氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

政府と財務省が気付かぬうちに進めていた“実質的な所得増税” 給料上がっても手取りが減るカラクリ

「給料は一応上がっているはずなのに、生活はどんどん苦しくなる」  

多くの国民の生活実感の一方で、所得税、消費税、法人税ともに税収はうなぎ上り。国の税収は2年間でざっと22兆円も増えた。岸田首相は税収増が「成長の成果」と言いますが、なぜ、国民の懐はこんなに厳しいのでしょうか。

実は、岸田首相と財務省は物価高騰が続いたこの2年あまり、国民が気付かないように「所得税増税」を進めてきたのです。  

首相が給付金ではなく、「減税」にこだわるのは、“隠れ増税”が国民にバレる前に、1年限定の「定額減税」で誤魔化そうという狙いがあります。  

そのカラクリの肝は「インフレ(物価上昇)」です。

所得税は、物価・賃金が上昇する時にはそれに合わせて課税最低限(各種控除など)や税率の段階が変わる基準となる所得額を引き上げないと実質的に増税になります。これをブラケット・クリープと呼びます。  

日本でもかつては控除を増やすかたちでインフレによる所得税負担増が過大にならないよう調整をしていましたが、1990年代半ばに本格的なデフレに入って以来、実施されていません。今、再びインフレ経済になって、この調整の必要性が高まっています。

財務省はインフレ下であえて「課税最低限引き上げ」をやらないことで、国民に“ステルス負担増”を強いてきたのです。

国民がいかに巧妙に余分な所得税を取られているかを明らかにしよう。  

この図を見ていただくと、計算をわかりやすくするために課税最低限(各種控除の合計)が100万円、所得税率10%としました。  

給料(年収)500万円のサラリーマンA氏の所得税額は、40万円。税引き後の可処分所得(手取り)は460万円です。  

それが次の年に物価と賃金がともに10%上昇して給料が550万円にアップした場合、「課税最低限」が据え置かれると、所得税額は45万円となります。  

給料は10%アップなのに、所得税は40万円から45万円に12.5%も増えます。

これがインフレ増税のカラクリで、増えた2.5%分(図の例では1万円)が増税額です。サラリーマンの可処分所得も減ります。  

図の例で言えば、賃上げ後の可処分所得の505万円を物価上昇率(10%)で割り戻すと実質手取りは459万円となり、賃上げ前の460万円より増税分だけ少なくなります。  

結果、国民は実質手取りが減って生活が苦しくなり、国は賃金・物価上昇率以上に税収が増えます。  

もし、財務省が各種控除の金額など課税最低限を同じだけ引き上げていれば、所得税額も10%アップにとどまり、こうした増税にはなりません。  

所得税の税収はこの2年間で約5.5兆円も増えましたが、同じ期間の名目賃金上昇率から計算すると、賃上げによる増収は1兆円程度(※注:国税庁民間給与実態統計調査」によれば、2021年、2022年の名目賃金上昇率はそれぞれ2.4%、2.7%。2020年度の所得税収〈19.2兆円〉から2年間での名目賃金上昇により増加した所得税収額を計算すると、約1兆円になる)のはずです。

差額の約4.5兆円はサラリーマンら所得税の納税者(5170万人)が“インフレ増税”などでこっそりと余分に取られた税金と考えられます。

納税者1人あたりざっと9万円も増税されていた計算です。  

たとえ首相が1人4万円の「定額減税」を1回だけ実施しても、本来やるべき税負担の緩和策がなされない限り、インフレによる見えない増税は続くのです。  

現在、実質賃金は17か月連続でマイナス。課税最低限の引き上げを行なわなければ国民生活はどんどん苦しくなります。  

まず非課税世帯が税金を取られるようになります。  

所得税課税最低限は「夫婦と子供2人」の片働き世帯なら285.4万円だ。名目賃金の上昇でこの基準を少しでも超えれば、これまで納めなくてよかった所得税を取られるようになり、手取りはさらに減ります。

収入を「106万円の壁」以内に抑えてきたパート労働者も、勤務時間は同じなのに収入が壁を超えてしまい、税金ばかりか社会保険料まで取られることになります。

インフレの時に課税最低限を上げないのは最も悪質な増税です。課税最低限とともに『106万円の壁』も引き上げないと、不公平になります。

国が課税最低限を上げたくないのは、インフレを逆手に取ってパートの方には強制的に社会保険料を払わせ、非課税世帯からは所得税を取り立てるためではないかとさえ思えます。

課税世帯も税負担が重くなります。  

所得税の税率は課税所得に応じて段階的に上がっていき、各税率の基準所得が変わらなければ、インフレによる名目賃上げで税率区分が上がって税額が跳ねあがるサラリーマン世帯が増えていきます。  

財務省にすれば、世論の反発も受けずに苦もなく増税できるのです。  

インフレで所得税負担が増えないようにする調整(課税最低限、税率ごとの基準所得の引き上げ)は、国民生活を守るために必要な措置なのに、財務省の“操り人形”の岸田首相はそれを怠ってきました。

今、サラリーマンの間で外食チェーンの200円台の朝食セットが飛ぶように売れています。

可処分所得が減って生活を切り詰めなければならないからです。必要なのは1年だけの定額減税ではなく、課税最低限を引き上げ、インフレ増税を止めるべきです。

実感の伴わない賃上げの成果を強調し、見せかけの「1人4万円」で批判をかわそうとする岸田首相の姿は、“減税ウソメガネ”という呼び名が相応しいのです。

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