氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

「知能指数」と「人生の成功」についての意外な結論

「自信さえあれば人生はうまくいく」とか「成功にはポジティブ思考が欠かせない」といったフレーズを、自己啓発やビジネス書などで一度は目にしたことがあるでしょう。

そのせいで、「僕は自信がないからだめなんだ」とか「もっとポジティブにならないと」とか考えて、落ち込んじゃうことがあります。  

具体例をあげていこう。世の中で「成功に欠かせない能力」としてよく言われるのは、次のようなものです。 

①IQの高さ

②自信の大きさ

③ポジティブ思考

④コツコツやり抜く力

⑤大量の練習

ここに挙げた能力を持っていても、世の中で高いパフォーマンスを発揮できるかどうかはまったく予測できない。  

それでは、まずは「IQ」の重要性からチェックすると、IQは人間の知能を表す指標のことで、この数字が高いかどうかは、ほぼ生まれつき決まってしまいます。

「人生の成功」の定義があいまいだから、「保有する資産」か「社会的な地位」で考えると、この2つを手にした人は、人生に成功したものと考えても、大きな問題はないでしょう。

人生においては個人の幸福も大事ですが、計測が難しい。資産と地位で判断すれば、少なくとも特定の世界で評価されていると言えそうです。

IQと人生の成功については、1920年代に、スタンフォード大学の心理学者ルイス・ターマンが大規模な調査をしています。ターマンはアメリカの学校から1528人の優秀な生徒を集め、全員を35年にわたって追いかけて、どんな人物になるのかを確かめました。

才能ある子どもの成人期までの発達と特徴を調べたもので、このデータからは、5冊の本や数十本の論文が生まれています。  

生徒たちのIQは135から200のあいだで、170を超える子どもも77人いました。

一般人のIQは90から100ぐらいだから、かなりの頭脳集団です。

残念ながら、研究に参加した子どもたちで、大人になってからも天才的な才能を示す者はいませんでした。  

なかには教授や医師、経営者になった者もいましたが、全体的には地味な職業についた者が多く、研究チームも「知能と成功は相関関係にはない。この研究対象からはノーベル賞受賞者も、ピューリッツァー賞の受賞者も、ピカソのようなアートの成功者も生まれなかった」と報告しています。

ちなみに、この研究への参加を断られた子どもたちのなかからは、逆に大人になってからノーベル賞を受賞した人間と、世界的な音楽家になった人間が、それぞれ2人ずつ出ています。

ウィリアム・ショックレーと、ルイス・アルバレス。それぞれ、1956年と1968年にノーベル物理学賞を受賞しました。

もちろん、IQの高さは、それなりに人生に影響をおよぼすことがわかっている。ある研究では、生まれつきIQが高い人は、物理学者、エンジニア、神経外科医などの職業で活躍しやすかったのです。

そのおかげで、IQが高い人は年収も高く、ポイントが1つ上がるごとに、平均で約2万5000円から6万円ぐらい年収が上がります。

ボストン大学による調査では、米国のベビーブーマー7403人を大量に追跡し、IQテストのスコアが1ポイント上がるごとに、年収がどのように変わるのかを確かめました。

すると、IQと年収には一定の相関が見られたものの、現在の総資産額については、IQが平均より下の人でも、IQテストの点数が高い人と同じぐらいの裕福さである事実が認められました。

IQが高い人は金銭的なリスクを取りやすく、クレジットカードの過剰な使用や、ギャンブルによる自己破産などで経済的に困窮するケースが多いのだと思われます。

だからといって、平凡なIQの人が不利だという結論にはならないのです。  

2万6000人のCEOを調べたデータでは、彼らは他の労働者の平均12倍を稼いでいたにもかかわらず、IQについては平均レベルの人が多かった。なかには、平均を下回るCEOも珍しくはなかったのです。

ニューサウスウェールズ大学などの調査では、2万6000人のCEOを、6000人以上の弁護士、9000人の医師、4万人のエンジニア、9000人の大卒の金融専門家と比較。その結果、「トップエグゼクティブは、私たちが思っているほど賢くはない。私たちが調査したCEOは、いかなる種類の『認知エリート』にも属していなかった」と結論づけています。

結局のところ、IQの高さは複雑なスキルが必要な職業では活きますが、それ以外の仕事では、知能のメリットをうまく使えないと考えられます。

さらに、別の大規模な研究では、IQと両親の経済状況で、どれぐらい将来の収入を予測できるかを調べたものもあり、IQが高くて両親が裕福な子どもは、大人になってどれぐらい金持ちになれるかを調べたわけです。

ちなみに、この研究では、IQは、両親の裕福さよりも3倍高い「ベータ値」を示しているため、どの家庭に生まれるかよりは、生まれつきの頭の良さがずっと重要かもしれません。

ところが、実際には「両親の裕福さ」と「子ども時代のIQ」という2つの要素を合わせても、将来の年収の約14%しか説明できませんでした。  

すべてをひっくるめれば、IQで未来の成功を説明できるとはとても言えないので、知能が低い人は自分がハンデを負っているとは思わないほうがいいし、知能の高い人も自分が優位に立っているとは思わないほうがいいでしょう。

 いまのところ、IQの予測力がもっとも高いのは「学歴」で、IQが高い人ほど、良い大学に入れる確率はかなり大きい。

人生の成功を学歴で判断する人なら、それでもいいけど、名古屋大学などの調査によれば、卒業した大学がいかに有名校だったとしても、その後の人生で高収入を得られるかどうかとは、ほぼ関係がなかったと報告されています。  

良い大学や高校に入ったところで、未来のパフォーマンスへの影響はほぼないようです。

名古屋大学などの研究では、一卵性双生児が違う大学に進んだ場合に、その後の年収にどのような違いが出るのかを調査。その結果、どの大学に進学したときでも、両者のあいだに賃金の差はほとんど見られませんでした。

学歴でキャリアのパフォーマンスを予想できないなら、名門校に入れたからといって、その先がどうなるかは誰にも判断できません。

結局のところ、IQの高さは、私たちの未来を決定づけるものではないのです。  

科学の研究ツールとしては大きな意味がありますが、個人が使うものさしとしては、かなりお粗末なものと言っていいでしょう。

物理学者のスティーヴン・ホーキングは「自分のIQを自慢する者は敗者だ」と言ったけど、まさにそのとおりです。

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