氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

働く人が足りない問題

働く人が足りないのは、「生産年齢人口の減少」「雇用のミスマッチ」「低賃金」という三重苦が長く続いていることが大きいです。  

日本は世界最速レベルで少子高齢化が進んでおり、子どもが激減していけば当然、社会に巣立って働く人も激減していくのは当たり前です。  

実際、日本の生産年齢人口(15歳以上65歳未満)は1995年の8716万人をピークに減少を続けています。20年の国勢調査をみると、7508万7865人で、95年時に比べて13.9%も減少しています。  

経済活動を担う人々が25年前からガッツリ減っていますので当然、外食チェーンの店舗網や社会インフラも25年前から徐々に統合・集約されていかなければおかしいのです。

働き手がいないのに、コンビニやら飲食店という「器」だけを増やしたところで、すぐに人手不足に陥ってしまい、客の奪いという消耗戦になります。

 

 

例えば、日本フランチャイズチェーン協会のデータでは、95年の主要コンビニのの店舗数は2万9144でしたが、22年6月末には5万5887となっており、95年時に比べて91.7%も増えています。  

もちろん、コンビニの場合、昔ながらの酒屋さんが業態替えしたとか、脱サラしてコンビニオーナーになる人が増えたとか、FC本部の「ドミナント戦略」によるものだとか、「店舗数の増加」はさまざまな理屈で正当化できます。  

いくら大規模化で業務を効率化しても限界があるので、2倍近くまで膨れ上がったコンビニというインフラの中では、確実に「働く人が足りない問題」が起きてしまうのです。

それをさらに深刻にしているのが、「雇用のミスマッチ」です。「きつい仕事や賃金の安い仕事には求職者がやって来ない」ことに尽きます。  

今やコンビニバイトは「低賃金重労働」の代名詞で、感染拡大するたびに休業だとシフトを減らせだと言われて満足に休業補償ももらえない居酒屋などの飲食店バイトは、「アルバイトで手っ取り早く稼ぎたい」と願う若者たちからは敬遠されています。  

 

 

また、バス、長距離トラック、タクシーなどのドライバーは急速に高齢化が進んでいます。大学や高校を卒業した若者の中で、これらの業界への就職を第一希望としているケースが少ないことも関係しています。  

つまり、一部の業界で深刻になっている「人手不足」なるものの正体は、若年労働者の絶対数が足りていないわけではなく、それらの業界で働きたいと希望する若年労働者が不足していることです。

この問題を解決するには「賃金」しかなく、きつい仕事だけど金払いがいい、となると若者たちの中には、「本当はもっと別の仕事がしたいけれど、夢や目標のためにがんばるか」という感じで、割り切ってその仕事に就こうと考える者たちが増えて、働いているうちにさまざまな事情から「定着」していくからです。  

しかし、日本は「賃金をあげたら小さな会社は潰れて、日本経済はおしまいだ」という世界ではほとんどお目にかからない独特の経済理論が常識としてまかり通っているので、とにかく「賃上げ」をしない方法を模索します。

安い賃金でも文句を言わずに働く労働者をせっせと受け入れ、中小零細企業の経営者にとって夢のような「低賃金労働者天国」をつくってきたことが皮肉にも、日本の「働く人が足りない問題」を取り返しがつかないほど悪化させてしまっています。 

 

 

不人気業種・業界に対し若者たちが「ブラック企業」などとそっぽを向かれてしまうことに加えて、これまで日本の低賃金・重労働というビジネスモデルを支えてくれた外国人労働者まで、日本に見切りをつけているからです。

「雇用ミスマッチ」で人手不足に悩む業種・業界はもはや外国人労働者なしには成り立たないところも多く、居酒屋などの外食やコンビニはその典型ですが、農業などもそうです。  

海外ではあり得ないほど安くてうまい食事ができたり、信じられないほど安く高品質なサービスが受けられたり、「安いニッポン」を最下層部で支えてくれています。

それは、日本の若者たちが絶対にやりたがらない、低賃金ブラック労働を強いられても、黙って歯を食いしばってマジメに働いてくれる外国人労働者のおかげなのです。

総務省労働力調査によると、21年1~3月の失業者214万人いますが、その中で「希望する種類・内容の仕事がない」と答えた人はコロナ前の19年の同時期に比べ20万人も増え、64万人となっています。  

つまり、鳴をあげる業界や業種が山ほどある一方で、コロナ禍で人々の価値観が大きく変わっていき、働いていない人が20万人も増えているのです。  

さらに、日本では、最低賃金を過去最大の31円引き上げましたが、米国でもEUでも東南アジアでもアフリカでも、そして台湾や韓国でも、日本以上の勢いで国や地域が最低賃金を引き上げています。

アジアなどの「海外出稼ぎ労働者」にとって、「日本」を第一希望にして日本語や日本文化を学ぶ理由がどんどん薄れていっているのです。  

「働く人が足りない問題」はいつ表面化してもおかしくない「時限爆弾」のようなものです。

コロナ禍で新しい外国人労働者が日本国内に入って来るのが難しくなったことに加えて、これまで「働く人が足りない問題」を覆い隠してきた「根性論」も通用しなくなっています。  

 

 

以前までの日本人の多くは、インフルエンザにかかってもゴホゴホやりながら満員電車に乗って、オフィスで働き、「ちょっと風邪気味で」なんて言い訳しながら向かいのデスクの人に飛沫感染させていたのです。

裏を返せば、日本社会が「ちょっとくらいの風邪で休めるか」「38度くらいならバファリン飲んでやり過ごせる」というブラック労働がまん延していたことの証です。  

日本人は「熱がある人は何日間が仕事を休む」というルールを守っていますが、それまではこんなことをしている人間は「同僚に迷惑をかけた」「使えないやつ」「社会人としての自覚があるのか」など組織内でマイナス評価されています。  

季節性インフルエンザも毎年すさまじい数の人々が感染して、高齢者や子どもの場合は肺炎をこじらせて死に至ることもあります。

そんな恐ろしい感染症をわれわれはこれまで何十年も「根性」で乗り切ってきたのです。  

「日本人はマジメだからコロナが少なかった説」が分かりやすいですが、日本人は何か深刻な問題が起きると、目の前にあって、非常に分かりやすくて、自分たちのプライドが傷つかないような理由を強引にこじつける悪いクセがあります。

人手不足を「コロナのせい」にしておけば、誰も傷つきません。日本企業の99.7%を占める中小企業に賃上げをさせる面倒くさい問題に手をつけなくていいのです。「賃上げなんかするより税金をタダに」みたいなバラマキを望む勢力から叩かれることもありません。

とりあえず政府の悪口を言っておけばいいのでラクです。みんな仲良く平等に貧しくなっているので、恐怖感も危機感もそれほどないのです。

実は今の日本は「何もしない」が一番ハッピーに生きられます。マスコミはよく「日本は働く人が足りない」「人手が足りない」とあおっていますが、実は日本人に足りないのは、「低賃金重労働」という依存し続けてきた構造的な問題に、真正面から向き合う「覚悟」でしょう。

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