氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

ハラスメントの経済損失は年1兆4000億円…パワハラをやめない管理職が「損失」を生むワケ

2020年6月、企業にパワーハラスメントの対策を義務づける「パワハラ防止法」(改正労働施策総合推進法)が施行され、2022年4月からは中小企業にも適用されています。

誰もが加害者にも、被害者にもなり得るハラスメントのリスクについて記したいと思います。

厚生労働省は2022年7月、各地の労働局などに寄せられた民事上の労働相談件数が2021年度は約28万4000件に上り、過去最多になったことを明らかにしました。内容は「いじめ・嫌がらせ」が最多の約8万6000件で、ハラスメント対策の必要性は高まるばかりです。

増加傾向にある「いじめ・嫌がらせ」の相談や、職場で相次ぐパワハラを背景に法改正が行われたわけですが、パワハラ関連の相談は約2万3000件と多いことがわかります。

厚労省が2020年10月に実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」によれば、過去3年間に勤務先でハラスメントを1度以上経験した人は「パワハラ」が31.4%と最も多く、「顧客等からの著しい迷惑行為」が15.0%、「セクハラ」が10.2%でした。

ハイパフォーマーである上司が部下に過大な要求  法改正を契機として、ハラスメント防止研修を実施する企業は増えています。

ただ、「叩く・蹴る」といった明らかなハラスメント行動は減る一方で、「不適切な行為ではあるがハラスメントとは言い切れない」というグレーなケースが増えていることがわかります。

その理由としては、法改正で以前より相談しやすい環境になったこともありますが、ハラスメントの罰則規定がないことが挙げられます。

厚労省の実態調査を見ると、パワハラを受けた職場の特徴としては「上司と部下のコミュニケーションが少ない・ない」が37.3%を占め、「残業が多い・休暇を取りづらい」(30.7%)、「業績が低下している・低調である」(28.6%)などと続いています。ハイパフォーマーである上司が部下に過大な要求や精神的な攻撃を続けるというケースもよく耳にします。

パワハラを知った後の勤務先の対応としては「特に何もしなかった」が半数近くに上っており、会社側は人材損失のリスクや業績悪化などを懸念し、対応することに“二の足”を踏んでしまいがちです。

しかし、ハラスメント問題を見過ごすことは会社にも、働く人にも大きなマイナスとなります。企業の社会的イメージ失墜や労働紛争につながるだけでなく、従業員の健康やパフォーマンスの悪化、そして業績低下に影響するからです。

職場におけるハラスメントのリスクと対応を阻む「壁」を考えてみたいと思います。

1.会社側のリスク

ハラスメントの被害者から訴訟を起こされた場合、裁判のコストがかかることに加え、従業員のパフォーマンス低下が生じます。

また、SNSなどを通じて事案が明るみに出れば、会社のブランドイメージは棄損され、悪影響が広がることになります。

ピースマインドは、九州大学と共同でハラスメントによるストレスへの影響から導かれる経済的損失を試算しました。

その結果、ハラスメントによるストレスの1人あたりの平均損失額は約17万円に上っています。ハラスメントが平均的に起こっている企業であれば、従業員1000人の企業で「約4000万円」という経済的損失が生じているという結果です。

総務省によれば、2019年度の正規職員・従業員数は約3500万人です。ここから日本全体のハラスメントによるストレスの経済的損失を試算すると、正規職員・従業員だけでも「約1兆4000億円」という計算になります。

職場いじめで高ストレスの発生比率が約8倍に  この金額は「ハラスメントに起因すると思われるストレス」のみから試算した経済的損失ですが、ハラスメントはそれ以外にも離職や休職など様々な影響を及ぼすことは明らかです。

また、人事労務コンプライアンス部門の対応、訴訟になった場合の費用なども考えると、実際の損失は試算値よりも大きいと考えられます。

2.被害者のリスク

ハラスメントを受けて心身にダメージを負うと、仕事のパフォーマンスに影響が出てしまいます。メンタル不調による休職リスクや仕事を続けられなくなってしまう可能性があります。

ピースマインドは約26万件のストレスチェック受検結果をもとに、ハラスメントと高ストレス者の比率に関する調査を実施しました。

その結果を見ると、「職場で自分がいじめにあっている(セクハラ・パワハラを含む)」という質問に「そうだ」と回答した人は、「違う」と答えた人に比べて高ストレスの発生比率が約8倍に上っていることがわかります。

被害者にはハラスメントとともに、複合的にストレスとなる事象が起きていることもあると考えられます。例えば、ハラスメントを受けたことで仕事が進めづらくなり、仕事自体のストレスも増えるといったことです。  

このストレス度の差が全部ハラスメントによるものとは断定できませんが、ハラスメントを受けていること自体が非常に大きなストレスの引き金になることが分かります。

3.職場のリスク

厚労省の実態調査によれば、パワハラが職場に与える影響として「職場の雰囲気が悪くなる」「従業員の心の健康を害する」が高くなっています。

ハラスメントが起きている職場では、心理的安全性(組織の中で安心して自分の考えなどを発言できる状態)や会社への信頼が失われる可能性があります。

チーム内外で仕事の遂行に支障が出て、職場の生産性が低下したり、人材が流出したりといったリスクも高まるのです。

ハラスメントは「会社」「被害者」「職場」のすべてにおいて様々なリスクをもたらします。もちろん、6月に限った話ではありませんが、誰もが加害者にも、被害者にもなり得るハラスメントのリスクをよく考えておく必要があるでしょう。

今春から新入社員となった人や転職した人、職場が変わった人は緊張が緩み、疲れも出やすい時期ですので心身の健康に一層注意が必要となります。

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