食料問題は、特に日本において深刻です。カロリーベースの自給率が37%しかないというのは明らかに危険水域です。
カナダの266%、オーストラリアの200%は突出していますが、米国132%、フランス125%です。
さらにドイツは86%、英国、イタリア、スイスもおおむね50%台から60%台です。(農林水産省「世界の食料自給率」)
エネルギーについてはさらに深刻です。
日本の1次エネルギー供給の約4割を占めている石油は、その99.7%を海外からの輸入に依存しています。
さらに輸入先では中東地域が8割以上と偏っています。
また、天然ガスも石油同様にほとんどが海外からの輸入です。
そして、自動車生産などにも大きな影響を及ぼした半導体の不足は今でも続いています。
いくら優れたソフトウェアがあっても、半導体を使ってハードウェアを製造できなければ無用の長物です。
結局、これまで「いつでも好きな時に手に入る」という「デフレ経済の常識」にどっぷりとつかっていたわけです。
また、これまで第3次産業が経済成長のベースであると考えられていたものが、「第1次・第2次産業こそが国家の基盤を支える」という考え方に変わっていくでしょう。
これからの日本の成長は「第1次、第2次産業」に大きく依存することになります。
日本の2020年の「農業就業人口」は約150万人です。
毎年減り続け、2010年から110万人も減少しています(農林水産省「農業就業人口及び基幹的農業従事者数」)。
また、米国には200万以上の農場があります(1935年のピーク時には700万近くあった)が、農場や牧場で働く人の数は就業人口の1.3%に過ぎません。
ちなみに、1840年には米国労働人口の約70%が農業に従事していたのです。
もちろん「緑の革命」や「農地の集約化」などによる生産性の向上があったのは事実です。
その生産性を維持するためには、化学肥料、農機具を動かす化石燃料、さらには枯渇が心配されている地下水(米国の農業は石油などと同じ再生不能の地下水に頼っている)の供給などが必要不可欠です。
「無くなってしまってから大騒ぎ」することがないようにしたいものです。
厚生労働省の昭和56年(1981年)の「労働経済の分析」では、日本の第3次就業者数は55.4%です。
当時の他国と比較すると、カナダ(68.0%),アメリカ(66.2%)には及ばないものの西ドイツ(当時)(49.9%),イタリア(48.2%)を上回っておりフランス(56.2%)に近いのです。
しかし、2014年のジェトロの「サービス立国型英国の経済構造」において、英国・米国では約80%、日本・ドイツでは約 70%が第3次産業従事者となっています。
日本・ドイツの7割も決して少なくありませんが、英米の8割は高すぎるのではないかと思われます。
これまではデフレで産品・製品があふれていたから問題が顕在化しませんでしたが、インフレが進行している上に生産年齢人口が急速に減少しつつあります。
「国家の基盤を支える第1次・第2次産業」の少ない就業者がさらに減ってしまえば、国家存亡の危機にもなりかねないと心配しています。
結局、「第3次産業という潤滑油だけ増えても本体が衰退する」ということです。
IT、金融などは産業の「潤滑油」だが、潤滑油だけ肥大化しても本体が疲弊すれば成り立たちません。
人体に血液は必要不可欠ですが、血液が人体の8割を占めたらたぶん生命の維持ができないのと同じことです。
第1次、第2次産業が経済の基盤です。この部分の強化に取り組まないと日本の将来は暗いと考えます。
第3次産業の発展が経済の「進化」だととらえられがちですが、第3次産業は、第1次、第2次産業という基盤無くしては成り立たちません。
米国の混迷も、第3次産業比率が高くなり過ぎたことが原因かもしれません。
手っ取り早く金儲けをする風潮を助長していると思えます。
もちろん「腐ったタイ」とも呼ばれる英国の製造業も無残です。
「逆産業革命」と言えるかもしれません。
その点で日本は、食料自給率(カロリーベース)の37%は残念です。
現在、食料・エネルギーが欠乏し、人々が第1次産業の有難さを再認識しています。
世界的に食糧危機が起きた場合、国民生活にかなりのダメージを食らうことになります。
第2次産業も同様で、半導体の不足が騒がれていますが、それ以外の多くの工業製品においても重要性が再認識されるでしょう。
製造業の発展とともに、日本そのものも大躍進することを大いに期待したいものです。