日本人は欧米人に比べて、資産運用をする人が少ない……。最近、よく耳にする話ですが、理由はどこにあるのでしょうか?
「英国数理社」は一生懸命勉強するのに…… 武器になる教養30min ── 日本人は欧米人に比べて、資産運用をする人が少ないと言われています。
なぜだと思いますか? 理由の一つは、日本のトップの人たちの資産運用に対する意識が低かったことです。
株は怖い、ギャンブルと同じだと誤解している人が、政治家にもいました。
それが、国民にもメッセージとして伝わっていたのだと思います。
しかし、その意識もだいぶ変わってきました。たとえば岸田首相は、「日本を資産運用立国にする」という宣言をしています。
「もっと資産運用をしよう」という強いメッセージを、国内のみならず海外にも発信しているわけです。 これまで預貯金のみだった人に投資をしてもらうために、NISA(少額投資非課税制度)という制度も始まりました。
投資をして得た利益を非課税にするという制度です。こうしたインセンティブもあって、少しずつ投資をする人が増えています。
ただ、まだまだ欧米と比べると、資産運用をする人は多くありません。それは、教育の問題が大きいのではないでしょうか。
日本人は「英国数理社」は一生懸命勉強するのに、投資や金融といったお金の勉強はほとんどしてきませんでした。
ようやく最近、高校の家庭科で「資産形成」の授業が始まりました。 欧米では、小さい頃からお金について学ぶのは当たり前です。
たとえば、米国の貯金箱には、お金を入れる穴が4つあるんです。投資するお金、寄付するお金、貯金するお金、使うお金。子どもに、「そのお金をどこに入れる?」と考えさせるんです。
日本人はお金の勉強をほとんどしてこなかったので、甘い投資話にだまされる人が多いのかもしれません。
甘い投資話にだまされないためにも、金融や経済や投資の勉強をすることが大事なんです。投資について学ぶことが、危険な投資への入り口になると思っている人がたまにいますが、まったく逆です。
きちんと勉強すれば、詐欺のような話には引っかからなくなります。
日本人に資産運用をする人が少ない、もう一つの理由は、長く続いてきたデフレも関係していると思います。
「失われた30年」という言葉がありますが、この間、モノやサービスの値段は下がり続けてきました。ハンバーガーが80円とか、牛丼が280円といった時期もありましたよね。 人はモノやサービスの値段が下がると、金利がつかなくても「これでいいや」と思ってしまいます。
つまり、金利がついて80円が100円にならなくても、値段が80円に下がればハンバーガーが買えるわけです。いわば、資産運用をしなくてもいい環境だったんです。 しかし今、世界的にすさまじいインフレが起きています。
モノも、サービスも、ガソリンも、電気代も、どんどん上がっています。いよいよ日本人も資産運用をして、少しでもお金を増やしていかないといけない環境になってきたわけです。
自分で株を選ぶのは大変です。大きく値下がりするリスクもあります。
しかし投資信託は、いろんな株を組み合わせて合同運用しているので、分散投資できるメリットがあります。
投資信託は、日本に6000本近くあります。どれを選んだらいいのか、迷ってしまいます。
自分が払うコストをできるだけ抑えることです。将来のパフォーマンスは誰にもわかりません。
でも、自分が払うコストは誰でもわかります。
たとえば、手数料は年間1パーセントなのか、それとも0.1パーセントなのか。当然、安いほうの投資信託を選んだほうがいいです。
また、銀行よりも証券会社で買ったほうが安く買えますし、NISAを利用すれば税金がかかりません。
将来のパフォーマンスはコントロールできないが、手数料や税金は自分でコントロールできます。そのことを見定めて運用することが大事だと思います。
米国株がずっと上り調子なので、S&P500に連動する商品を勧める人もいますが、世界の時価総額ランキングは、10年たてばけっこう変わります。
現在は、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)にマイクロソフト、テスラ、エヌビディアを加えた「マグニフィセント・セブン」が牽引しています。
しかし、1980年代は、NTT、日本興業銀行、住友銀行、東京電力など、日本企業が世界の時価総額トップ10に7社も入っていました。
そう考えると、このまま「マグニフィセント・セブン」が永遠に世界を引っ張っていくかといえば、そうではないだろうと思います。
新しいAIの企業や、グリーンテクノロジーの企業が出てくるかもしれない。これから人口が増えていくインド、インドネシア、ブラジルといった新興国が引っ張っていくことになるかもしれません。
したがって、一つの国や業種にベットするのではなく、いろんな国や業種に分散して投資することが重要だと思います。