氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

新入社員が3年で辞める率は長期的に増加

「新入社員は3年で3割辞める」と言われています。

厚生労働省の「就職後3年以内離職率の推移」によると、大卒者の3年以内離職率は、過去34年間で、最も低い水準で「23.7%(1992年)」、最も高い水準で「36.6%(2004年)」という結果です。

一見するとそこまで変わらないように見えますが、最大の2004年と最小の1992年の差は約1.5倍です。

新入社員が100名入社する企業に例えると、離職率が低い年度は3年以内に24人しか辞めず、高い年度だと37人が辞める計算です。これは企業側にとっては無視できません。  

3年以内離職率を見ると、離職率が「高い時期」と「低い時期」には一定のトレンドがあることがわかります。

好景気の時:3年以内離職率は上昇

不景気の時:3年以内離職率は低下  

厳密には、その時の「求人数」と「求職者数」の状況によりますが、ざっくりトレンドをつかむという意味であれば、「好景気だと新入社員は辞めやすく、不景気では新入社員が辞めづらい」となります。

 

 

過去のデータを見ると、コロナ禍で不景気となっている現状では「3年3割辞めるは減少傾向」です。 

コロナ禍によって特に変わったことの一つに「働き方」があります。コロナ禍以前は「リモートワークできる職場」というのは、それだけで価値が高く、多くの人が転職先を選ぶ条件にしていました。

リモートワークも面談や商談のオンライン化も、慣れてしまえば、導入メリットを享受したことで、元には戻れません。

そのため、このような働き方に柔軟性を持っている会社では、「3年3割辞める」は減る傾向にあります。

しかし、逆にリモートワーク、オンライン化を進められない職場の退職率は上昇する可能性があります。  

業態上、オンライン化が難しい職場があることも事実です。

しかし、中には「コロナ禍以前の職場にただ戻りたい」と考える会社も多いのです。

オンライン化をやめてしまうと、一度便利さを知り、慣れてしまった社員は、若手社員に限らず、中堅、ベテラン社員ですらも離れてしまう可能性があります。 

3年以内離職率を考える上で「キャリア観の変化」も無視できません。

以前から「終身雇用の崩壊」「ジョブ型雇用」「副業」といったキャリアを取り巻く環境変化により、各個人が考える「キャリア観」は変わってきています。  

 

 

厚生労働省総務省の調査は、2020年度前後のデータしかないため直近でのデータ検証は難しいですが、下記のような傾向があります。

実際に転職する人:減少傾向

転職していないが、転職を希望している人:増加傾向  

実際に転職できるかどうかは、受け皿である「求人の量」に関係する。コロナ禍直後は企業の先行き不安から求人の量も減り、転職マッチング数が減ったと考えられます。  

ただ、着目したいのは「転職希望者は増加している」という点です。

転職はできていないが、「転職したい」と思っている人が増えています。コロナ禍以前から増えている「キャリア観の変化」に影響を受けていると思われます。

コロナ不況の影響も軽減され始め、転職先となる求人が量、質ともに供給され始めると、「3年3割辞める」にも変化が生じる可能性があります。

「3年3割辞める」傾向は以下のようになると思います。

①コロナ禍は不況だったので、「3年3割辞める」はしばらく低水準となる。

②ただし、変化した「働き方のスタンダード」に適応できない企業での「3年3割辞める」人は増加する。

③キャリア観は今後も多様化していくため、長期的には「3年3割辞める」は増加傾向になる。  

 

 

経済産業省が設置した「未来人材会議」で提出された資料の中に、「労働市場流動性」と「労働生産性」に正の相関関係があるというデータがあります。

なぜ労働市場流動性が低いと生産性も低くなるのか、次のような要因があると考えられています。

・市場変化のスピードは年々早くなっており、一定の職場に留まることで、市場とのミスマッチが発生しやすくなる。

・他分野の人材や知見の交流がなく、イノベーションが起こりづらくなる(食品業界の問題が異業種である製造業の知見を使えば解決するなど)。

・人は一定の期間で区切られていた方が、モチベーションを維持しやすく、失敗してもやり直しが効く(学生時代は3~6年で区切られているので、メリハリがつきやすい)。  

もう少し市場流動性が高まり、何度でも人生がやり直せる世の中になってほしいと思います。  

総合的に考えて、「3年3割辞める」ことは悪い側面ばかりではありません。

早めに「転職」という経験を積んでおくことは、長い目で人生を見た際、プラスになるのではないかと思います。

安易に「3年で辞めて転職を」と言っているわけではないですが、理由もなく「同じ環境で長く働くこと(変化することに消極的になる)」はネガティブな側面もあるのではないでしょうか。

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