氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

未婚の若者は未婚の中年へ

「おひとりさま」は、精神的自立と経済的自立が不可欠です。では、この二つの要素のどちらか、あるいは両方が得られない未婚者はどうなるでしょう。  

未婚で親と同居していても、経済的・精神的に自立している場合は、「親と同居している」とシンプルに言うことができます。

しかし、「仕事」は持っていても、稼いだ額の大半を自分の趣味や成長のために使い、基本的な食費や住居費・ガス・電気・水道代などを親頼みにし、さらに炊事洗濯など身の回りの家事の多くも親に依存している場合は、「パラサイト・シングル」と私は定義してきました。

パラサイト・シングル」は、精神的基盤と経済的基盤の多くを親に依存して生活しています。それを可能にしたのは、主に団塊の世代を中心とした親世代の特殊事情がありました。

この世代には、成人後も子の面倒を見る「経済的ゆとり」があり、かつ我が子に対する「献身的愛情」がありました。これは他の世代は、仮に望んでも得られなかったものです。特に重要なのが前者です。

「子への献身的愛情」があっても、先立つものがなければ否が応でも子どもを自立させないとなりませんが、団塊の世代はそれが可能だったのです。  

戦後の経済復興の中で、「今日よりは明日、明日よりは明後日」と豊かに成長していく時代を肌感覚で経験してきたこの世代は、子どもにより良い生活空間や環境を与え続けることができました。

自分たち自身が幼い頃は、テレビや冷蔵庫もない暮らしを経験してきたのに、我が子に対してはテレビも冷蔵庫も、ましてや自家用車もある生活を準備できる。それどころか自宅には子ども専用の部屋を備え、複数の習い事をさせ、お小遣いやお年玉やクリスマスプレゼントまで与えることができました。

ボーナスが出れば、季節ごとの家族旅行を楽しめ、生活レベルの向上を家族皆で実感できたのが、この時代でした。

もちろん個人差、家庭差はあったでしょう。当時も生活困窮世帯は存在しました。でも、社会全体が好景気に沸いている時代には、仮にどんなに貧しくても、「これから生活が良くなるだろう」と希望を抱けるものです。

仮に現在お金がなくて貧しくても、5年後、10年後はそうとは限りません。給料は年々上がっていくし、頑張って子どもを育てていけば、我が子は少なくとも自分よりは良い生活を送れるはずだと「夢」を描くことができたのです。  

しかし、そうした親の愛を一身に背負って育った団塊の世代ジュニアが大人になった頃、日本経済は長引く停滞時期に突入しました。親が与えてくれた豊かさを、今度は自分自身の手でつかまなくてはならない社会人としての始まりの時期。

そんな大事な時期に、就職氷河期が始まったのです。しかもその責任は、社会のせいというよりは、とことん自己責任論で語られるようになりました。「フリーターや非正規雇用を目指すのは、責任を負いたくない若者の身勝手な事情だろう」と。  

そんな我が子を、豊かさを経験してきた親世代は、突き放すことができませんでした。本来自立すべき成人後も、「あともう少し家にいていいよ」と、自宅に住む(寄生)することを許してしまったのです。

せめてそこでしっかりと家賃相当分や家事労働分の支払いを要求していればともかく、これまで至れり尽くせりで家事も掃除も洗濯も面倒を見てきた親たちは、そのまま我が子の家事労働を請け負い続けてしまったのです。  

大学卒業時に正社員就職ができず、とりあえずアルバイトや非正規雇用で社会人をスタートした時点では、親も子も「当面の間だけ」と思ったかもしれません。しかし実際には、非正規で社会人をスタートさせた世代が、その後正社員として人生のステップアップを望むことはほとんど不可能であったことは、今では周知の事実です。

「あと少し、家にいていいよ」「今は不況だから、独身も仕方ないね」と温かい目で見守ってきた子世代が今、壮年となり、中年となり、大量の「未婚者」になっています。厳密に言えば、「壮年親同居未婚者」です。

最近では「子ども部屋おじさん」「子ども部屋おばさん」なる言葉まで生まれています。  

同時に日本では、大量の「引きこもり」も存在します。かつて「未婚の若者」だったのが、「未婚の壮年」「未婚の中年」となったのと同じように、かつて「中高生」の問題だった「引きこもり」は若者の問題となり、今では「壮年・中年の引きこもり」へと移行しています。

中には親の年金頼みで高齢の親にパラサイトしてきた「中年引きこもり」が、親の介護が必要な年齢になり、途方に暮れるケースもあります。社会全体の歯車が狂い始める「8050問題」です。  

内閣府が22年11月に行った調査によると、「趣味の用事の時だけ外出する」「自室からほとんど出ない」状態が6カ月以上続いている「引きこもり」状態の人(15歳から64歳まで)は、推計146万人もいる実態も見えてきました。もちろんここで、「未婚」と「引きこもり」を乱暴につなぎ合わせるつもりは毛頭ありません。

ただ、「おひとりさま」にしろ「パラサイト・シングル」にしろ「引きこもり」にしろ、「未婚」問題が極めて日本独特の社会現象になっていることに注目したいのです。

また「パラサイト・シングル」や増える「中年引きこもり」に関して言えば、その根底には「成人になっても子を独立させない(できない)日本独自の親子関係」が、ある種の要因になっていることを確認し、かつ「成人しても子が独立できない」理由の多くの部分で、経済的困窮が関係しているのであれば、それは広く日本社会全体の課題として考える必要があることを強調したいのです。  

具体的には、現代社会の産業が製造業からサービス産業・IT産業にシフトしていく中で、働き方が根本から変わっているにもかかわらず、相変わらず「新卒一括採用」と「終身雇用制」に固執してきた企業と政府の責任でもあります。

新卒時に正社員になれなくても、本人の意欲次第でいつでも再チャレンジが可能な社会にすること、正社員と非正規社員のかけ離れた条件を是正すること、仮に非正規やアルバイトであっても、「家族」に頼らず「個人」が生活していける仕組みを整え、社会的セーフティネットを強化すること、リスキリングやリカレント教育に社会全体で取り組むことなど、できることはたくさんあるはずです。

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