氷河期セミリタイア日記

就職氷河期世代ですが、資産運用でなんとかセミリタイアできました。残りの人生は、好きなことをしながら自由に生きていきます。

医師会VS財務省「診療所の良好な経営」巡る対立、国民負担増える中、いまだに医師の権益ばかり主張する医師会

「今日は非常に自分の心が強いので、赤いネクタイを締めてまいりました」11月22日、そう怒りをあらわにして定例会見に臨んだのは、日本医師会の松本吉郎会長。会見では、2日前の11月20日財務省財政制度等審議会が公表した「令和6年度 予算の編成等に関する建議」に対する異論を展開しました。

この建議は、来年度の予算編成や財政運営の指針を示したもので、地方財政や防衛など、11の分野において具体的な取り組みや要望が紹介されています。

その1つが社会保障で、少子化対策や報酬改定(医療・介護・障害)があります。  

財政審はこの中で、高齢化などによる国民の保険料の負担率の上昇に歯止めをかけることが必要とし、「診療所の報酬単価を5.5%程度引き下げること」などを提案してきたのです。  

「診療所の経常利益率が高いので、全産業やサービス産業と同程度にまで報酬単価を引き下げる」というのが財務省の見解です。  

これには日医も黙ってはいられず、松本会長は記者会見で、「コロナ対応で利益が上がったから報酬削減というのは、災害対応で残業や手当が増えたから、その分賃下げするのとまったく同じ主張」「診療所も中小零細企業であり、物価高騰や賃上げ上昇を価格に転嫁できず苦しんでいる」と強い口調で反論。  

私たちが支払っている(給料から天引きされている)社会保険料は、大きく健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料の3つに分けられ、それぞれ医療や介護、年金の財源となっています。  

医療費はこの健康保険料と税金、そして治療を受けたときに支払う自己負担率(1~3割)から成り立っており、具体的には、保険料負担が約24兆円(49.5%)、税金負担が約18兆円(36.8%)、患者の自己負担が約7兆円(13.6%)という比率。医療費はまた、診療報酬という医療行為ごとに決められた点数(1点10円)によって支払われています。

例えば、初診料は288点、再診料は78点といった具合で、そこに条件によって加算が付き、医療機関はこの診療報酬によって収入を得ています。  

診療報酬は2年に1回改定され、今議論されているのは、「来年4月からの診療報酬がどれくらいになるか」という部分です。

どれくらいのプラスになるか(マイナスになるか)は、病院運営に携わる人たち(開業医など)にとって非常に大きな関心事なのです。

財政審の建議では、診療報酬がプラスマイナスゼロ改定でも、高齢化による医療の需要が増えることなどで、医療費は8800億円(うち健康保険料分は4400億円)が自然増となるとしています。

自然増の分だけ国民の負担が増える。その増額分を診療報酬のマイナス改定で抑えたいというのが、財政審の考えです。  

診療報酬の項目は膨大で、それぞれの項目についてプラス改定されたり、マイナス改定されたりします。

最終的にはトータルでプラス改定なのか、マイナス改定なのかという話になりますが、今回、そのマイナス改定の項目に挙がったのが、診療所の「極めて良好な経営状態」(建議)でした。  

実際、財務省財務局が実施した機動的調査からは、2022年度の診療所の経営利益率(平均)は8.8%で、中小病院の利益率(同)は4.3%という実態が明らかになりました。  

財務省はこれを根拠に、国民の負担を極力抑制するため、診療所の経常利益率8.8%を、全産業やサービス産業の平均である3.1~3.4%と同等にするため、診療所の診療報酬を5.5%程度引き下げる必要があるとしました。  

今回、財務省が診療所の経常利益率に目をつけた背景にはコロナ禍の医療費の問題が挙げられます。

財務省も公表していますが、コロナ禍で特例的な支援で医療提供体制の強化のために21兆円が投じられたにもかかわらず、診療所で診てもらえない発熱患者が増え、このコロナ対応の初動が遅かったなど、診療所に対しては不満がありましや。

そこで財務省財務局が行ったのが「機動的調査」で、財務省と全国の財務局などにいる職員らが、各都道府県に医療機関から届け出た事業報告書等を基に、3事業年度分の医療機関の経営状態を調べ上げた、まさに財務省財務局職員の機動力にものを言わせた調査です。

その数は38都道府県、2万1939施設にのぼり、これまでの診療報酬改定では、中央社会保険医療協議会(中医協)が実施していた「医療経済実態調査」を数字の根拠としていました。  

これは、中医協医療機関の協力の下で行われている調査であるうえ、何年も前から”サンプル数が少なすぎて実態を表していない”と指摘されていました。  

国内には病院が約8000施設、診療所は10万5000施設あります(医療施設動態調査)が、医療経済実態調査の調査対象数と有効回答数は、それぞれ病院が2377施設(1139施設)、診療所が4250施設(2272施設)と極めて少ないのです。  

これに対し、今回の財務省の機動的調査では、医療経済実態調査をはるかに凌ぐ約2万2000件という数の事業報告書等を調べ上げたのです。

そこ記されている貸借対照表損益計算書からは、事業収益や経費、利益などが把握でき、その結果わかったのが、先に挙げた「2022年度の診療所の経営利益率は8.8%」という数字です。

年度ごとにみても中小病院との経常利益率の差は明らかです。  

診療報酬は建議を踏まえて財務省厚労省が議論を重ねています。それをもって、12月中旬に厚労省から診療報酬改定の数字が示されます。

ちなみに前回は0.43%、前々回は0.55%のプラス改定でした。  

診療所のマイナス改定は本当に実現するのかというと、そう単純ではなく、診療報酬には出来高払い制があるので、極端な話をすると単価が下がっても受診回数を増やせば収入は減りません。

報酬単価の引き下げが経常利益率の低下につながるかは不明なのです。何より財務省も診療所を潰したいわけではないので、最終的に改定がどう行われるかは現段階ではわかりません。

これって財務省と日医の対立の話で、我々には関係ないのでは?と思う人もいるかもしれませんが、必ずしもそうとはいえません。

なぜなら、我々が支払う健康保険料の行方にもかかわることだからです。

保険料の負担を考えるときに、見なければならないのは2つ。金額と割合です。  

賃上げによって所得が増えれば、負担の割合が変わらなくても支払う保険料は増えます。

逆に、所得はさほど変わらないのに保険料が上がるということは、すなわちそれだけ負担割合も増えるということです。  

プラス改定になるということは、単純に考えて、国民が負担する保険料が増えるということ。ただそれが、賃上げ率に追いついているのかいないのかが、一番重要になります。  

ちなみに現役世代の保険料の負担は年々増えています。  

財政制度等審議会財政制度分科会の資料では、協会けんぽの場合、2000年の医療保険料率は8.50%だったが、2012年からは10.00%となっている。2040年の推計値は11.80%です。  

別の資料では、健保組合の場合も2000年は8.50%だったのが、2012年には一度8.34%に減ったものの、2022年には9.26%に上がっています。  

ここに介護や年金の保険料が加わると負担は一気に膨れ上がります。

では、収入と保険料を比較してどうかというと、2012年~2021年度の保険料の負担の伸びは年2.6%に対し、賃金の伸びは年0.9%にとどまり、保険給付の伸びのほうが、我々の収入の伸びを上回っています。  

実は、ほとんど賃上げが行われていなかった時期も、診療報酬改定はプラス改定となっているのです。

建議には、「過去20年間、医科診療所(入院外)(以下単に「診療所」という。)における1受診当たり医療費(報酬単価)は、物価上昇率が低迷する中にあっても、ほぼ一貫して増加してきた」と記されています。  

具体例として、2000年度から2019年度にかけて「消費者物価指数は3%の上昇にとどまるのに対し、診療所の報酬単価は26.5%増加してきた」、2019年度から2022年度にかけては両者の乖離が顕著に拡大。「診療所の報酬単価は+14%と、この間の物価上昇率+3%を大幅に超えた水準で急増している」などとしています。  

国民は、社会保険料にあまりにも関心がなさすぎた。賃金から引かれているもので最も大きいのが社会保険料所得税や住民税などとは比べものになりません。

医療は私たちの健康や命を守るために欠かせないものですが、それによって日々の生活が圧迫されるのでは本末転倒です。

税と同じように、保険料についても我々はもっとじぶんごととして考えていかなければならないのです。

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