氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

日本でのジョブ型雇用導入はかなり困難

若手、中堅層への処遇に困難を抱えるなか、多くの企業は高年齢者の処遇にも頭を悩ませています。  

高齢法(高年齢者雇用安定法)では現状65歳までの雇用を義務化していますが、そのメニューには再雇用など継続雇用制度の導入や定年延長のほか、定年制度そのものの廃止といった選択肢も含まれています。

しかし、政府としても企業に定年制度自体の見直しを求めていますが、遅々として進んでいません。  

厚生労働省「就労条件総合調査」によると、2020年において、定年制がない企業は4.5%となっています。

 

 

一方で、定年年齢が65歳以上の企業は16.6%、そして再雇用制度もしくは勤務延長制度を導入する企業が計71.4%と、継続雇用が多数派を占めています。

これは中小企業も含めた結果であり、企業規模1000人以上の企業に絞ると定年制を廃止した企業は0.7%しかありません。

一方で、再雇用制度のみの企業は76.2%にも上り、ほとんどの大企業が実際に採用している施策はやはり再雇用制度の導入となります。  

本来、企業内における出世争いは、その人が持つ経験や能力など実力で競争するのが筋であり、年齢で区別するのはおかしいのです。

自分が役職に就けたのは実力があったからだという考え方も一面としては正しいですが、人事管理上の視点から考えれば、その人が高位の役職に就けたのはまぎれもなく前任の役職者が後進に道を譲ってくれたからです。  

過去から現在までビジネスを行っている組織においては、結局役職というのは持ち回りでしかなく、組織に忠実なYESマンや上司に気に入られた人間しか出世できず、それを自身の能力故なのだと考えるのであればそれは現実とは異なります。

こうした組織の論理に理解を示せないのであれば、それこそ自分で起業するなりするしかないでしょう。

組織とは所詮個々人の自由にはいかないものです。  

さらにいえば、多くの企業の給与管理にはいまだに生活給の意味合いが強く残されています。

社会人になって以降家計支出は増え続け、そのピークを迎えるのは40代から50代となります。

従業員のこれまでの会社への貢献に応じる形で、そうした時期を迎えている従業員に組織の重要な役職を任せ、彼らに目いっぱいの仕事をしてもらうというのが日本型雇用のモデルです。  

 

 

米国の労働市場などを年齢差別のないすばらしいものだと評する向きもありますが、これは競争原理の下でパフォーマンスが伴わなければいつでも解雇可能であることの裏返しでもあります。

結局、どのような雇用システムを志向するかは一長一短であり、能力や成果にかかわらず本人の自由意思で高い役職を得ながらいつまでも働き続けられる企業は、どこの国にも存在しないでしょう。

今後、企業における雇用システムは、しばらくは日本型雇用の仕組みを基礎としながらも、その仕組みの修正を長い年月をかけて緩やかに進めていくのだろうと考えられます。  

仮に年功序列などの仕組みを廃し、実力主義やジョブ型雇用を徹底することが理論的に好ましいという結論を得たとしても、企業が行動を変えるのはそう容易ではないからです。  

一企業の雇用システムを変えようとしたとき、政治的にそれが実現できるかといった問題があります。

実力主義の会社にしようと経営陣が提案したとしても、それによって損をする従業員が多く発生してしまう場合には、労働組合は反発するでしょう。

全社的な合意を得たうえで、雇用制度を変えていこうとするプロセスには多くの困難が生じ、移行を一気に進めた場合に生じる弊害にも目配りする必要があります。

人事制度の急激な変化によって、若い頃は年功序列で我慢を強いられてきたにもかかわらず、中高年になってその恩恵を受けられない世代が必ず発生してしまいます。

 

 

制度の移行によって損をする世代を時代の犠牲者だとして割り切ることは、多くの企業にとっては実際問題として難しいでしょう。  

1990年代から2000年代にかけて模索された成果主義も日本企業には十分に定着しなかったのです。

成果を出し続けなければならないという精神的な負担の高まりや、他者との協調を図る組織風土の劣化など、実際に導入してみると多くの企業でその弊害が目立ち、成果主義は日本の雇用のあり方を抜本的に変えていません。

日本企業の年次管理の対案として提案されることが多い成果主義能力主義ですが、こうした仕組みもそもそも万能ではありません。  

問題の根幹は、評価にあります。企業において能力・成果が高いのはどの従業員でそうでないのはどの従業員か、明確な線引きをすることは現実問題として難しいです。

降格をいかにして納得してもらうのかも大きな問題です。職位が下がるのはあなたの能力や成果が低下したからだという説明を、人事や上位者が一人ひとりに説得力を持って行うことは困難でしょう。

年次管理を廃し実力主義を徹底すれば、自身の処遇に疑問を感じモチベーションを落としてしまう社員がますます増える可能性もあります。優秀な人材が続々辞めることにもつながります。

結果的に転職市場を活性化させることになれば、給料も上がり、成果主義能力主義を導入することも悪くないかもしれません。 

しかし変われない日本の現実的な問題を踏まえると、良くも悪くも多くの企業は今後も緩やかに年次管理を続けていくことになるのではないでしょうか。

そのなかで、継続雇用下においても成果に基づいて賃金も少しずつ弾力的に運用していくという方向が、多くの企業人事が取りうる現実的な路線になるでしょう。  

仮に継続雇用が70歳まで延ばされるようなことになれば、定年後の延長戦は実に10年もの長期にわたります。

70歳ならまだしも、将来は75歳、80歳とさらに延びていくのでしょうか。

いずれにせよ高齢労働者が増えれば増えるほど、心身の衰えなどで少なからず不注意やミスも多くなるので、幼稚園児置き去りのような人の命に係わる重大な事故は増えていくはずです。

定年後の10年近い延長戦をどう過ごせばよいか、多くの人がそれに悩むことになります。

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