広告費は景気の動向に左右されるため、2008年のリーマンショックでも大きく落ち込みましたが、景気の回復とともに上昇に転じ、一過性に終わっていました。
しかし、ネットの台頭で景気が持ち直せば広告収入が回復するという図式が当てはまらなくなってきました。
国民生活時間調査2020で示されたように、テレビ離れが急加速しているというライフスタイルの激変、つまり景気動向とは異なる社会構造的な要因があります。
若者世代を中心とするメディアライフは、SNSの普及とともに、5Gという高速の無線通信ネットワークの進展やスマートフォンというツールの高度化で、急速に様変わりしています。
テレビという時間を拘束されるメディアから、自由度の高いネットメディアに興味と関心が移行するのは必然です。
テレビ広告費の指標は視聴率です。視聴率が高ければ広告収入が伸び、低ければ低迷しますので放送局は視聴率競争に繰り広げてきました視聴者がテレビを見なくなるのであれば、絶対的に視聴率は下がります。
民放各局は、広告収入が戻らなければ、さらに番組制作費を削らざるを得なくなり、その結果、番組の質が落ちて視聴率が下落し、広告収入はさらに落ち込むという悪循環に陥ります。
正月のTV番組で再放送を流しまくっている状況を見ると予算が大幅に削られていることがはっきりわかります。
巨額の広告費を投入する広告主にしてみれば、視聴者の「テレビ離れ」が数字ではっきり示されている以上、テレビCMの価値は低下しているということでしょう。
ネット広告は、利用者へのリーチ度や購入履歴などの広告効果が詳細にデータ分析できるという点で、テレビ広告にないメリットがあります。ユーチューブなど広告効果が見込めるネットにシフトしようと検討することは十分に考えられます。
電通の調査によれば、国内広告費でネットがテレビを上回ったのは2019年からです。20年は、ネット2兆2290億円(前年度比5.9%増)で、テレビ1兆6559億円(同11.0%減)逆転しました。
テレビの魅力が失せる中、民放各局の業績は悪くなっています。
放送局員の収入は平均的なサラリーマンと比べ高く、高給取りと言われる社員の給与削減やリストラは既に始まっているようです。