氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

働かないおじさん問題は昭和から抜け出せない社会のひずみ

このところ、やたらと「働かないおじさん」というワードを、目にするようになりました。  

この不名誉かつ辛辣(しんらつ)なネーミングは、2014年に「追い出し部屋」が社会問題になった頃から使われています。

当時は「使えないおじさん」「フリーライダー」と表現されることもありました。

今から8年も前の出来事です。また、再び、「働かないおじさん」アゲインです。  

そもそも、世間では、あたかも「働く側に問題がある」ように、「働かないおじさん」という言葉が使われています。

もし、「働かないおじさん」=やる気のない社員とするなら、若い人の中にも「働かない兄さん」はいるし、女の人の中にも「働かない姉さん」や「働かないおばさん」はいます。  

 

 

あるインターネット調査で「約半数の企業に『働かないおじさん』の存在を確認!?」との結果が出て話題になっていましたが、「働かない会社員」「働かない若者」と主語を変えても、似たような結果が出るのではないでしょうか。  

なにせ、賃金はいっこうに上がらず、何をやってもちっとも報われないご時世です。自分より楽をしているように見えるおじさん社員が、自分より高い賃金をもらっていれば不満が募って当たり前です。

いわば、「働かないおじさん」というネーミングは、会社への不満をぶつける社員の最良の手段となっています。また会社側もそれを利用してリストラしようとします。

50歳をすぎても「まだやるべきことがある、終われない終わりたくない」という人がほとんどです。競争心も衰えてませんし、昇進意欲を持っている人たちもいます。

これまで行われたシニア社員を対象とする調査でも、同様の傾向が認められています。

例えば、労働政策研究機構の調査では、昇進意欲は年齢と共に低下するものの、50代後半でも男性全体で22%と5人に1人、60代前半でも11.3%が「昇進意欲あり」と回答し、「定年まで働く意欲のある人」の方が、昇進意欲が高いという結果が出ているのです。

つまり、「定年まで会社にいる」=「会社にしがみついてる」わけでもないようです。

 

 

やる気があるからこそ、会社に残る選択をする人も存在するのです。もちろん、役職定年などをきっかけに、自ら「働かないおじさん化」する人がいることは否定しません。

最初は「腐らずに頑張ろう」と考えていた人たちの中にも、

「自分のスキルを生かそうと張り切っていたのに、誰からも期待されない」

「賃金が下がることは分かっていたけど、実際に働いてみると低すぎる」

「権限が一つもない」と現実に失望し、「気軽に仕事をするようになった」

「仕事に長期的な見通しをもたなくなった」

「思い責任を伴う仕事は後輩に任せるようになった」など、率先して「働かないおじさん化」する人たちもいます。  

人は自分の意思で行動し、発言しても「それが何の役にも立たない、それでも、そこで生きるしかない」という状況になった時、群衆の中に消えようとします。

リストラ候補にならないために、目立たず、害にもならないようにしようという心理が働いてしまうのです。  

しかし、そういう人たちでも、「このままで終わりたくない」という葛藤を抱えている、シニア社員の心情は極めて複雑です。

彼らは後進に役職をゆずるべきという年長者として思いと、それでも働き続けなければならない現実、まだまだ働きたいという欲求、そして、会社からはセカンドキャリアと称した圧をかけられます。  

今の日本は超高齢社会で、40歳以上が労働力の6割強を占めているのに、働き方・働かせ方のスタンダードは変わっていません。  

2009年~21年までの12年間で、60歳以上の従業員は2倍に増えました。65歳以上に限ると3.2倍。全体では1.2倍なのに、65歳以上は320%と爆増しています。  

4月1日現在、15歳未満の子どもは1465万人で、前年より25万人も減少し、全人口に占める割合はたったの11.7%です。

年齢階層別では、12~14歳が323万人、0~2歳は251万人と、若くなるほど少ないのです。  

0~2歳の子どもたちの多くが新卒社会人になる20年後、今の50歳は70歳、40歳はまだ60歳です。

 

 

人口減少によって労働力不足は、ますます深刻になり、30年には644万人が不足するとの試算もあります。

これは「人手不足」という4文字が連日連夜、新聞誌面などに掲載され続けた19年の4.6倍に相当します。  

この現実を経営陣は分かっているのでしょうか。 目の前の「人」をないがしろにして、会社が回るわけがありません。

そもそも、「働かないおじさん」を生んだのは、経営者の怠慢。高度成長期の成功にとらわれ、「昭和のカタチ」に安寧し続けたことが原因です。  

人口構成がピラミッド型で、世界的に経済成長している時代だったからこそ、新卒一括採用で「色のついてない若者」を入社させ、同期内競争という椅子取りゲームをさせ、年功序列で管理職に昇進させるシステムが機能しました。  

本来であれば、世界的に産業構造の変革が求められた1990年代に、会社の組織構造も変える必要がありました。しかし、「何か変えなきゃ」という焦りは、文化も組織の成り立ちも違う米国産の「成果主義」を中途半端に取り入れ、コストを削減するという愚策に向かいました。  

これらの延長線上にあるのが早期退職の拡大です。「働かないおじさん」ブームに乗ってシニア社員=やる気がないと見下す行為は、「人=コスト」を切ることを経営と勘違いしている、残念な経営者を喜ばせるだけです。  

中年社員を用済み扱いすれば、若手社員も「どうせあと数年でポイされる」とやる気を失います。  

社員のリストラに走った企業が、数年後には潰れたり、買収されたり、不正が発覚したるするケースが多いのは、「リストラ」という行為が、リストラされた人たち以上に、リストラされなかった人たちにネガティブな影響を与える、いわば「会社の自殺」行為だからです。  

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