氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

いったいどこまでこの国は、愚策のツケを“氷河期世代”に払わせるつもりなのか

政府は6月16日、今年の「骨太の方針」を決定し、退職一時金課税制度を見直し、労働移動を促すことが盛り込まれました。
企業があの手この手で講じてきた、“45歳過ぎたらお引き取り願いたい策”に加え、国が、「会社に長くいてもいいことなにもないから、次行こうよ次へ、という増税策に踏み切ったわけです。
退職所得課税に、白羽の矢がたったのは、リストラの嵐が吹き荒れた、1990年代初頭でした。
「退職所得課税って、経済復活の邪魔になるんじゃないの?」という、経済成長の阻害要因説が指摘され、その後は賃金の高いシニア世代を、なんとしてでも切りたい大御所たちが、「優遇措置があるから転職しない」だの、「優遇措置があるから会社にしがみつく輩が増える」だの、「雇用の流動化の邪魔」だの、難癖をつけ続けました。
そして今回、岸田文雄政権が掲げる「新しい資本主義」と、「どうにかして増税したい国」と、「シニア社員を切りたくて仕方がない経営者たち」の思惑が一致し、「やりましょう!」ってことになったのでしょう。
ある意味において・・・悲願達成、です。
骨太の方針に盛り込まれた「新しい資本主義」の実行計画には、以下のようにしるされています。
退職所得課税については、勤続20年を境に、勤続1年当たりの控除額が、40万円から70万円に増額されるところ、これが自らの選択による労働移動の円滑化を阻害し ているとの指摘がある。
制度変更に伴う影響に留意しつつ、本税制の見直しを行う。
勤続20年に相当するのは40代です。
いわゆる「氷河期世代」です。
かつて大炎上した、「45歳定年説」を、政府が実現させようとしているのです。
改めて言うまでもなく、「氷河期世代」を作ったのは、非正規社員を増やし続けた経営者側のご都合であり、会社組織の人口ピラミッドをいびつにしたのも、経営者側の問題です。
なのにその責任を省みることもなく、アベノミクスなどで景気が回復しても、これといった、手立てを国も企業もしませんでした。
やっと、本当にやっと6年前に重い腰を上げましたが、どれもこれも全く問題解決に至っていません。
17年度にスタートした、「就職氷河期世代の人たちを正社員として雇った企業に対する助成制度」(特定求職者雇用開発助成金就職氷河期世代安定雇用実現コース)の利用率はわずか「1割未満」です。
1割、そう、1割にさえ届いていません。
日本総研2019年5月29日づけ、Viewpoint就職氷河期世代への、支援の在り方を考える、をみると、
約5億3000万円の予算のうち、17年度中に利用されたのは、たったの765万円です(27件)。
18年度は約10億8000万円に予算を倍増したにもかかわらず、同年12月末までに約1億2800万円(453件)しか使われていませんでした。
また、19年に政府は“氷河期世代に能力開発を!”という失礼な掛け声の下、氷河期世代の正社員を3年間(20~22年度)で30万人増やす計画を打ち出しました。
ところが、最終年度の段階で、目標の10分の1にすぎない、たった3万人しか正社員が増えていないことが分かりました。
さらに、2022年7月8日づけ毎日新聞、氷河期支援、効果に疑問、正社員増、目標の10%の記事を見ると、656億円の予算のうち、各省庁が実施した約60事業の中には、氷河期世代の人が本当に参加したのかどうか、分からない事業があったといいます。
正社員になることすら、難しかった世代であると同時に、就職できても給与が低くおさえられ、バブル期世代に強い憎しみを抱いているとされるのが、都市伝説なのですが、実態はどうなのでしょうか?
世代別男性サラリーマン同士の比較です。
まず、社会人スタート時点の年収水準はバブル組と変わらないという点です。
ただその後は徐々にバブル組との差が開き、その状態が15年ほど続いた後、40代に入ってようやく、バブル組のラインに追い付きます。
そのあいだの差は累計で約600万円、年収換算でいえば15年間ずっと、約40万円も低くおさえられてきたことがわかります。
内閣府によると、バブル崩壊後の1994年から、2019年までの25年間で、年収の中央値は「550万円から372万円へ」と、著しく減少しました。
年代別中央値の変化はつぎのとおりです。
特に45~54歳では、1994年の826万円から195万円も下がったのです。
しかも、氷河期世代を含む、35~44歳の単身世帯の所得のボリュームゾーンは、1994年の500万円台から、300万円台へと200万円ほども減少しています。
今年度は「賃金アップします!」と豪語する企業が増えているようですが、40歳以上が上がる見込みは、ほぼありません。
なにせ、企業は20代の有能人材には“高い賃金”を払う気満々ですが、“そのほか”には目もくれないのです。
20~30代前半の賃金アップは、「良い人材に我が社を選んでもらうため」のアピールになります。
一方、40歳以上の賃金の高さは“、昭和”をイメージさせる、ネガティブ要因でしかありません。
70歳まで働くとして、30年近く続く残りの人生を、どう稼げばいいのかさえ、見通しが立たない賃金の低さです。
その上、退職金まで手をつける、というわけです。
「僕たち氷河期世代は、パワハラ長時間労働、低賃金の三重苦に耐え、精一杯生きてきました。恩恵を受けるのは、いつも上と下の世代です。報われなさに絶望します」
「今は、働き方改革で労働時間が短くなったけど、若い世代は家庭もプライベートも充実できていいなと思う」
「うえの世代のようになりたくないので、自分も勉強してるけど、記憶力が落ちて効率が悪くて悲しい」
「この先も不透明ですし、厳しい状況が一生続くのが、私たちの世代なんだろと思う」
これらは全て、氷河期世代の「悲鳴」です。
彼らは、ただ就職するときの時期が悪かったというだけで、むけん地獄を生かされています。
すべては“うえ”の問題なのに、経営者側の問題を問うこともありません。
あげくに、勤続20年をさかいに退職金控除見直しですか?
なぜ、この国はこんなにも長期雇用を嫌い、シニア社員を嫌い、さきの方向ばかり見て、足元をおろそかにするのでしょうか。
これでは純粋に、「この会社で最後まで頑張ろう!」と考えていた、やる気あるシニア社員まで、長年身に付けたスキルと、「住宅ローンもあるし困ったね」といった、生活問題とを天秤にかけるようになります。
これは、会社や国を支える土台を潰すようなものです。
そもそも長期雇用が、生産性に負の影響を及ぼす、なんてエビデンスはどこにもないのに、雇用流動化さえ実現すれば経済は回る、成長できると妄信し続けています。
経営者の資質や、責任を省みることなく、ひたすら働く人のお尻をたたき続けています。
超高齢社会で、40歳以上が、雨後の筍のように、増え続けている現状をかんがみれば、これがいかに愚策かくらいわかるはずです。
「人」の可能性を信じ、すべての社員の才能やアイデアを引き出し、受け入れない限り、その会社が潜在能力を最大限発揮することはできません。
この当たり前にいつになったら、気付いてくれるのでしょうか。

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