氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

得をするのは富裕層と仲介業者だけ…ふるさとが潤わない「ふるさと納税」の歪んだ構図②

ところが、仲介サイトのPR合戦にもあおられて、返礼品競争はヒートアップ。

「御触れ」を無視するかのように、高額の返礼品を提供したり、多額の経費をつぎ込む自治体が続出。読売新聞の調べによると、21年度に「5割ルール」を超えた自治体は138市町村に上ったといいます。  

さらに、新たな問題が露見する。仲介サイトが、「5割ルール」の枠外として、システム管理費や顧客情報管理費など「募集外(ボガイ)」と称するさまざまな手数料を、自治体から広く徴収していたことが判明したのです。

また、これまで「5割ルール」の対象外だった、自治体が発行する寄付金受領証やワンストップ特例に関わる事務費も、無視できない額になってきました。  

こうした「隠れ経費」を含めると、多くの自治体が「返礼品+経費」が5割を超えてしまうといいます。  

このため、総務省は10月から、経費の算定基準を厳格化して「隠れ経費」をすべて加え、地場産品の基準も厳しくした「新5割ルール」の実施に踏み切りました。  

しかし、いずれも小手先の対策に過ぎず、とても抜本的な見直しとは言い難いのです。

あらためて、ふるさと納税の問題点を整理してみると、

①巨額の税金が仲介サイト業者に流出している

②業者に支払う経費の算定基準や内容が不透明

③高額所得者ほど実質的な節税効果が大きい

④返礼品や経費のコストが重く、寄付額の半分程度しか自治体に入らない

⑤地場産品の人気度によって寄付金受け入れの自治体間格差が大きい

⑥大都市圏の自治体は流出額が大きく、住民サービスに支障が出ている

⑦利用者の大半は返礼品目当てで、ふるさとへの貢献という理念がかすんでいる

ふるさと納税に絡んだ不祥事が続発し、贈収賄のような刑事事件まで起きている  

など、枚挙に暇がありません。  

ふるさと納税の寄付総額が100億円前後の10年前ならともかく、今や市場は1兆円規模となり、さらに拡大が見込まれるだけに、どれをとってももはや看過できなくなりました。

とくに、重要な問題点を深掘りしてみると、まず①と②について。  

「5割ルール」では、返礼品の調達額は3000億円程度、経費は2000億円程度になりますが、経費のうちかなりの額が仲介手数料や決済手数料、顧客リスト管理費、販売促進費、広告宣伝費などの名目で、仲介サイトの運営業者に支払われています。  

寄付金受け入れ額ランキングに名を連ねる九州のある自治体の担当者によると、あれやこれやで仲介サイト業者に支払う金額は寄付額の15%程度に上り、しかも手数料などの料率は仲介サイト業者から一方的に提示され、不満を感じても交渉の余地はほとんどないといいます。 

担当者に言わせれば、無垢(むく)な自治体を食い物にするハゲタカ業者が巨額の税金をかすめとっているのです。

つまり、全国では1500億円にも上る税金が、ふるさととは無縁の仲介サイト業者の懐に収まってしまっているのです。

ふるさとへ寄付したつもりの利用者にすれば、実に不快で由々しき問題と言わざるを得ません。  

仲介サイト業者への巨額流出は、当初の制度設計では想定していなかったとみられますが、制度の抜け穴であり、放置しておいていいはずがありません。

次に③について、ふるさと納税における住民税の控除の上限(寄付金の実質的な上限)は、2割の定率のため、高額所得者ほど寄付の上限額が飛躍的に大きくなります。  

ちなみに、22年の世帯平均年収546万円(厚生労働省国民生活基礎調査)の場合、上限額は概算で6万円(夫婦の場合、家族構成により異なる、以下同じ)になります。  

もっとも多いのは年収200万~300万円世帯だが、300万円世帯の上限額は概算で1万8000円です。  

これに対し、年収が1000万円なら約17万円、1500万円で約40万円、2000万円で約56万円、3000万円は100万円余り、5000万円になると200万円を超す寄付ができてしまうのです。

寄付額の3割は返礼品となって戻ってくるので、その分が実質的な節税です。  

逆進性がきわめて高く、税の公平原則からみれば極端な不均衡が生じています。つまり、「金持ちほど得をする制度」なのです。このことはマスコミは一切報じていません。

当初から指摘されていた制度上の欠陥で、素直に受け入れられる利用者がどれほどいるでしょうか。  

④以下は、寄付金目当ての返礼品競争が招いた結果であり、自治体が税収を奪い合う構図は歪んでいるとしかいいようがありません。

制度上の欠陥や抜け穴は、根本的に是正しなくてはなりません。  

まず、手がけやすいところでは、寄付額の上限(税額控除の上限)を「定率」に加えて新たに「定額」を設けることでしょう。  

約1000万人の利用者が約1兆円を寄付している現状から計算すると、1人当たりの平均寄付額はざっくり10万円。これは、年収約700万円の世帯の上限額に相当します。

2割の上限率はそのままで、上限額としてたとえば10万円を設定すれば、全世帯の7割を占める年収700万円未満の世帯には影響がなく、一方で、節税にいそしむ高額所得者の多額寄付に歯止めをかけることができます。

そうすれば、庶民の怨嗟の声も少しは鎮められるかもしれません。  

寄付総額は一時的に減るでしょうが、だからといって高額所得者に配慮する必要はまったくありません。

利用者のすそ野は広がっており、伸びしろもたっぷりあるだけに、数年単位でみれば、ふるさと納税市場は活性化していくでしょう。  

次に着手できるのが、経費の抜本的見直しです。  

総務省は、自治体に入る寄付金を寄付額の半分程度を目安にしているが、少なすぎます。経費などを差し引いて、少なくとも7割、できれば8割は残らないと、本旨に反するのではないか。「返礼品+経費」を「3割以下」に抑えるようにすべきです。  

仲介サイト業者への税金の巨額流出は、現在の最大の問題ともいえます。  

民間の仲介サイト業者を規制することは容易ではありませんが、自治体の経費の使い方に厳しいガイドラインを設けることは難しくないでしょう。  

一つの方策として、地場以外の業者に支払う経費に上限を設けてはどうでしょうか。たとえば、仲介サイトの大手業者に10%以上も支払っている仲介手数料の上限をクレジットカード並みの3%程度に抑えることが考えられます。  

その結果、不満をもった仲介サイト業者が手を引いたとしても、ふるさと納税の仕組みが崩壊するわけではありません。

もっとも、仲介サイト業者がふるさと納税を起点にして自社の経済圏に利用者を引き込むことを狙っているとしたら、すんなり撤退するとは考えにくいのです。  

そして、できることなら、経費の支出先は地元の業者(自治体レベルにとどまらず県レベルも含む)に限るべきでしょう。それは、地域が潤うことと同義語です。

仮に大手業者の仲介サイトがなくなった場合、総務省は、県や有力自治体が主導して県レベルのささやかな仲介サイトを地元業者に委託する代替策を推奨してはどうでしょうか。  

利用者には不便になるかもしれませんが、「カタログ通販」化した「ふるさと納税サイト」を眺めて、ショッピング感覚で寄付している現状を見つめ直す契機になるのではないでしょうか。  

「税金が肉や魚に変わるのが当たり前」という風潮をおかしいと捉え、そもそも縁のある自治体に寄付することが本旨だったのだから、ささやかな返礼品が贈られてくればよしとすべきでしょう。  

寄付額に上限を設け、地元業者以外への経費支出を抑えれば、ふるさと納税を取り巻く景色も変わってくるでしょう。  

爆発的に拡大しているふるさと納税ですが、あるべき姿は、「寄付金争奪戦」でもなければ、「官製ネット通販」でもありません。  

スタートから15年経った今、創設の趣旨に立ち戻る「勇気」が求められています。

住民税を払っていない、仕事を辞めた人たちには関係ない話ですけどね。

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