いま、日本経済の低迷は慢性化し、まさに陽が沈まんとしています。
現在、日本企業は世界企業ランキング100社の中に2、3社ほどしかランクインしていません。
一方、いまだ100年以上続いている日本企業の数は、全世界の企業の41.3%、さらに200年以上となると実に65.5%を占めています。このことひとつとっても、日本的経営は、世界の企業経営の中でも最も優れた経営のひとつだと言ってもいいでしょう。
そんな優れた日本的経営が、なにゆえに今日、積極的に評価されなくなったのかは、平成以降の経営者たちが、みずからの「ダイヤモンド」をどぶ川に放り込み捨ててしまったからではないでしょうか。
ご存じのとおり、平成以降の経営者たちの多くは、主にアメリカに留学し、学びました。
博士号やMBAの資格を取って帰国し、身につけたアメリカ的経営の知識、理論を、そのまま日本の企業経営に取り込んだのです。
彼らにとって、アメリカで学んだ経営観、経営手法が最高で最先端です。知恵、仁愛の「日本的経営」は、田舎の経営観、経営手法ということになりました。
アメリカ的経営の経営観は、利益追求です。経営の中心はどこまでも「カネ」。「会社」は、経営者の資産増の手段です。
「人間」は、そのための「手段」でしかありません。だから経営者は、会社が投資した額の数倍、数百、数千、数万倍にでもなれば、さっさとM&Aで売却します。
100年企業、200年企業が圧倒的に日本企業よりも少ないのは、ここに因があると言っても過言ではないでしょう。
主要国の平均賃金を見ると、日本だけが過去30年、横ばいというデータがあります(OECD/経済協力開発機構)。
米国と比べて約3分の2にとどまり、韓国に抜かれた統計もあります。
2023年は上がる方向に進むのでしょうか。
岸田文雄首相は「成長と分配の好循環」を掲げ、企業に給与アップを再三要請しています。
賃上げを渋ってきた財界トップの十倉雅和経団連会長も22年12月7日に記者会見し、23年の賃上げは22年実績を「超えてほしいし超えなければならない」と応じました。
日本人の賃金が放置できないほど低いことの裏返しです。
日本人の給与水準について、残念ながら順当な値段だと思います。
日本人は労働生産性が低いことで知られています。
日本はこの数字が先進国の中で最低水準です。利益を生み出す人が少ないから給料も上がらないのです。
日本人が“効率の悪い働き方”をしている事実に加え、「雇われている側と雇う側の両方に原因があります。
たとえば日本は商品の値上げがなかなかできなません。
モノやサービスを安く売っている限り、生産性は低く算出されます。モノも人も安売りされた結果、利益が出ないので給料を上げられない悪循環になります。
値上げできない企業、値上げをしたら買わない国民です。
その結果、いつまでも低賃金が今の日本です。
解決策はないかということですが、勤務先で給与交渉をしたり、転職で給与を上げようとすることです。
ある調査では給与交渉をしたことがない人が7割もいるそうです。
この現状を変えて一人一人がもっと『強欲』にならないといけないでしょう。
いい人材を獲得するため高い報酬を出し、成果を出した人の賃金が上がる仕組みを整備しない企業側にも問題があります。
個人は給与交渉する、企業は人材を買い叩かない、代わりにいい人材は大枚をはたいて取りにいく、などの文化が浸透しないといけないでしょう。
先進国の経済成長に取り残されつつある日本です。
一方で、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)を通じて自衛を急ぐ動きが顕著です。
売れ筋は米国株の投資信託。日本人が自国の株でなく海外の株に走る現状があります。
投資に国境はないですから、いま日本株より米国株を買うのは自然なことでしょう。 成長しない国の株よりリターンが出そうな成長できる国の株を買うのは当たり前です。
高度成長期の頃はいいものを作って、どんどん世界に出ていき、モノを売っていたわけです。
その結果、日本は世界有数の豊かな国、そこに留まりたい国になった。でも豊かな日本に留まる日本人が増えたことで、いつの間にか“日本人は日本国内でがんばることが日本のため”という妄想がまん延してしまいました。
ここ数十年で日本人は間違った愛国心を抱くようになっちゃったのかもしれません。
確かに、家電や自動車など日本製が世界一の高品質を誇った時代がかつてありました。
価値のあるものを作っていたのが、たまたま当時の日本人だっただけです。国産品だから価値があったわけではありません。
ドメスティック(国内的)であることが“本質的な価値のある愛国的な行動だ”というのは単なる思い込みです。
日本から外国人や外国組織を締め出し、国内のぬるい競争が正しいと思い込んだ結果、日本は停滞しました。
価値あるものでなければ日本人でも国産品は買わなくなりますし、世界でも買われません。
こうした市場原理が適切な淘汰や競争を作りだしていくのです。
直近で1ドル=151円台まで進んだ円安もしかり。
現在、130円台で推移していますが、21年秋までは110円前後で落ち着いていました。
外から見た日本の魅力が薄れ、輸出力も落ちています。
この現状が為替にも表れているととらえるのが自然でしょう。
私たちにできることは、誰もが欲しいと思うような商品、サービスを作ることに尽きます。
このまま海外勢に負けっぱなしではいられないと思います。