ドイツのGDPが日本を抜き、韓国も、1人当たりGDPで日本に肉薄しています。
こうなる大きな原因は為替レートが円安になっているからで、最近の為替レートは、1ドル=150円を超える円安になりました。
2022年の春ごろからアメリカが急激な利上げを開始し、日本が金融緩和を続けたので、金利差が開き、このような状態になったのです。
円安は物価上昇の原因となり、生活を直撃し、。為替レートは、いまの日本で最も重要な経済変数になりました。
為替レートの状況を表わすのに、ビッグマック指数が用いられ、2023年8月3日に7月の指数が公表されました。ビッグマック指数は、あるべき為替レートに比べて、現実の為替レートがどれだけ乖離しているかを示します。
2023年のデータについて具体的に示すと、2023年7月におけるビッグマックの価格は日本で450円であり、アメリカでは5.58ドルです。
これらを等しくするような為替レートを計算すると、1ドル=80.65円になりますが現実の為替レートは1ドル=142.08円なので、43.2％だけ過剰に円安になっていることになります。
これが、日本のビッグマック指数です。ビッグマックは、世界のどこでもほぼ同じ品質のものだから、ドルに換算した場合に同じ価格になってしかるべきだと考えることができます。
「そうならないのは、現実の為替レートがおかしいからだ」という考えに基づいています。
つまり、ビッグマック指数は、一物一価が成り立つような為替レート(1ドル=80.65円)が正しいものだと考え、そのレートに比べて、現実の為替レート(1ドル=142.08円)がどの程乖離しているかを示すものです。
日本のビッグマック指数がこのように低くなるのには、さまざまな原因があり、例えば、金融政策の歪みです。4割以上も歪んでいるのは驚くべきことです。日本の金融政策がいかに歪んでいるかを示しています。
ビッグマック指数が広く注目を集めているのは、単に為替レートの歪みを表しているからだけではなく、その国の豊かさを示していると考えられるからです。
実際、ビッグマック指数のリストで上位にあるのは、スウェーデンやデンマークなど豊かな国であり、下位には開発途上国が多いのです。
だから、ビッグマック指数の順位が低いのは、日本が貧しいことを意味するものであり、望ましくないと考えられます。
そして、時系列的にこの値が下がっているのは、日本の状況が悪化していることの結果だと解釈されます。
実際のデータを見ると、日本のビッグマック指数は、2000年頃には世界的に見てかなり高いところにありました。
それがいまでは、世界の最低グループに入っています。
ビッグマック指数の低下は、日本が貧しくなり、日本の国際的な地位が低下していることを意味すると解釈されます。
この指数が日本で大きな注目を集めるのは、このためででしょう。
一定の仮定の下では、ビッグマック指数は、その国の豊かさを示していると解釈することができ、その理由は次の通りです。
いま、実質賃金は時間的に一定であると仮定し、賃金(あるいは1人当たり所得)と物価水準の比率は、時間的に変わらないものとします。
この場合には、日本とアメリカのビッグマック価格の比は、日本とアメリカの賃金の比を表していることになります。
先に示した2023年7月のデータにつき、具体的に示せば、つぎのとおりです。
日本のビッグマック価格450円を現実の為替レート1ドル=142.08円で換算すれば、3.17ドルになります。
他方、アメリカのビッグマック価格は5.58ドルであり、日本の1.76倍なので、アメリカの賃金は日本の賃金の1.76倍だということになります。
そのため、現実の為替レートでアメリカの商品を買おうとすると、日本人にはなかなか買えないということになるわけです。
日本人とアメリカ人の賃金が等しくなるためには、為替レートが1ドル=80円にならなければなりません。
そして、仮に何らかの理由で日本の賃金が上がれば、日本のビッグマック指数は上昇すします。
しかしビッグマック指数が上がることは、必ずしも豊かになったことを意味しないのです。
それは、「実質賃金が一定」という仮定が満たされないからです。実際、このことが、2023年の指数に顕著に現れています。
2023年7月のビッグマック指数マイナス43.2は、2022年7月のマイナス45.1より上昇しました。しかし、これは日本がこの間に豊かになったことを意味するわけではありません。
それは、物価が上昇したことで、賃金は上昇しないが、物価が上昇し、その結果、実質賃金が下がったのです。だから、ビッグマック指数が改善しても、購買力は上昇していないことになります。
豊かになったかと言えば、豊かになったわけではなく、実際、実質賃金は低下したから、日本人は貧しくなったのです。
ビッグマック指数は、物価だけを見て評価しているので、このようなことになる。本来は、物価ではなく賃金を用いて計算すべきです。しかし、賃金について国際比較データを得るのは難しいので、その代理変数として、ビッグマックの価格を使っているのです。
ビッグマック指数が改善したのは、日本人の賃金がビッグマックの価格と同率で上昇したことによってもたらされたのであれば、望ましいです。
それは日本人が、外国のものをより多く買えるようになったことを意味するからです。
しかし、実際には、日本人の実質賃金は下落しているので、日本人の購買力は低下していることになります。
