多くの人が知るように、日本政府はできるだけ長く働く人を増やすような政策・方針をとっています。
2021年4月に施行された高年齢者雇用安定法では、現状義務化されている65歳までの雇用確保に加え、65歳から70歳までの就業機会を確保するための高年齢者就業確保措置が企業の努力義務とされました。
ここでは雇用の提供というこれまでの選択肢に加え、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の創設などの選択肢も提示されています。
同改正法は、雇用であれ、業務委託であれ、70歳までの従業員の生活を保障してほしいという政府から企業への要請となっています。
定年後、年収はどれくらいになるのでしょうか?
60歳以降の就業者全体の年収分布をみていくと、60代前半では平均収入は357万円で、上位25%所得は450万円、収入の中央値は280万円となります。
60代後半に目を移すと平均額は256万円まで下がり、上位25%所得は300万円、中央値が180万円まで下がります。
定年後の就業者の収入の実態を探っていくと、300万円以下の収入の人が大半であることがわかります。
では、どのように働くかといえば、大多数は非正規やフリーランスになるのです。
非正規雇用者が占める割合は50代前半時点では数%にすぎませんが、60代後半にはパート・アルバイトで13.6%、契約社員等で12.9%と、定年後の最も一般的な働き方に変わります。
フリーランスは実は定年後の現実的な働き方の一つの形態です。
ここでは、自営(雇人なし)を広くフリーランスとみなすと、フリーランスの働き方は50代前半では6.4%と少数派でしたが、50代後半で7.4%、60代前半で8.4%、60代後半で10.9%まで増えます。
そして、70代前半では就業者のうちフリーランスの人は約2割で、最も多い働き方になります。
長く働くことに対してネガティブな人もそれなりの数いるでしょう。
それでも、仕事の負荷は減り、仕事に満足している人も増えていきます。
自身の能力に照らして仕事の負荷が適切であると感じる人の割合は20代で54.5%、30代で56.2%、40代で54.3%と横ばいで推移した後、50代前半の60.9%から60代後半で71.0%まで上昇すします。
これは仕事の負担が重すぎると考える人の割合が減るからです。
仕事の負荷が過大であると回答した人は、40代の31.8%をピークに、70代前半の8.3%の水準まで下がり続けます。
50代以降、仕事の負荷が低下していくことによって、能力と仕事負荷のバランスが適正化し、多くの人にとって仕事は心地よい水準に調整されていきます。
実際に、仕事の満足度と、能力と仕事負荷のバランスとの関係性をみると、その相関関係は非常に強い。バランスが適切だと感じている人ほど、仕事に満足して働けている人が多いのです。
誰にも正解がわからない人生100年時代です。
不安を安心に変えるために、まずはデータから実態をつかんでおきたいものです。