公務員は、おおむね大企業と生涯賃金の水準が近い傾向にあります。 大企業は相対的に生涯賃金が高く、待遇がよいのが特徴です。
また、公務員・大企業ともに年金受給額も高いと期待されます。 今回の記事では、大企業や公務員の生涯賃金、年金制度をまとめました。
年度末に向け、キャリアを再考している方は参考にしてみてください。
大企業と公務員では、賃金にどれほどの差があるのでしょうか。比較してみます。
●企業規模1000万円以上(大企業)の賃金
企業規模別の生涯賃金は次の通りとなっています。
規模が大きいほど、平均的な生涯賃金は上昇する傾向にあります。
例えば男性で大学卒の場合、企業規模1000人以上では2億9000万円にまで達するのに対し、企業規模10~99人では2億円です。 企業規模により、9000万円程度の差があるとわかります。
さらに退職金を含めれば、生涯賃金の差はさらに開くことになります。 大学卒の場合、男性は10~99人の企業規模では 2億6000万円であるのに対し、1000人以上では3億7000万円。 女性は10~99人で2億1000万円なのに対し、1000人以上では2億9000万円となりました。 従業員数1000人以上の大企業ともなると、男性では生涯賃金が3億円を上回る水準です。
●公務員の賃金
つぎに公務員の生涯賃金を試算してみましょう。 公務員の月例給の平均は、2021年度時点で約40万7000円です。
一般企業のボーナスに当たる期末手当・勤勉手当が合わせて月例給の4.3月分支給されます。 金額にするとおよそ年間170万円です。 以上の情報を基にすると、平均年収は約663万円となります。
仮にベースアップがない場合、平均年収663万円で23歳から65歳まで43年間働くとすると、生涯年収は2億8500万円と試算されます。
ただし、公務員も緩やかに賃金体系自体が上昇しているため、実際の平均生涯年収はもう少し高い可能性もあります。
以上の統計から見ると、公務員の平均的な給与は1000人以上従業員を抱える大手企業と同程度と考えられます。
ただし、公務員も大企業も、企業(機関)や部署・職種等により給与水準が大きく変わる点には注意が必要です。大企業や公務員は、いずれも世間一般より年収が高めですが、年金も平均より多くもらえる可能性があります。
大企業のサラリーマンや公務員の年金生活についてみていきましょう。
大企業のサラリーマンの場合、基本的に厚生年金に加入して毎月年金を拠出します。 厚生年金は、受給額が「平均標準報酬額」や「加入月数」で決まります。
平均標準報酬額はおおむね給与に比例するため、生涯賃金が高い大企業のサラリーマンは、平均標準報酬額が高くなりがちです。
そのため、世間一般より多くの年金をもらえる可能性が高いといえます。
事業基盤が安定していて余力のある大企業は、一般に中小企業より福利厚生が充実している傾向にあります。
その一環として、多くの企業で企業年金制度が導入されています。 日本の企業年金には大きく分けて次の3種類があります。
・確定給付企業年金(DB):企業が従業員と給付内容を約束して、老後に内容に基づいた給付を受け取れる制度
・厚生年金基金:確定給付型で、国の厚生年金に独自の上乗せをして給付額の増加を目指す制度
・企業型確定拠出年金(DC):企業が拠出した掛金を各個人が運用商品を選んで老後まで運用する仕組み
いずれも、国の基本的な年金制度である厚生年金・国民年金にさらに給付額が上乗せされる制度です。
企業年金が充実していれば、さらにゆとりのある老後生活が期待できます。
●公務員も国民年金・厚生年金の制度はサラリーマンと同じ 公務員も国民年金や厚生年金については、基本的にサラリーマンと同じ制度に加入します。
公務員の平均年収が大企業並みであることを踏まえると、厚生年金に適用される「平均標準報酬額」が高くなる傾向にあるのは、大企業と同様です。
公務員は民間より業績悪化に伴うリストラや解雇に遭うリスクも低いため「加入月数」を長期化しやすいのも、特徴といえるでしょう。
以上の点から、厚生年金の受給額を増やしやすいと考えられます。
公務員には、退職等年金給付(年金払い退職給付)という制度があり、これが企業年金の代わりとして機能しています。
同制度は、拠出額を半分ずつ「終身退職年金」と「有期退職年金」に振り分ける制度です。 公務員自身と国が負担し合って積立を進める仕組みとなっていて、利用すれば老後の年金を増やせます。
平均で見れば、大企業や公務員はいずれも生涯賃金が高めであることがわかります。
また、厚生年金の受給額の増加や独自の年金制度により、年金についても一般より高水準が期待できます。
ただし、今回紹介したのはあくまで平均で、実態は企業や所属する団体によりさまざまです。 就職・転職する際やライフプランを立てる際には、志望先の賃金や年金制度を調べておきましょう。