氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

岸田政権の「資産運用立国」構想は実質的な年金破綻宣言

日本の家計金融資産がなかなか投資に回らない理由については、内閣府の「2023年度年次経済財政報告」が分析していますが、「余裕資金がない」との回答が4割弱を占め、断トツです。

投資をしようにも、元手が無くてはやりようがないのです。  

総務省の家計調査報告によれば、2人以上世帯における2022年の平均貯蓄額は1901万円です。

だが、これはあくまで平均額であり66.3%はこれを下回ります。100万円未満が9.7%で最も多く、100万~200万円未満が5.4%、200万~300万円未満が4.6%などとなっているのです。

厚生労働省の「国民生活基礎調査」によれば、等価可処分所得(世帯の可処分所得を世帯人員の平方根で割って調整した所得)が貧困線(中央値の半分)に満たない世帯員の割合を示す相対的貧困率(2021年)は15.4%にのぼります。  

そうでなくとも税や社会保険料負担が上昇し「五公五民」と言われるまでになり、昨今の物価高も加わって生活に余裕のない人が増えています。

SNSには「現在の可処分所得では投資したくともできない」「投資しろと言うなら、継続的な賃上げが先だろう」など、現実離れした「資産運用立国」構想には批判的な声が渦巻いています。

「政府の本音」と「国民の老後不安」  家計調査報告によれば、負債保有世帯が37.7%を占め、その91.3%が住宅や土地のための負債です。

住宅ローンなどの支払いに追われていたのでは投資に目が向かないのです。  

年代別では、50歳未満の純貯蓄額(貯蓄現在高-負債現在高)はマイナスです。

貯蓄現在高が負債現在高を上回るのは50代となってからです。

50代の純貯蓄額は1208万円、60代は2251万円、70歳以上は2321万円です。  

50代になると住宅ローンの支払いが終わる人が出てくるということでしょう。

だが、50代といえば子供の大学進学や親の介護などでまとまったお金が必要というケースが増えてくる年代でもあります。

これらのデータを見る限り、投資を考える余裕が出始めるのは60代が中心と思われます。  

政府もこうしたデータは把握している上で、国民に投資を促しているということは、ここに政府の本音が隠されていると見ていいのです。  

60代以上の資産運用と聞いて思い出すのは、「老後資金2000万円不足問題」です。

2019年、金融庁のワーキンググループが、高齢夫婦無職世帯は年金収入だけでは毎月約5万円の赤字であり、30年で約2000万円の金融資産の取り崩しが必要になるとの試算を公表し、国民に大きな衝撃が広がりました。  

この報告書が述べたかったのは、もちろん「2000万円の不足」などではなく、投資などによって資産寿命を延ばすことの重要性でした。

「資産運用立国」とは、見方を変えれば、政府が実質的な年金破綻宣言をしているようなものです。

急速な少子高齢化と人口減少を前にして、厚労省は有効な手立てを見つけ出せずにいることは多くの国民が知るところです。  

少しでも長く働こうという人が増えたのも老後不安があるからであり、資産運用による資産寿命の延長が有力な選択肢の1つになることもその通りです。

それでもあえて投資をしないできた人が多かったのには、それ相応の事情があり、60代以上にとって、投資というのは負担が大きいからです。

株式投資などというのは、大儲けする人がいる一方で、大損をすることもあり、退職金を株式投資につぎ込んだ結果、大やけどを負ったという事例もたびたび耳にします。  

若い頃ならば株価が長期低迷したとしても我慢して値上がりを待つという選択肢も取りやすいですが、高齢になってからの投資はそうはいきません。  

60代以上にもなると基礎疾患を持つ人が多くなり、元気そうに見えても、いつ大病を患うか分かりません。

若い頃に比べて死を意識しやすく、人生の先がだんだんと見えてくるにつれて、元本割れしない金融商品を選んでおいたほうが無難と考える人が多くなるのは自然なことでしょう。

金融機関の販売ありきの姿勢に二の足を踏む人も少なくなく、現金のまま金融機関に預けることは決して「不合理な判断」ではないのです。  

高齢者の1人暮らしや高齢夫婦のみの世帯が増えたことも、貯蓄を選ぶ大きな理由となっています。

昔の高齢者と比べて、70代、80代になってから多額の出費を迫られる機会が増えたためです。  

例えば、住宅の大規模修繕は、子供世帯と同居するのが当たり前だった時代にはその費用を高齢者自らが全額負担することは少なかったですが、いまや子どもがいない高齢者も増え自ら支払う人が珍しくありません。

定期預金や株式の期待収益率のほうが上回っていることが分かっていても、普通預金として持っておきたいというニーズは小さくないのです。  

銀行預金が減らないのは、それが多くの高齢者や高齢者予備軍の世代にとって合理的な資産運用法に思えているからです。

「資産運用立国」という構想自体を否定するつもりはないが、それを目指すには日本社会は少し年を取り過ぎたということです。

高齢化率はすでに3割で、このまま政策を進めても、既存の投資家や富裕層を優遇するだけに終わりそうですが、それでも岸田首相が「資産運用立国」を推進するというなら、是が非でも若い世代の収入が持続的に上昇するようにすることです。  

若い世代の多くが投資にもお金を回せる所得水準になったとき、はじめて「資産運用立国」が実現します。

「資産運用立国」においても、ここの部分は変わらないでしょう。

政府が「老後資金2000万円不足問題」の際と共通して託しているのは、「公的年金だけでは老後資金は不足するので、足りない分は自助努力で調達してほしい」というメッセージにほかならないのです。

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