厚生労働省によれば、日本国内の認知症患者は約600万人といわれています。
認知症の有病率は年齢とともに高まることが知られています。
現在、65歳以上の約16%が認知症であると推計されていますが、80歳代の後半であれば男性の35%、女性の44%、95歳を過ぎると男性の51%、女性の84％が認知症であることが明らかにされています。
日本は世界一の長寿国であり、認知症と共に生きる高齢者の人口は今後も増加し、2025年には高齢者の5人に１人、国民の17人に1人が認知症になると予測されています。
そのうちおよそ5割を占めるのがアルツハイマー病です。発症する仕組みは、脳内にタンパク質の「アミロイドβ」や「タウタンパク質」がたまることが原因の一つだといわれています。
アルツハイマー病は脳の神経細胞が徐々に死んでいく病気です。薬によって病状の進行を遅らせたり、記憶力を改善させることが可能ですが、進行を遅らせることが限界で、根治することはできません。
認知症は脳に異常なタンパク質がたまったり、『脳血管性認知症』の原因となる脳の血管が詰まったり、脳出血を引き起こすのは生活習慣が影響しています。
認知症はいわば生活習慣病の一種だといっても過言ではありません。
糖尿病や高血圧、肥満などの生活習慣病が認知症のリスクを高めます。イギリスでは生活習慣病の予防に取り組んだところ、認知症の有病率も減少しました。
早めに生活習慣を改善すれば、認知症も予防できます。アルツハイマー病の要因となるアミロイドβは40代から、タウタンパク質は50代からたまり始めます。
その年齢を過ぎていたとしても、今からでも良い生活習慣を続けることが大事 です。
認知症を引き起こす要因となるのは糖尿病や高血圧、肥満、運動不足、睡眠不足、うつ病や高齢期の難聴、社会的孤立、喫煙などが挙げられます。
これに加えて、以下のような生活習慣があると認知症になりやすくなりますので注意が必要です。
・日中、ぼーっとしていることが多い ～知的好奇心を持つと脳が活性化する～
日常生活が単調だと脳への刺激も少なく、アート制作や鑑賞、映画鑑賞、旅行など「感動」できるような趣味を持つことで認知症発症のリスクを減らすことができます。
また、読書や書き物、知人との対話など、脳に刺激を与える活動をすると高齢になっても認知能力の低下が抑えられます。趣味があると生活が主体的になるので、無趣味な人はまず若いころに好きだったことに挑戦するのも良いです。
・自分の話ばかりをしている ～他人を思いやることが認知症予防につながる～
ストレスを感じるのは他人と自分を無意識に比べているからです。まずは人と比べることをやめて。そして、周りを幸せにすることから始めてみましょう。
人間は他人の役に立てたとき、最も幸福を感じます。自分に自信を持てば、自然と社交的になれるので、まずは自分本位の考え方にならないようするべきです。
さらに人との交流が多いと、認知機能の低下を抑えられます。気の合う仲間や家族と、自分が楽しいと思えるコミュニケーションを増やすことです。
・人をけなしたり悪口をよく言う ～いつも笑顔で人を褒める習慣を～
心身の健康を維持するにはまず心の健康を保つことからです。思うようにいかないとき、文句や悪口を言っていると、だんだんと人が離れていきます。
社会的な孤立や閉じこもりは、認知症を引き起こす要因のひとつです。できるだけ人を褒めたり、いつも笑顔でいることを心がけることです。特に笑う機会がほとんどない人は、毎日笑う人と比べて認知機能が低下するリスクが高いのです。
・菓子パンが好きでよく食べる ～糖尿病になると認知症リスクが高まる～
糖尿病の人は健常な人と比べて2～3倍、アルツハイマー病になりやすいのです。さらに糖尿病による糖代謝異常が主な原因で、軽いアルツハイマー病でも認知症を発症しやすくなります。
また、高血圧は脳血管性認知症のリスクを高め、肥満体形の人は認知症発症リスクが2.44倍になります。甘いものを控えてバランスのいい食事をとるとともに、1日30分の有酸素運動を週3～5回行うなど、体形維持を心がけることです。
・不平不満を口にする ～「できないこと」ではなく「できること」を楽しむ～
ストレスがたまるとつい不平不満を言いたくなるものですが、敵意を抱きやすい、自意識が強いといった神経質な人はそうでない人に比べ、認知症になるリスクが高いのです。
これは周囲とのコミュニケーションの妨げになりやすく、結果的に社会的な孤立につながります。
・歯磨きをおろそかにしがち ～こまめな口腔ケアでアルツハイマー病を予防～
アルツハイマー病のマウスの口腔に歯周病菌を感染させる実験を行ったところ、脳内に沈着するアミロイドβが歯周病のないマウスの約1.5倍になりました。
歯周病菌などが脳内に流れ、影響を与え、歯周病で歯を失い、噛めなくなることもアルツハイマー病の要因となります。起床後と食後は念入りに歯磨きをして、できれば歯間ケアも行うと良いとされています。
