氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

「最低賃金1500円」発言が見落としている「深刻すぎる格差」

大手百貨店そごう・西武の「西武池袋本店」で8月31日、労働組合によるストライキが行われて同本店が終日臨時休業となり、ストライキが大きな注目を浴びました。

大手百貨店でのストは1962年の阪神百貨店以来60年ぶりとされ、多くのメディアで報じられました。

ストライキは、憲法でも守られる「労働三権」のひとつです。

憲法第28条では、労働者の権利として「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」の労働三権が認められています。

ストライキは、労働条件を改善するために仕事をしないで団体で抗議する権利のことです。  

ストが起こったのは親会社のセブン&アイ・ホールディングスが米投資ファンドそごう・西武を売却することへの反発からでした。

売却は強行されたもののストの結果、従業員の雇用維持は守られる見通しとなりました。  

百貨店の大規模ストだけでなく、今年3月には医療現場でも全国一斉ストなどが起こっています。ストによって労働条件の改善につなげ、患者や国民医療の安全を守ろうとする動きも出ているのです。

家族に感染させてはいけないという思いを抱えながら、過酷な現場での我慢の3年間で、一向に看護師は増えず、賃金も仕事に見合わないのです。

3月9日、大幅賃上げを求めて31年ぶりにストを決行し、7月中旬に行われた医療・福祉現場の産別労組「日本医療労働組合連合会」(日本医労連)の大会では、傘下にある国立病院機構の病院の職員の労組「全日本国立医療労働組合」(全医労)の代表者が力を込めて発言していました。  

全医労は「全医労3・9統一行動」を行い、1000人が結集して宣伝やデモなどを行いました。  

国立病院は行政改革の流れで2004年度に独立行政法人となり、今回のストは、独法化後、初の一斉ストでした。

ストによる待遇改善は叶わなかったとされますが、組合員の奮起は全国各地の医療従事者の待遇改善に向けて取り組む機運を高めました。  

日本医労連では春闘で大幅な賃上げを実現するため、全国200ヵ所以上の医療機関ストライキを行っており、夏の定期大会では、その様子が次々と報告されていました。

神奈川県の病院の組合では、患者にもストを宣言し「いつも大変な思いで頑張ってくれて、頑張ってね」と多くの患者から励まされ「看護師など医療従事者のことを見てくれていると分かって、涙が出そうになりました」とストの重要性を訴えました。  

地方の公立病院で働く看護師がコロナの影響で夜勤が急増するなどの深刻な労働環境があり、看護師の働き方は普段から過酷なものとなっています。   

また、7月下旬に行われた「全国労働組合総連合」(全労連)の定期大会では、「病院職場では、流産した看護師に向かって上司から『流産して働けるね』と言われて、妊娠中の看護師が夜勤の間に出血して安静にするよう医師から指示が出ても、『あと2時間働いて』と言われるというマタハラが起こっています。

看護師が選ばれない職業になってしまい、看護師の待遇改善に向けてストを行うなど、危機感を持って運動をしなければいけません。  

医療・介護従事者はもちろん、教員、保育士など多岐にわたる職種の問題が議論され、労働者全体として賃金の大幅な引き上げの必要性について議論が行われ、全労連は「全国一律で最低賃金1500円」を求めています。 

最近では、8月末に行われた「新しい資本主義実現会議」で岸田文雄首相が「2030年代半ばまでに最低賃金『時給1500円』を目指す」と発言して注目ましされたが、最賃1500円というのは、そもそも全労連が2015年から「最低生活費試算調査」を実施しています。

これまで27都道府県で地域ごとの必要な生活費などを調査したうえで、2016年の春闘から「人間らしい生活には1500円程度は必要」と、全国一律での最低賃金1500円を求めて運動を行った経緯があります。  

直近の「最低生活費試算調査」(2022年)では、例えば25歳の男性の場合、大阪市で、健康で文化的な”普通の暮らし”をするために必要な費用は、食費、住居費、光熱・水道、家具・家事用品、被服・履物、交通・通信、教育娯楽など合計で月額24~26万円ほどでした。  

また、30代夫婦と子ども2人(幼児と小学生)の4人世帯の最低生計費は、札幌市、盛岡市さいたま市静岡市名古屋市など各地で年額550万~600万円(税・社会保険料を含む)となりました。

これは夫婦2人が最低賃金1500円で働くことで得られる収入額になるとしており、それらの金額は全国どこの地域でも大きく変わらない結果でした。

そこから全労連の「最賃1500円」運動が始まっています。  

10月からは最低賃金が改定されています。2023年の最低賃金の全国加重平均額は昨年度の961円から43円引き上げられ、1004円となります。

厚生労働省によれば、43円の引き上げは昭和53年度以降で最高額です。  

地域別に最低賃金を見ると、東京都が最も高い1113円となります。1000円を超えるのは他に神奈川県(1112円)、大阪府(1064円)、埼玉県(1028円)、愛知県(1027円)、千葉県(1026円)、京都府(1008円)、兵庫県(1001円)の合計8ヵ所でした。  

最低賃金が引き上げられたとはいえ地域格差は依然として大きく、最低賃金が最も高い東京都の1113円と最も低い岩手県の893円を比べると220円もの差があります。

最低賃金でフルタイムで働いた場合、年間に約40万円もの収入差が出てしまい、生活費の支出額が大きく変わらないなかで深刻です。  

岸田首相が1500円と言ったのは、あくまで平均です。

地域間格差については触れていません。そして、2030年代半ばの実現では遅い。全労連では全国一律1500円以上を掲げ、来年の通常国会では最低賃金を全国一律にするための最低賃金法の法改正が期待されます。

法改正が必要とされるのは、現在、最低賃金法には「地域別最低賃金」の決定が求められているためで、これを「全国最低賃金」と文言を変えることで全国一律の最低賃金が実現されます。  

労働者に占める非正規雇用の割合は、今や全体の4割を占めている。若年層の男性の非正規雇用率も高く、25~34歳で2割、15~24歳では約5割が非正規雇用となっています。

女性は25~34歳で約3割、それ以外の年齢層はほぼ5割を超える状況で、雇用の大きな受け皿となるサービス職や医療・福祉職には非正規労働が多く、最低賃金が引き上げられるかどうかの影響は大きいのです。  

そして、最賃引き上げを待っているだけでなく、前述したようにストライキを行って自ら労働条件を良くすることも必要です。

平均的な給与があっても、気軽に「外食、旅行に出かけよう」ということができなくなりつつあり、残念な経営者が残念な環境を作っているという現実もあります。  

労働者に認められる争議行為には、いくつか種類があります。  

(1)「半日以上の同盟罷業(ストライキ)」……主張を貫徹するために労働組合などによってなされる一時的作業停止のうち、作業停止時間が1日の所定労働時間の2分の1以上であるもの  

(2)「作業所閉鎖(ロックアウト)」……使用者側が争議手段として生産活動の停止を宣言し、作業を停止するもの  

(3)「半日未満の同盟罷業(ストライキ)」……主張を貫徹するために労働組合などによってなされる一時的作業停止のうち、作業停止期間が1日の所定労働時間の2分の1未満のもの  

(4)「怠業(サボタージュ)」……労働組合などが主張を貫徹するために、作業を継続しながらも、作業を量的質的に低下させるもの  

(5)「その他(業務管理等)」……上記以外の争議行為。業務管理とは、使用者の意志を排除して労働者によって事業所が占拠され、もっぱら労働者の方針によって生産や業務が遂行されるもの  

そごう・西武ストライキで注目を集めたストライキ厚生労働省の「労働争議統計調査の概況」によれば、ストライキなど争議行為を伴う争議は、2021年は55件でした。

過去にストが多かったのは1974年の9581件。当時はオイルショック後に物価が急激に高騰していました。

もちろん、当時とは経済状況や社会は変化していますが、現在のコロナショックや物価上昇を考えれば、働く側が自らストで労働条件の改善を目指すことも一案ではないでしょうか。

にほんブログ村 ライフスタイルブログ セミリタイア生活へ
にほんブログ村