若い人だけでなく、日本企業で働く多くの方に知ってほしい働き方です。
キャリアとアイデンティティを分ける「静かな退職」を解説します。
「静かな退職(quiet quitting)」とは、会社を辞めるわけではなく、社員としてとどまりながら仕事以外のことに重点を置く、という考え方です。
仕事で期待以上の成果を目指すことはせず、最低限のタスクのみをこなします。自分と仕事をより強く線引きするスタンスです。
仕事への貢献意欲が低いことを自覚し、仕事以外のことに重点を置きます。
「静かな退職」はキャリアとアイデンティティを明確に分ける仕事へのスタンスです。
仕事へのモチベーションが低く、それを自覚した上で最低限しかタスクをこなしません。まるでやる気のないポンコツ新人のように思えますが、この考え方は日本企業では合理的な選択だと考えます。
その理由を、日本企業の特徴を中心に3つにまとめます。
日本企業の特徴は業務範囲があいまいで、成果に見返りがなく、成果と評価が一致しなません。
理由① 業務範囲があいまい
外資系メーカーとビジネスをするとわかるのですが、彼らは業務の線引きが明確です。 「ここまでは私、ここから先はあなた」と業務範囲も責任範囲もきっちり分けます。
隣のチームの開発が遅延している状況で、「自分は終わったから早めにバカンスを取るぜ!」とメールをもらったときは、そのドライさに感動したくらいです。
日本企業は「みんなでがんばろう・みんなで不幸になろう」スタイルです。
自分の仕事が終わって帰ろうとすると、「じゃあ、これも」と隣の人の仕事が追加され、全員で助け合い、トータルで仕事が早く終わるならハッピーなのですが、大抵はできる人が苦労して終わりです。 日本企業は誰かの犠牲で成り立つ組織です。
犠牲になっている者は損をし続けます。
理由② 成果に見返りがない
どれだけ成果を出しても給料に反映されません。年功序列ですので「頑張ったね」の一言で終わりです。 見返りゼロ、報酬ゼロで終わればまだ御の字です。
若い人が新しい技術(AI、クラウド)で成果を出すと嫉妬という形で跳ね返ってくるケースもあります。
「頑張ったね」の一言でもあれば、まだましな会社ではないでしょうか? 日本企業は難しいこと・新しいことに挑戦する者が損をします
理由③ 成果と評価が一致しない
日本企業は評価が曖昧なことで決まります。 好き嫌い、敵にならなさそう、部下としてコントロールしやすそう、休日に出勤した(仕事などないのに)などです。
会社に貢献したか否かはどうでもよいのです。 日本企業の特徴 組織への貢献意欲がマイナス評価になります 部下が組織にプラスになる成果を出すと、その提案ができなかった自分の身が相対的に危険になります。
新しいことをとにかく止めることに夢中な40代以上のおじさんたちが、自分の地位を脅かすライバルを増やすような昇格をさせるはずがありません。
成果を出すとむしろ評価がマイナスになります。
日本企業の特徴と静かな退職 仕事ができる人が損をします。成果を出しても給料への反映はゼロです。成果が自分の首をしめる「他者からの嫉妬」として返ってきます。
では逆に、その組織の中で貢献意欲を抑えるとどうなるでしょうか? 他社の工数をフリーライド(ただ乗り)でき、給料はやった分だけもらえ、嫉妬の対象にならないでしょう。
「静かな退職」はむしろ損をしない働き方になるのです。
組織に貢献しない「静かな退職」は日本企業では損をしません。
静かな退職のメリット では次に、「静かな退職」を選択することで、個人が得られるメリットを具体的にあげてみます。
静かな退職のメリット
① 仕事中心から自分中心で幸福度がアップする
「仕事中心のスタイル」から「自分中心のスタイル」にすることで、自分の幸せを第一に考えるようになります。 自分の幸せを第一に考えない人間がいるのか?と思われるかもしれませんが、仕事人間の場合、自分を犠牲にしてでも組織を回す、家族をないがしろにしても成果を出す自己犠牲の精神に美徳を感じる場合が多いです(昔の私もこのケースでした)。
当たり前ですが、仕事で成果を出しても幸福度はあがりません。 上記の通りインセンティブはありません。それよりも、仕事は生活の道具と割り切る。自分は何をしたら幸せと感じるかを真剣に考え行動する方がハッピーになれます。
ヒマな時間に何をするか?FIRE後の生活を想像してみる 自己犠牲の精神に価値なし。自分の幸せを第一に考えることができます 。
② 他人軸から自分軸で自己肯定感がアップする
「自分が変えることができること」に意識を向けることで、自分軸が確立されます 仕事が自分の中心になると、他人からの評価に依存するため、精神的に非常に不安定な状況になります。
認められたい、褒められたい、昇進したいなどです。他人がその決定権を持っており自分でコントールできないため、常に不安を感じます。 キャリアとアイデンティティを分ける「静かな退職」は、自分軸で物事を考えられます。
自分はどうしたいのか、自分はどう感じたのか。他人からどう評価されようが、自分の評価は自分で決めることができます。 自分がOKならOK。他人の目を気にする必要はありません。
③ 仕事に依存しすぎない
キャリアとアイデンティティを分けることで、仕事への精神的な依存度が下がります。 与えられた仕事がうまくいかない、評価されない場合でも、仕事以外で価値を見出せる趣味や理解しあえるコミュニティがあれば、そちらに軸足を置けばいいのです。
考えすぎて自死なんてもってのほかです。
仕事は自己表現の場ではありません。コミュニティや趣味を持てば精神的にも楽になります 。
「静かな退職」は、「働かないおじさん」が職場の1/3を占める場合は特に有効です。
成果を出しても1円も給料は増えないのに、勤務年数が長いというだけで高い給料をもらっている人たちが沢山いる部署はこの考え方は効果的です。
こういう職場は若い人の持つモチベーションを犠牲にして成り立っています。
「将来いいことあるよ、勉強になるよ」と、ありもしない人参をぶら下げて・・。
おじさんが若い人の足を引っ張ることしかしない、日本の業界のほとんどが当てはまります。 さっさと最低限の品質で、最低限の仕事だけしたら帰りましょう。
「働かないおじさん」の犠牲になる必要はありません