氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

老朽化マンション郊外は特に要注意

民間で初めてマンションが分譲されたのが、1956年、東京都新宿区四谷本塩町に建設された四谷コーポラス(2019年に建て替え)です。

以降65年以上にわたってマンションは分譲、供給が行われていて、2021年末で累計685万9000戸、国内の住宅総数が2018年で6240万戸で、マンションは日本の住宅の1割を超える、ごく一般的な居住形態になっています。 

685万戸のマンションのうち、約15%に相当する103万戸が所謂、旧耐震建物です。旧耐震建物とは1981年5月末日までの建築確認で建設された建物で、大きな地震等が発生した場合、現在の耐震基準よりも耐震性能に対する規制が緩いため、損壊や倒壊などのリスクが高いとされています。

1981年以前といえばすでに40年以上前だ。1970年代前半から80年にかけて大都市圏では地方からやってきた人たちの多くが家を購入しました。

 

 

そして現在、購入者の多くが80歳代から90歳代に突入しています。

つまり、これから発生する多くの相続は旧耐震設計下のマンションが相続財産の対象となることを意味しています。

旧耐震設計のマンションは、同じく旧耐震のオフィスビルに人気がないのと同様に、マーケットでは人気がありません。

1995年に発生した阪神・淡路大震災でも旧耐震設計のマンションで、建物が傾く、1階のピロティ部分が損壊して車が下敷きになるなどの被害が多く報告されました。

こうした旧耐震マンションが次世代に相続され、きちんと利用、活用されていくか、今後頻発する相続でマンションの持つ価値が問われようとしています。

まず築40年を超えるようになると、建物の老朽化問題が喫緊の課題です。

マンションはその多くが鉄筋コンクリート造、または鉄骨鉄筋コンクリート造です。

コンクリートの耐久性は一般的には50年から60年とされますが、築40年を超えるようになると建物自体の建て替え問題が生じます。

建物の構造や躯体に問題がなくても、ガスや上下水道、電気などの配管の老朽化は大規模修繕を施すにあたっても限界を迎えます。

人間でいえば肉体はまだまだ元気でも内臓や血管に支障が起こるようなものです。

しかし残念なことにマンションの建て替えはほとんど行われていないというのが実態です。国土交通省の発表によれば、2022年4月1日現在で、建て替え工事が終了したマンション棟数は累計でわずか270棟にすぎません。

1棟あたり50戸でカウントしても1万3500戸です。仮にすべての建て替えが旧耐震基準のマンションで行われたと仮定しても、建て替え率は1%強にすぎません。

背景にあるのがマンション住民の高齢化問題で、国土交通省「平成30年度マンション総合調査」によれば、マンション世帯主のおよそ半分(49.2%)が60歳代以上です。

70歳代以上に絞ってもその割合は2割を超えます。マンションは今や高齢者の資産なので、これから多発する相続資産の対象がマンションとなることが容易に予想できます。

 

 

しかも高齢者ほど老朽化したマンションを所有している割合が多くなることから、相続する不動産で老朽化したマンションを相続人はどのように扱えばよいかという問題に直面することになります。

旧耐震設計の老朽化マンションでも、都心の一等地にあるようなマンションの場合は相続の際にそれほど問題となることはありません。

容積率(敷地面積に対して建設できる建物面積の割合)に余裕がある物件ならば、建て替えて実現できる余剰分の床を新たに分譲することで建設費を賄うことができます。

民間初の分譲マンションである四谷コーポラスが建て替えできたのも、都心部にあって容積率に余裕があり、余剰床を高値で分譲できたからといわれます。

同潤会青山アパートは表参道ヒルズという商業施設に生まれ変わりましたが、青山という立地がなせる業ともいえます。

しかし、そうしたヴィンテージマンションは別として老朽化したマンションを相続して待ち受けるのが建物管理に伴う問題です。

今、築年数が経過した老朽化マンションで問題となっているのが、管理費、修繕積立金の滞納問題です。

住民の高齢化に伴い、経済的に苦しくなり滞納する、認知症を患い支払いが滞るようになる、などといった事象が頻発しているのです。

またマンション内での高齢者の孤独死が珍しくなくなり、不動産業界でも孤独死が発生した物件では、従来は事故扱いとして新たに当該物件を売却する際には買い手に対しての重要事項説明項目にしていたものを削除するほど一般的な事象になっています。

さらに住民の高齢化は管理組合の機能を著しく低下させ、組合実務をサポートする立場にあるマンション管理会社が管理業務を辞退するなどの事例も増えています。

こうした老朽化の著しいマンションを相続してしまうと、どのような事態になるのだろうか。まず管理状態の悪いマンションは賃貸物件として評価を得られません。

都心部、駅近など素晴らしく良い立地であればともかく、エントランスがオートロックでない、エレベーターがない、共用部が汚れている、などはそもそも賃貸物件として致命傷になります。

 

 

自分はちゃんと管理費、修繕維持積立金を支払っていても、他の区分所有者が滞納していれば、必要な修繕が行われず、いつまでたっても環境は改善されません。

それでは売却しようとなっても、財政状況のよくないマンションを積極的に検討する買い手は少なく、思い描くような価格では売却できないケースが増えています。

売れればまだしも、ニュータウン戸建て住宅と同様に、郊外などに立地するマンションとなると全く買い手がつかないケースもでてきています。

少しでも売れるようにと自分の住戸内をリフォームしても、その費用を回収すらできないマンションもあります。

現在では首都圏の物件ですら、郊外で最寄りの駅までバス便、あるいは鉄道沿線でも主要な鉄道ではない支線の駅が利用駅などになる物件で、築年数のたったものは、売値が車1台分程度になっているものもざらにあります。

貸せない、売れないとなった場合、戸建て住宅以上に厄介なのが、相続人が管理費、修繕積立金を払い続けなければならないということです。

物件にもよりますが、老朽化したものほどその額は高額になります。月額4万円や5万円を支払い、年間にすれば50万~60万円を全く価値のなくなったマンションに支払い続けるのは、もはや資産ではなく負債そのものです。

最近ではこうした状態に陥ることを嫌気して、相続した事実を管理組合に知らせない相続人が頻出しています。

またマンション内に貸せず、売れずにどうにもならなくなった空き住戸が増えると、マンション内の環境はさらに悪化していき、やがてはスラム化の危機を迎えることになります。

戸建て住宅よりも流動化しやすい(売りやすい)などと勝手に思い込んでいたマンションも実はこれからは相続するとかなり厄介な存在になることが予測されます。

特に郊外部にあるマンション相続は要注意の時代になります。

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