氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

いよいよ世界中で働かない人が激増

世界各国で、コロナ危機で離職した後、あえて仕事に復帰しない、あるいはコロナ危機をきっかけに自ら会社を辞める、大量離職と呼ばれる現象が発生しています。

実はこの問題と、コロナ後に顕著となったインフレには密接な関係があります。

米国では、コロナ危機によって多くの従業員が解雇され、失業率が一気に跳ね上がりましたが、危機からの立ち直りもはやく、経済はすでに回復軌道に戻っています。

もともと米国は、社員の解雇や雇用がドラスティックに行われる国であり、いつもなら、景気回復期待の高まりと同時に、失業者が現場に戻ってくるのが常でした。

ところが今回は様子がだいぶ違っています。

コロナからの景気回復期待が高まり、企業は多くの人員を雇用しようと採用活動を強化していますが、解雇された労働者がなかなか仕事に戻ってきません。

 

 

このため企業は、より高い賃金を従業員に提示する必要に迫られており、これが人件費の高騰という形でインフレを加速させています。

しかし、高い賃金を提示しても、職場の環境が良くない企業の場合、容易に人は集まらず、米国の労働参加率は横ばいが続きます。

こうした動きがもっとも顕著となっているのが、いわゆるエッセンシャルワーカー(ライフラインの維持に欠くことのできない業務に従事する労働者)の職場です。

エッセンシャルワーカーの場合、実際に現場に行かなければ業務にならないことがほとんどであり、感染症が発生した場合でも出勤が求められるケースが多いです。

一部の職場では十分な感染対策が行われなかったことから、コロナをきっかけに多くの労働者が、こうした業務についてリスクが高いと認識するようになってしまいました。

このため、相当な金額を提示しないと職場に人が戻ってこないのです。

ニューヨークのような大都市の場合、最低賃金は15ドル程度に設定されていることが多く、現実には20ドル以上の時給を提示しなければ人材を採用するのは不可能となっています。

ゴミ収集車のように、体力的にも厳しい仕事の場合、1500万円以上の年収を提示しないとまったく人が来ないとのことです。

 

 

大量離職の問題は、エッセンシャルワーカーのみならず、いわゆるホワイトカラーと呼ばれる階層にも広がっています。

多くの企業は、業務を定常モードに戻しつつあり、従来と同じような出社形態を求めるケースも増えてきました。

しかし、一部の労働者はリモートワークでの環境に慣れ切っており、従来型の職場に戻ることを嫌悪しています。

余裕のある大企業ではボーナスを追加したり、社員に対する福利厚生を手厚くすることで何とか従業員をつなぎとめようとしていますが、それでも超有名企業から、多くの高学歴社員が退職するなど、人材確保は思うように進んでいません。

あらゆる階層において、従来型の働き方や職場環境に対してノーを突きつける労働者が増えており、これまでの社会では見られなかった現象です。

従来型の価値観に対する拒絶にも見える今回の動きについて、一部の専門家は、コロナ危機をきっかけに労働に対する価値観が変化した結果と指摘しています。

実は、一連の変化は、経済全体の生産性の問題とも密接に関わっており、インフレの原因のひとつになっている可能性が否定できません。

1990年代に発生したIT革命とグローバリゼーションの進展によって、各国の生産性は順調に上昇してきましたが、リーマンショックを境に、生産性の伸びに鈍化傾向が見られるようになってきました。

この現象については以前から議論されており、一部の専門家は一時的なものに過ぎないと主張していますが、一方で慢性的な成長の限界を指摘する声もあります。

生産性と賃金には密接な関係があるので、もし原因が後者なのだとすると、多くの労働者が、無意識的に今後は思ったほど労働条件が良くならないと感じ取っており、これが大量離職につながっている可能性が否定できません。

米国では高学歴で高賃金を得ている若年層が30代でセミリタイアする、FIREと呼ばれる動きも活発になっています。

 

 

彼らはいわゆるエリート層であり、相対的に高い社会的地位と報酬を得てきました。

しかし、そうした階層の労働者ですら、もう働きたくないという感覚を持っていることになります。

こうした状況下では、仕事に対する魅力が薄れてくることになり、特に条件の悪い業務に対しては、相当な高賃金を提示せざるを得ません。

現在の米国はモノの価格が上がることよりも、賃金上昇がインフレを加速させており、人件費高騰がインフレの大きな要因となっていますが、背景に成長の限界があるのだとすると問題はやっかいです。

インフレが進んだ場合、基本的には金利を引き上げて景気を冷やし、物価を抑制するという政策が行われます。

即効性のある形でインフレを抑制するには、金融引き締めは極めて有効ですが、景気は犠牲にせざるを得ません。

一方で、抜本的にインフレに対処するためには、同じ労働力で、より多くの生産を実現する必要があります。

つまり、経済全体の生産性を高め、供給力を増大させるというやり方ですが、これを実現するには相当な時間がかかるのです。

もし、今回のインフレが成長の限界による、生産性の伸び悩みが主原因だとすると、短期的には金利の引き上げで物価を抑えることができても、すぐに次の成長軌道にシフトできる保証はありません。

 

 

生産性の低迷という事態が続けば、多くの労働者は仕事に魅力を感じることができず、労働参加率は低いままで推移します。

景気動向に関わらずエッセンシャルワーカーは必要なので、賃金の上昇が続き、低成長と物価上昇が続くことになります。

こうなってしまうと、典型的なスタグフレーションであり、そこからの回復は容易ではありません。

ちなみに、今回のインフレと似たような事態に陥ったのは1970年代です。

当時の世界経済は、成長鈍化と物価上昇が同時並行で進み、各国は対応に苦慮する結果となった。最終的に事態を打開するきっかけとなったのは、80年代に実施されたレーガノミクスによる大胆な経済構造の転換です。

90年代以降の世界経済は、基本的にレーガノミクスで実現した仕組みの延長線上にあり、成長はリーマンショックまで20年近く、続いたことになります。

今回のインフレにも同じような背景があるとすると、抜本的に状況を改善するには大胆な産業構造の転換が必要となります。

次世代経済の主役となるのがAIを活用した大胆な自動化であることは明らかで、労働環境が悪い職種について、どれだけ機械化できるのかがカギを握っています。

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