公務員には、残業がないようなイメージを抱く人も多いかもしれません。しかし、実際には定時で帰宅できるとは限らず、日常的に時間外勤務を命じられることがあります。
公務員には国家公務員と地方公務員がありますが、どちらに就職しても、時間外勤務があることに変わりありません。例えば、地方公務員の場合、令和5年度の時間外勤務時間は、
年平均141.1時間、月に直すと12時間ぐらいです。
直近では時間外勤務の時間数が減少していますが、それでも年140時間台で推移しています。
さらに月12時間程度といっても、これはあくまで平均の時間数に過ぎません。
業務の状況によっては、一般的な上限とされる月45時間を超える時間外勤務や、中には月100時間を超える職員もいます。実際に月45時間を超える勤務があった職員は全体の5%ぐらいで、特別に珍しいわけではないと言えます。
30歳代後半から40歳代にかけては、月100時間以上の時間外勤務を何度も経験することもあります。
忙しい職場に勤務していた際は、そのような職員がまわりに一定数います。
ちなみに、国家公務員に関しても、令和5年の時間外勤務は、地方公務員より多い年平均230時間です。職場によって差はありますが、少なくとも「公務員になれば残業しなくていい」という認識は、改めたほうがいいでしょう。
年収については、民間企業から公務員に転職するメリットがあるのでしょうか。地方公務員を例に、民間企業の年収と比較してみましょう。
まず、総務省の「地方公務員給与実態調査」によれば、2024年の一般行政職の平均給与月額は、図表2のとおり40万2761円です。
ボーナスを4.6ヶ月分と想定しシンプルに計算すると、年収は40万2761円×16.6月=約668万5000円になります。 図表2 図表2 総務省 令和6年地方公務員給与実態調査結果等の概要 団体区分別平均給与月額(一般行政職・R6)
一方で、国税庁が公表している「令和5年分民間給与実態統計調査」によれば、民間企業の給与所得者5076万人の平均年収は460万円です。
公務員に比べ、200万円ほど低くなっており、全体で見れば、公務員の年収には魅力があると言えます。
ただ、民間企業の年収に関しては、会社の規模や業種などにより大きな差があり、公務員の平均年収を上回る業種もあるほか、年収が1000万円を超える人の割合も全体の5%以上います。
そのため、今勤めている民間企業によっては、公務員に転職しても必ず年収が増えるとは限りません。
年代別で年収に傾向はあるのか 民間企業と公務員の年収について、年代別の傾向はあるのでしょうか。
実は年代が高いほど年収が増える傾向は、民間企業も公務員もあまり変わらず、働き始めた20代前半と、年収がピークとなる50代後半では倍近い差があります。
例えば、都道府県の地方公務員の場合、大卒1年目の一般行政職の年収は、300万円を超える程度で、ピークである経験年数30年以上となる50歳代の半分以下です。
民間企業も、20代前半の平均年収は267万円、50代後半はその倍の約540万円になります。年功序列のイメージは公務員のほうが強いですが、民間企業であっても、経験を重ねることで、年収が増えることに変わりはありません。
就職した子どもから「残業したくないので会社を辞めて公務員になる」と言われると、親の立場からは「せっかく就職したのにもったいない」と思うかもしれません。さ
らに、公務員になっても残業があることに変わりはなく、「毎日定時で帰りたい」という希望が叶うかどうかは分かりません。
ただ、公務員へ転職すれば、比較的高い水準で安定した収入を継続して得られ、社会的な信用も高まるメリットがあります。
採用試験などで、希望しても公務員に転職できるかどうかは分かりませんが、働き方に関する価値観は世代間で差があるでしょう。
