現在多額の血税で国民が雇っている公務員は劇的に減ります。
イーロン・マスク氏のツイッター社員5割削減どころの話ではありません。
徴税と負の所得税の支払いは同じ役所でできるので、消防・警察・防衛などの必要不可欠な部分を除いたほとんどの役所の人員は9割以上削減できるはずです。
「年金の抜本改革」をもっとも恐れているのは、官僚・役人なのかもしれません。
また、パートの厚生年金加入、企業の規模要件を撤廃 政府検討との報道もあります。
さらに、国保料上限、2万円引き上げ 高所得者の負担増―厚労省とも伝えられます。
このように、年金・健康保険の(保険料で賄いきれない)膨大な赤字を、姑息な小金集めで解消しようとするのは、資金繰りに窮した経営者が必死に小金を集める姿に重なります。
借金が大きすぎて、もうどこも貸してくれないから小金集めに必死にならざるを得ないのと同じように、日本政府も、借金漬けでどうにもならないので、「強権」で小金を国民から絞り上げようとしていますが、それは焼け石に水です。
実のところ、「保険料で賄うことが大前提」の年金・健康保険は「すでに(実質)破綻」しています。
過去に破綻した国鉄(現在のJR)やJALなどの企業を、血税でいまだに維持しているようなものです。
年金・医療・福祉(介護を含む)の給付費131.1兆円は、GDPの23.2%に相当します。
しかし、そのうち保険料によって「正常に」賄われているのは、おおよそ6割強の75兆円ほどにすぎません。
残り約4割の約50兆円は「公費」の「赤字補填」に頼っています。
国民のための制度だから、税金をいくらつぎ込んでも構わないという意見もあるようだが、それでは保険制度をわざわざ別にして運営する意味がありません。
また、一時期MMTのような怪しい理論が巷にあふれましたが、国家財政は打ち出の小槌を持っているわけではなく、財政支出にも限度があります。
実際、過去2年連続で最高を記録している政府の一般会計の税収67兆円と、社会保障給付費の赤字補填のためだけに使われる50兆円を比較すれば、我々が「重大な危機に直面」しています。
老齢基礎年金の国民全体の平均受給額は月額6万円を切っています。
おおよそ40年間も苦労して保険料を支払っても、それだけで老後の生活が成り立たないのは明らかです。
結局「健康で文化的な生活」を維持するために生活保護を活用せざるを得ないのであれば、いったい「誰のための年金制度なのか」ということです。
また、「恵まれた人?」の老齢厚生年金と合計した合計受給額の平均も15万円を切っています。
国立社会保障・人口問題研究所の「『生活保護』に関する公的統計データ一覧」の「23.扶助別特別保護費一覧」によれば、扶養特別保護費1人当たり月額(総額)が15万円弱であるのでほぼ同じです。
そもそも、国民年金だけでは暮らせないのですから、現役時代に苦労して保険料を払う意味があるのでしょうか。
国民がこのような状況に沈黙しているのはおかしいと感じます。
生活保護を受給せざるを得ないのであれば、年金保険料は全くの無駄です。
さらに追い打ちをかけるのが金利の上昇です。
政府が小金を集め始めたのも、来年4月の黒田日銀総裁退任以降の金利上昇が避けられず急激なものになるとわかっているからでしょう。
来年4月には、大幅な利上げをするのかそれとも利上げをせずに(ハイパー)インフレを容認するのかという二者択一を迫られます。
利上げをした場合、たった1%の増加で、1200兆円とされる公的債務の利払いが12兆円増えます。
5%であれば60兆円です。
当然、利払いだけでアップアップして、公的資金で赤字だらけの社会保障費の補填を続けることができなくなります。
さらに、年金を運用するGPIFが、リーマン危機以来の3期連続赤字-収益マイナス0.88%と報道されています。
英国の年金のように「先端金融商品」で運用していなくても、日本国債を大量に保有していれば利上げ(債券価格は下落)によって大打撃を受けます。
もちろん外国債でも利上げの影響はかなりあるはずです。
マイナンバーカードは、財産税取り立てが目的かというのも、日本の財政・年金・健康保険が極めて厳しい状況に置かれているからです。
もちろん、財産税によらず、ハイパーインフレで政府が解決を図る可能性の方が高いかもそれません。
しかし、いずれにせよ被害を受けるのは我々国民です。これからの時代は、政府の動向を警戒しながら兜の緒を締めて生きていくべきです。