ここ数年で「人生100年時代」という言葉を良く聞くようになりました。
リンダ・グラットンとアンドリュー・スコットが、著書「ライフ・シフト」で「100年時代の人生戦略」を提唱してベストセラーになり、広まっているようです。
本書によれば「2007年生まれの日本人の半数が到達する年齢は107歳」だそうです。
107年も生きることになれば、人生いろいろありそうです。これまでにない状況が発生し、これに備える必要があるかもしれません。
特に「おひとりさま」の場合は、状況にあわせて対応してもらえる家族がいないので、自分自身で対策を考えておく必要がありそうです。
「おひとりさま」の身に「起こりそうなこと」と「備える方法」について今のうちから考えないといけない人もいると思います。
一口に「おひとりさま」と言っても、人によって使う意味が異なるようです。
「一人で生活している人」「自立した一人の人間」などの意味もあれば、「婚期を逃した女性(あるいは男性)」を指す場合もあるようです。
「おひとりさま」の定義は、生活様式としての単身世帯であることよりも、法的な親族関係に着目して分類するべきでしょう。
そうすると、広義の「おひとりさま」から狭義の「おひとりさま」まで、以下のような範囲がありそうです。
①子どものいない夫婦:相続人は配偶者と親または兄弟姉妹です。「おふたりさま」という言い方もあるようです。夫婦のどちらかが亡くなると、残された方が②になります。
②独身・配偶者と離死別:配偶者も子どももいないので、相続人は親または兄弟姉妹です。
③相続人が誰もいない:配偶者・子ども(孫)・両親(祖父母)・兄弟姉妹(おい・めい)など誰もいないと、「相続人不存在」となります。
おひとりさま=子どものいない人という定義です。
「おひとりさま」はどれくらいの割合でいるのかは、国勢調査を見ても、「世帯の構成人数」のデータはあっても、「子どものいない人」というデータはありません。
調べてみると、法務省が平成29年に調査したデータがありました。
配偶者の有無は関係なく調査していますので、「おひとりさま」で定義した「子どものいない人」と同じです。
年代が若くなるほど「子どものいない人」の割合が高くなっています。この傾向は、生涯未婚率(50歳時の未婚割合)とよく似ています。
生涯未婚率の変化(内閣府:令和3年版「少子化社会対策白書」より) をみると、現在の75歳以上では、おひとりさまの割合は10%程度ですが、20年後には30%を超えそうです。
人生100年時代に、後期高齢者の30%がおひとりさまとなると、これはもう個々人の問題というよりも、社会全体として対策を考える必要がありそうです。
子どもを含む家族が身の回りにいるのが「標準的」であったこれまでの社会とは異なり、おひとりさまが普通にいる社会では、血縁関係にすべて依存することを前提とした制度は成り立ちません。
おひとりさまは「何かあったときに頼れる親族がいない」状況にあります。
その「何かあったとき」「いざというとき」には、どのようなものがあるのでしょうか。
人の寿命が延びて「人生100年」があたり前になると、心身ともに健全なまま最期を迎えることが難しくなります。
認知症になっても、すぐに認知機能がすべて失われるわけではなく、徐々に低下していきます。
また、認知機能低下の前段階には「フレイル」という状態があるようです。
何かに備えようとしたときに、何らかの「契約」が必要になれば、意思能力だけでなく行為能力も必要になりますので、正常な判断ができるうちに準備をしておきたいところです。
「おひとりさまの困りごと」を考えてみると
・判断能力が減退したとき ・常用薬の服用や通院 ・介護や看護の手配 ・財産の管理 など
・死亡したとき ・葬儀やお墓の手配や連絡 ・公共サービスの解約や遺品整理 ・相続財産の分配 など この他にも、いろいろとありそうです。
家族がいる場合は「終活ファイル」を作成しておくことです。
この目的は「財産の手掛かりを残しておく」ことです。美しく整える必要はありません。
必要な書類を集めて放り込んでおく、これが大切です。例えば以下のようなものを記載しておくと残された家族は便利です。
・保管証(自筆証書遺言を法務局に保管したときの証明書)
・戸籍謄本(生まれてから現在までの戸籍がわかるように、現在の戸籍謄本、その前の戸籍謄本、とさかのぼって取得したもの)
・遺影用の写真、葬儀社の積立書類
・生命保険、火災保険、地震保険、傷害保険などの書類
・登記済権利証、固定資産税納税通知書
・銀行のキャッシュカード、クレジットカードなどのコピー(暗証番号)
・運転免許証、健康保険証などのコピー ・サブスクリプションサービスのIDとパスワード(封緘〈かん〉したもの)
家族のいないおひとりさまでお金に余裕のある方であれば、成年後見人制度などを利用して、人に迷惑のかかる孤独死だけは避けたいものです。