「4月1日に入社して、配属先発表という時に、自分の希望が全く考慮されていない配属先になっていて、不信感が頂点に達して辞めた。配属ガチャかなと思っていて…」
こちらはABEMA的ニュースショーから直撃取材を受けた、入社日当日に退職代行サービスに依頼した新卒男性の声です。
無論、退職は自由です。その際に「退職代行」を使うことも選択肢の一つかも知れません。
しかし、ソーシャルゲームのリセマラ（※「リセットマラソン」と呼ばれる、ゲームで思い通りのくじ引き結果が出るまで何度も最初からやり直す行為）やSNSでブロックする感覚で気軽に退職代行を利用する層も一定数存在するといいます。
『「SNSでブロックする感覚」退職代行サービスを利用した若者たちの本音
「利用がバレると次の就職がしにくくなる」と後悔する声も』
多大なコストと時間をかけて人材を採用した側にとって、このようなケースはやや理不尽です。
新人にとっても不幸であり、出来れば避けたい事態でしょう。
最近のZ世代は指導に過敏に反応しやすく、先輩・上司の思わぬ一言が、新人を追い込んでしまうことがあります。
「前にも言ったよね」「これ何回目?」「こっちでやるからもういい」「言われたことだけやればいいから」「逆に何ならできる?」「もう学生じゃないんだからさ」などをNGワードとしたうえで、『上司の役割とは、適切なリーダーシップでチームのモチベーションを上げることと、適切なマネジメントで、チームの能力を発揮させ成果を最適化させることです。
上司の仕事はチームの能力を発揮させ成果を最適させることに他なりません。
チーム員に対する一定の気遣いと配慮は不可欠でしょう。
ただし、信頼というのは相互的なものであり、上司もまた同じ人間です。
社員として働く以上、新入社員も「お客様」で在り続ける訳にはいきません。
「チームの能力を発揮させ成果を最適化させること」には信頼関係構築のみならず、一人ひとりに共に働くパートナー足り得る自覚とスキルを身に着けてもらうことも含まれるはずです。
そのためには、双務的な努力と歩み寄りが必須になります。
無論、ハラスメントの類などは論外とした上で、「楽しく快適な職場環境とキメ細やかな配慮が行き届いた教育が提供されて当然」「気に入らないならリセットすればいい」とばかりに上司や職場を消耗品扱いする新人、そしてそれを「腫物」のように放置する「やさしさ」は、むしろ成果の最適化を遠ざけるのではないでしょうか。
そもそも、こうした「やさしさ」が本人にとって真に「優しい」のかも疑わしいのです。
たとえば、業務で新たに自転車に乗ることが不可欠になったと仮定しましょう。
一度も転ばず自転車を乗りこなせるようになる人は稀ででしょうが、だからといって「自転車に乗せようとしたらハラスメント」「練習で転んだから二度と乗らない」に類した主張が正当化されるべきでしょうか。
いかなる言い訳をしようが、「必要な業務が遂行出来ない」というシビアな現実からは逃れられません。
「上司が代わりに乗ればいい」「自転車なんて廃止しろ」などの他責や代替案で解決しない場合、どうするのでしょうか。
もし「自転車に向いていないから諦める」というなら、その選択も尊重されるべきではす。
事実、SNSなどには「嫌ならすぐ辞めるのが最適解」「退職される会社のほうに問題がある」「ダメな人間関係はすぐに切れ」に類した、逃避と他責を正当化する「やさしさ」とそれを称賛する声が頻繁に「バズって」いる。もちろん流行りの退職代行を使い辞めるのも自由です。
退職代行業者は望み通り、「やさしく」お客様扱いしてくれることでしょう。
ただしその場合、「自転車に挑戦することで得られたかもしれない新たなスキル、それを生かした未来の選択と可能性」が失われます。
自転車程度なら取るに足らないと思うかもしれません。
しかし、これがたとえば「パソコン」「電話の使い方」であったらどうでしょうか。そして実務経験から得られるスキルのほとんどは、「パソコン」「電話」ほど判り易く可視化などされていません。
一事が万事、あらゆる仕事や困難を選り好みして避け続けることは、「実務経験の機会損失」「そのまま歳を取る」を消極的に選ぶことを意味します。
また、安易な転職を繰り返すことで逃げ癖が付いたり、転職活動の際に「仕事が出来ない可能性がある」「トラブルを起こしやすいのではないか」など、何らかのリスクや問題を抱えていると疑われることもあります。
社会における人脈は思いの外に狭く、意外なところで繋がっていたりもします。
「ガチャ失敗」「リセマラ」感覚で人間関係を容易く「切る」新人は、それらのリスクと不利益を本当に理解しているのでしょうか。
