氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

「貯蓄から投資へ」について政府の狙いは年金制度の国民への丸投げ

政府・与党が、2023年度税制改正において、「つみたてNISA」の非課税期間を現行の「20年」から「無期限」へと変更するなどの制度改定を検討していることが明らかになりました。

これは、一見、歓迎することのように見えますが、それも、毎月投資に回す「余剰資金」が少しでもあってのことです。

今回の制度改定の動きと、その問題点について、 まず、つみたてNISAの基本的なしくみについて紹介します。

つみたてNISAは、「少額投資非課税制度」の一つです。

 

 

一定の条件をみたす「株式」「債券」の「投資信託」を毎月コツコツと積み立てた場合に、それによって発生した運用益について、本来20%の税金がかかるところ、非課税となる制度です。

現行制度では投資期間は最長20年で、非課税となる投資額の上限は1年あたり40万円、20年間で総額800万円です。

なお、現行では開始年齢は20歳からということになっていますが、2023年から18歳にまで引き下げられることが決まっています。

つみたてNISAは、掛金全額が所得控除となる「iDeCo」(個人型確定拠出年金)とあわせ、長期間かけてコツコツと老後資金を積み立てるのに向いている制度といえます。

検討されている制度改定の概要とは 政府・与党が検討を始めたのは、主に以下の2点です。

・投資期間を無期限とする

まず、投資期間を、現行の「最長20年」から、無期限化することです。現行制度では、20年間は運用益が非課税扱いですが、21年目からは20%の税金がかかります。

それを、恒久的に非課税扱いとするということです。

・投資額の上限を拡大する

現在の上限額は年間40万円(月33,333円)ですが、これをさらに拡大させるということです。

つみたてNISAは、先述した通り、特に老後資金を積み立てるのに効果的な制度です。しかし、現在の年40万円という額では、老後資金を準備するのに心もとないという考えによるものとみられます。

政府は以前から「貯蓄から投資へ」というスローガンを掲げています。つみたてNISAやiDeCoはその流れのなかで始まった制度です。

また、現在の岸田政権も「新しい資本主義」とやらの一環として「資産所得倍増計画」を掲げています。

つみたてNISAと同じく、iDeCoにも制度改定の動きが顕著です。

 

 

まず、2022年に以下の制度改定が行われています。

・受取開始時期の選択肢の拡大(「60歳以降70歳まで」から「75歳まで」)

・加入可能年齢等の拡大(「59歳以下」から「64歳以下」へ)

・企業型DCとの同時加入が可能に(2022年10月)

さらに、厚生労働省は2022年11月14日、社会保障審議会の部会に対し、加入可能年齢をさらに「64歳以下」から「69歳以下」まで引き上げる案を提示しました。

これは、年金制度における任意加入の「私的年金」であるiDeCoの役割を拡大する意図があるとみられます。

iDeCoとつみたてNISAを両方拡充することにより、国民の老後の資金準備を側面支援するというねらいが見えます。

しかし、それは、一歩間違えれば、年金制度をはじめとする社会保障制度・セーフティネットを整備するという国家本来の役割を放棄へとつながり、「年金制度の国民への丸投げ」となりかねません。

少子化・高齢化が進むなか、将来的に公的年金の給付水準の引き下げが確実視されており、老後資金の確保について自己責任を強く要求しようとする動きにつながりかねないといえます。

「見捨てられる人」が出るおそれも 憂慮すべきは、「貯蓄から投資へ」の流れのなかで、国・社会から見捨てられる人が出てくるおそれがあるということです。

つみたてNISAもiDeCoも、「長期・分散・積立」という、長い間コツコツ続ければ、誰もが着実に資産を増やしていける可能性が高いしくみになっています。

 

 

しかし、特に、投資にまわす余剰資金がない人にとっては、つみたてNISAもiDeCoも、いずれも、活用しようにも活用の余地がありません。

就職氷河期世代やシングルマザーのなかには、非正規雇用で働かざるをえず、貧困から抜け出せない人がいます、本人の自助努力ではどうにもならないものです。

そういった人々が、はじき出されてしまう可能性があるのです。

たとえば、手取り15万円の人であれば、家賃、食費、水光熱費等を差し引けば、あとはいざというときのためのため貯蓄するのがやっとで、つみたて投資に回すお金などないというケースがほとんどでしょう。

それに、最近は増税と物価上昇が追い討ちをかけています。 こういった人にとっては、実質的に、公的年金こそが頼みの綱となります。

公的年金でない任意加入の私的年金であるiDeCoや、公的年金とはまったく別の制度であるつみたてNISAの役割を大きくしたところで、投資する原資がなければどうしようもありません。

また、現役時代の所得が低ければ、公的年金も低くなってしまいます。 また、仮になけなしの手取り額からお金を少しばかり捻出できたとしても、投資に関するリテラシーが不足しているという問題もあります。

最近ようやく高校の家庭科の授業で投資教育が始まりましたが、わが国では、基本的な投資に関するリテラシー、特に下落相場での投資行動をどうすればよいのかといったことなどの基本的な理解が十分に広まっていません。

つみたてNISAやiDeCOの制度を拡充すること自体は歓迎すべきことかもしれませんが、それが年金制度の国民に対する丸投げにならないか、監視していく必要があります。

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