氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

「PayPay祭り」の終焉

伝統的な「現金」の比率が下がり、「非現金」の決済が増加する傾向にあるのは確かなのですが、「キャッシュレスブーム」の騒ぎにおいて、伝統を持ちなおかつ大きなシェアがあるクレジットカードの存在がほとんど抜け落ちていたことが問題であったのです。  

さらには、「ナントカペイ」の勝者であるかに見えたPayPayにおいても「改悪」が大騒ぎになりました。

明らかに、これまでの「大盤振る舞いでシェアを獲得する」という手法が行き詰ってきたのです。  

確かに、PayPayはコード決済回数の約3分の2を占めています。「出血覚悟でシェアを高め、その巨大なシェアを武器に高い利益を獲得する」というのは、ビッグテックなどを含むIT業界の定石ででした。

したがって、PayPayがその路線を踏襲し、シェア獲得に邁進した理由はよくわかります。  

だが、PayPayは大きな判断ミスを犯しました。いくらばら撒いてコード決済の市場を獲得しても、最終的に戦うべき場所は巨大な「キャッシュレス市場」です。

PayPayは、明らかにドミナント戦略のやり方を間違え、急激に成長しているにも関わらず、コード決済のシェアはキャッシュレス全体の7%を占めているに過ぎません。

残りの大部分はクレジットカードが占めています。 キャッシュレスの勝者は、結局、クレジットカードということになるでしょう。  

つまり、ポイントバラマキは安売りと同じことで、その安売りでキャッシュレス市場全体から見れば、数%程度のシェアを何とか確保したにすぎないPayPayの行く末には暗雲が立ち込めています。 

経済産業省 4月6日「2022年のキャッシュレス決済比率を算出しました」によれば、キャッシュレスの内クレジットカードの比率は約85%、コード決済が約7%です。  

いくら「安売り」や「バラマキ」で一時的にシェアを拡大しても、商品性が劣ればそのシェアは最終的に減少します。  

結局は消費者の満足度が市場の動向を決めるのです。  

例えば、PayPayを取り扱う店舗が急速に増えた大きな理由には「クレジットカードに比べて決済手数料が安い」というものがあります。  

しかし、決済手数料に関わらず消費者が購入する価格は変わりが無いので、そのようなことに消費者は興味が無いのです。決済手数料が高くてもクレジットカードの方が便利であればそちらを使うことになります。  

要は、コード決済(を扱う企業)とクレジットカード(を扱う企業)のどちらが利便性において優位かということなのです。  

クレジットカードを横綱に例えれば、コード決済は幕下です。しかも、その横綱が、幕下の領域であった「少額決済」の分野にも進出してきているのです。

PayPayがクレカに進出しましたが  クレジットカード会社も、小口決済にも手を伸ばしています。

また、デビットカード電子マネー(「ポストペイ型電子マネー」など)多種多様なアプローチを行っています。  

逆にPayPayを始めとするQRコード決済事業者も、クレジットカードビジネスの領域に踏み込もうとしています。

PayPayユーザーに、他社のクレジットカードから自社のクレジットカードへの乗り換えを促しています。このこと自体が、いくらPayPayでシェアを拡大しても、(他の)クレジットカード会社に「利益を吸い上げられる」現実を如実に示しているといえます。  

つまり、PayPayも結局のところクレジットカードを発行してそのビジネスで儲けなければ採算が合わないということです。

丸井は、一般的に小売業と認識されています。

その丸井の「2023年3月期 決算説明と中期経営計画の進捗」「3.フィンテックにおける競合状況と今後の成長性、(1)QRコード決済との競合」は興味深い資料です。  

ここでも、QRコード決済が対象とする少額かつ、都度払いの市場が60兆円であるのに対して、クレジットカードが得意とする高額及び定期払いの市場規模が約240兆円と全体の8割を占める事が示されています。  

例えば、5000円以下の少額決済でも、数万円、数十万円を超える高額決済でも、1回の決済に必要な手間暇は基本的に変わりが無いから、クレジットカードビジネスの優位性がさらに際立ちます。  

しかも、VISAタッチなどの少額都度払いでのエポスカード(丸井のカード)の取扱高は、2019年3月の380億円から、2023年3月の2500億円と7倍近くに増えています。  

さらに、エポスカードにおいて、家計最大の支出項目である家賃の支払いをはじめ、水道光熱費などの利用を促進したことにより、定期払いの取扱高は約1兆円となっています。  

このような「定期払い」は、一度獲得すればシェアが奪われにくいものです。しかも、家賃はもちろんだが、光熱費もすべてを合わせれば決して小さい金額ではありません。  

すでに地位を確立した高収益のクレジットカード会社に、低収益のコード決済(少額決済)中心のPayPayなどが勝負を挑んでも、結果は見えているのではないでしょう。

丸井は「店舗網を持つクレジットカード会社」として独自の地位を築いていますが、クレジットカード業界の覇権権争いも厳しいのです。  

売店舗を持ったクレジットカード会社のメリットは、丸井が「クレジットカード会社」として成長し、全体のビジネスにおけるカード部分が拡大することによって薄まっていきます。

「クレジットカード会社」としての土俵で勝負しなければならなくなるということです。  

「キャッシュレスの本命はクレジットカード」であることは間違いが無いですが。今後は「クレジットカード会社同士の覇権争い」がより激しくなっていくのではないでしょうか。  

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