大方の予想を超えて、際限なく値上がりを続けているタワマンですが、ここまで高騰すると購入できる人も限られてきます。
多くの日本人にとってローンを組んでも手が届かない価格にまで達した物件を、はたして誰が買っているのでしょうか。
世帯年収が2000万円前後の「パワーカップル」に代わって増えているのが、世帯年収3000万円前後の「パワーファミリー」です。
夫婦どちらかが一流企業の役員や管理職であることが多く、子どもがいてすでに持ち家もある点でパワーカップルと異なります。
この10年で都心の不動産は大きく値上がりしているので、5000万円のマンションが1億円になっていてもおかしくありません。
それを売って売却益を頭金にローンを組み、今度は1億5000万円のタワマンに住み替える家庭が増えているんです。 彼らは頭金が多くて信用度も高いため審査を通りやすく、今後タワマン購入層の中心になるかもしれません。
中には売却益の一部を子ども夫婦が頭金にしてローンを組み、親子2代でタワマンを買う家族も出てきました。
たとえローンを組んで1億円の資金を用意できても、タワマンを購入するために越えるべきハードルが残されています。
もはやタワマンを買うには資金力だけでなく、運や人脈までもが求められているのです。
最近のタワマン市場は完全に売り手市場で、モデルルームを見に行くことすら困難。連絡を受けてすぐに見学予約しようとしても、10分ほどでいっぱいになることも珍しくありません。
またタワマンによっては一般向け募集の前に、お得意様だけに通知して販売することもあります。
第1期の販売開始時点で、実はもう半分近くが売れていたなんてケースも見られますね」熱狂は都心部だけに限らない。
タワマンが存在しない都道府県は日本に8つだけ。最近では地方でも建設ラッシュが起こり、ブームが過熱しています。
札幌や福岡などの都市圏を除けば、投資需要ではなく居住目的での購入が大半。人口が30万人以上の都市ならば、タワマンへの需要があると言われています。
興味深いことに地方都市にあるタワマンの高層階は、広い住戸を用意しているケースが多い。見栄を張りたい地元の有力者や有名企業のオーナーといった名士たちが競って買っていき、別宅や会社の福利厚生施設として使うそうです。
戦国武将たちが権力を誇示するために、城のてっぺんに天守閣を造ったのと同じ心情なのかもしれません。
一方で地方はコミュニティが根強いので、『最上階の部屋を買ったのは○○さんらしい』といった情報がすぐに出回る。あえて奥ゆかしく見せるために最上階の一つ下のフロアを選ぶ人も少なくないため、そちらから先に売れていくケースもあるようです。
建設ラッシュが進めば進むほど、デベロッパー側は他のタワマンとの差別化に必死になります。
それゆえ近年では、個性的な特徴を備えたタワマンも登場しています。
豊洲にある『スカイズタワー&ガーデン』の屋上には共用施設として天体観測ドームがあり、大型の望遠鏡で夜空を観察できます。
また『パークタワー東雲』には地上28階に3層吹き抜けのドッグランが設置されていて、雨の日でもマンションから出ることなくペットを散歩させられます。
とりわけ個性的なのが、東京の中心部・白金にある「白金タワー」の訪問看護ステーションでしょう。
坪単価が約900万円と言われるこのマンションで、戸建てを売却して、タワマンを終の棲家にすると決めた高齢者の方が増えています。そこで'18年の総会にて、資産価値を高めるために共用施設を改装し、訪問看護ステーションを誘致することを特別決議しました。
居住者であれば看護師らによる健康相談や運動教室などを受けられますし、さらには医師の指示に基づいて介護保険や医療保険による在宅看護サービスも利用できます。
熱が高まっているのは日本人に限らず、中国人や韓国人の間でも同様です。
日本でタワマンを買う外国人のほとんどは東アジアの人々。儒教では身分の序列を重んじるため、上層になるほど部屋の値段も上がっていくタワマンの構造を受け入れやすいのではないでしょうか。
とりわけ中国の富裕層に人気なのが、湾岸エリアのタワマンでしょう。
過去には4億円の物件をキャッシュで購入した中国人もいたといいます。
どんなタワマンでも、建設すればチャイナマネーが購入してくれます。
こうした期待は都心部だけにとどまらず、やがて地方にも波及していくのではないでしょうか。
このままいけば、インバウンド人気が高い北海道のニセコや富良野にもタワマンが無数に建設されると考えられます。
おそらく中国人の富裕層が購入して、セカンドハウス感覚で滞在するのではないでしょうか。
日本中で過熱しているタワマンブームだが、最近ではさらなるプレーヤーが存在感を増しているのが台湾人です。
台湾有事のリスクを懸念する台湾の富裕層が、避難先として湾岸のタワマンを購入するケースが増えています。彼らの大半はローンを組まず、現金一括で払ってくれます。
中には日本人の相手をするのをやめて、中国・台湾人専門の不動産売買にシフトした業者も出てきています。
海外からの需要を見越して「不動産」を造るタワマン商売は、いわば「究極のインバウンド産業」と化しています。
まだまだ天井が見えそうにないタワマン市場だが、このバブルにもいつかは終わりが訪れます。
「いつまでも上がり続けるはず」という楽天的な見通しが支えてきたタワマン価格も、一気に暴落するに違いないでしょう。
タワマン転売を繰り返す人々は、言ってみれば「ババ抜き」を遊んでいるようなものです。
ただしどのタワマンも押しなべて値上がりしている現状では、手元のカードがジョーカーかどうかわかりません。
バブルが弾ける直前にババを相手に渡した者は高笑いし、つかまされた敗者はむせび泣くでしょう。
そんな人生を賭けたゲームを、彼らは今日も必死でプレーしています。その先に待ち受けているのは、はたして天国か、それとも地獄か。
